個性豊かで先鋭的な映画作家達によるイタリアのオムニバス映画で、ゴダールのみフランスから参加。タイトルは四人の名前の頭文字を取って繋げたもので、四人共それぞれ原案、脚本を自ら手掛けています。監督の面子からいくと重厚な作品を連想しますが、全編にレトロチックなイタリアン・ポップが流れ、コミカルな場面も多かったりしてなかなか楽しい中篇集です。モノクロ作品ですが、パゾリーニ篇の一部はカラー。 第1話は、偏執狂の中年男に付きまとわれるスチュワーデスの話。ストレートな展開に最後は軽いひねりを加えた脚本ですが、ロッセリーニはスピーディーな語り口とモダンなセンスで軽妙に描いています。イタリア映画を代表する名匠でもあった彼は、本作を最後に映画界から遠ざかり、以後はテレビ作品に活躍の場を移しましたが、それを思うとストーカー男が女性のスクリーン映像に抱きつこうとする異常なラストシーン、監督の想いも重ね合わせて色々と深読みしてしまいますね。ベッリーニの歌劇《ノルマ》をアレンジした音楽も印象的。 第2話は、『アルファヴィル』のゴダールらしい近未来SF。ここでも、設定を説明するだけで現代のパリの街を、原爆が投下された未来のパリという事にしてしまいます。街は変わらず、人が少しずつ変わるというコンセプトも彼らしく、やはり斬新かつ瑞々しいタッチで描いていますが、途中に一瞬現れる、上部が消失したエッフェル塔の映像は、ゴダールには珍しく、フィルムに手を加えた特殊効果との事。 第3話は、作品を発表する度にセンセーションを巻き起こした問題児パゾリーニの少し長い中篇ですが、一部にカラー映像を使用しています。キリストの最期の場面を撮影する映画監督(パゾリーニ本人もそういう作品を撮ってますね)を名作『市民ケーン』の俳優/監督として知られるオーソン・ウェルズが演じているのも一興。撮影中に俳優が思わぬ受難に遭うという、ブラック・コメディなのかシニカルな寓話なのかよく分からない作品ですが、発表当時この挿話が上映禁止となる騒ぎが起こり、結局内容が修正されて『洗脳しよう』というタイトルに変わったそうです。コマ送り映像など、コミカルなタッチも挿入。音楽をカルロ・ルスティケッリ、撮影をトニーノ・デッリ・コッリが担当。 第4話は、近代社会の申し子とでも言うべき平均的消費者の姿を揶揄したような、これもブラック・コメディ的な一篇。監督のグレゴッティは主にテレビ界で活躍していた人だそうですが、他の三作品に一歩も引けをとらず鋭い才気を発揮しています。要らないものまでつい買い込んでしまうファミリーの姿はどこか醜く、翻って自分達の姿にも重ねかけた所へ、突然、レストランの客が全てにわとりになっている映像が挿入され、笑ってしまうというより、少し背筋が寒くなりました。ラストもぞっとしますね。 |