豪華監督陣によるオムニバスとして大いに話題を呼んだ作品ですが、劇場に観に行った感触としては???という感じで、あまり印象は良くありませんでした。それでもここでご紹介するのは何故かというと、ひとえに最後の岩井俊二作品が素晴らしいからです。私には、短編というスタイルをちゃんと理解しているのは、この中で岩井俊二ただ一人のように思えます。短編というのは、長編の一部を切り取ったようなものや、長編のスタイルで短い脚本を映像化するものではありません。本作中のほとんどの作品が、短編でありながら非常に長く感じられるのは、その辺りに一因があるのではないでしょうか。 第1話は北村龍平監督のハードなアクション・サスペンス。この人の作品は『ゴジラ』の最終作と『あずみ』しか観ていませんが、映像も芝居もどうも重心が高くて腰が据わらず、軽すぎて迫力に欠ける印象を持ちました。そのせいか役者の熱演も空回りしてしまって、可愛そうに思います。本作ではそういった弱みはあまり出ていないようですが、本来の尺を無理に引き延ばしたような冗長さが残念。 第2話は、けん玉を手に入れたミュージシャンが巻き込まれる事件を描いたもの。『月とキャベツ』の篠原哲雄が日常的風景をライト感覚で描いていますが、特に短編である事の利点や魅力は追求していないようです。第3話は『アナザヘヴン』の飯田譲治監督によるSFコメディ。私にはどうも、コミック調のドタバタ演出が空回りに感じられます(作家の筒井康隆も出演)。『皆月』の望月六郎による第4話は、彼らしいエロティック・ファンタジーですが、描写がグロテスクで個人的に苦手なのと、やっぱり短編らしい緊密なまとまりを欠くように思います。 人気監督・堤幸彦の作品も、平素から私はあまり高く買いませんが、この第5話も小劇団のコメディか芸人のコントを観るようで、居心地が悪かったです。演出は手堅く、よく出来た作品なのですが、一見斬新なアイデアに見えても、作り手のセンスが常套的だと、どこかで見たような作品になってしまうという事でしょうか。行定勲監督作品は私は好きですが、この第6話に関してはよく分かりません。コメディの趣旨はシンプルですが、教室の場面のデフォルメされた芝居など、意図が分かりにくい箇所がありますし、作品全体もあまり映画的ではないような気がします。 ラスト第7話は、ARITAという不思議な生き物をめぐる怪奇譚。登場人物は一人で、ワン・アイデア。短編というスタイルの面白さを最大限活用した、ユニークな作品だと思います。ストーリーも短い中で意外な展開をくり返し、観る者の興味を繋いで飽きさせません。映像的にも、映画ならではの美しさに溢れ、過去に短編や中編をたくさん撮って来た岩井俊二の才覚が見事に発揮されていると感じました。 オープニングのCGアニメは原田大三郎、エンディング曲はマンデイ満ちるによるもの。彼女らしい、クールなジャズポップで、思わず聞き惚れてしまいました。後年、本作の続編も製作されましたが、私は観ていません。そちらは名前の売れた監督達ではなく、若手中心の起用だったようです。 |