11カ国、11人の映画監督がそれぞれ11分9秒1フレームという共通枠で、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロについて自由に短編を製作したオムニバス。『WATARIDORI』のプロデューサー、ジャック・ペランが製作したフランスの映画ですが、ほとんどの監督が自国を舞台に撮影しています。戦争に関するフランスのオムニバスというとゴダールやレネが参加したドキュメンタリー『ベトナムから遠く離れて』が有名ですが、こちらの方は収録作のほぼ全てがフィクション映画で、各作品も一編ずつはっきりと区切られています。例外は『21グラム』『バベル』で近年話題沸騰のイニャリトゥ作品。彼はニュース映像と音声の加工だけで作品を成立させています。 全体的な特徴としては、アメリカという国家(が過去に行なってきた事)に対して、必ずしも好意的ではない態度があちこちに見られる事で、アメリカ側の立場に偏らないという意味では、11カ国の映画監督がそれぞれの視点から撮った利はあったようです。例えば英国のケン・ローチ監督はかつてチリで起こった惨劇について語る事で、アメリカがこれまでの姿勢を変えない限り事態が決して好転しない事を示してみせる。エジプトのユーセフ・シャヒーンも、自ら映画監督の役で主演し、抑えていた怒りを一時的に燃え上がらせる。彼の言葉は衝撃的です。「民主主義の国家では、国の行動の責任が一般市民にもあると彼ら(テロリスト達)は考える」(だから一般市民も攻撃の対象になる)。 個人的に見応えがあったのは、『ベトナムから遠く離れて』にも参加したクロード・ルルーシュの、いかにも彼らしく恋愛を交えた美しい一篇と、実話を元にしたミラ・ナイール篇、そして悲劇から一歩進んで全く別の地平に希望を見いだすショーン・ペン篇。逆に「これはちょっと‥‥」と思ったのが今村昌平篇。実力派俳優総動員で臨んだ大仰な姿勢も、短編オムニバスとしてはちょっと浮いて見えますが、テロに戦争の悲劇を重ね合わせる所、そして最後にメッセージをナレーションで安直に伝えた上、文字として字幕にまで出してしまうのは、映画、ひいては芸術としていかがなものかと‥‥。 |