子供はどこにいてもやっぱり子供…。厳しい環境下で生きる子供達を描く感動のオムニバス映画

それでも生きる子供たちへ  (2005年、イタリア/フランス

 

 第1話『タンザ』(ルワンダ)  監督:メディ・カレフ

 第2話『ブルー・ジプシー』(セルビア・モンテネグロ)  監督:エミール・クストリッツァ

 第3話『アメリカのイエスの子』(アメリカ)  監督:スパイク・リー

 第4話『ビルーとジョアン』(ブラジル)  監督:カティア・ルンド

 第5話『ジョナサン』(イギリス)  監督:リドリー・スコット&ジョーダン・スコット

 第6話『チロ』(イタリア)  監督:ステファノ・ヴィネルッソ

 第7話『桑桑(ソンソン)と小猫(シャオマオ)』(中国)  監督:ジョン・ウー

 厳しい現実の中で生きる子供たちの姿を描いた国際オムニバス。ドキュメンタリーではなく劇映画です。国連の二つの機関、ユニセフとWFP国連食糧計画が制作に参加していて、製作会社に入る収益も全額が後者に寄付されます。監督もユニークな人選がなされていますが、本作で際立っているのは、驚くほど繊細で多彩な映像美。こういうシビアな内容のオムニバスに映像美までは期待していなかったので、これは意外でした。演技経験のない子も多いスクリーン上の子供たちも、みな生き生きとして、正に自分たちの生きる状況を体現しています。

 武器を持って戦争に参加する子供達を描いたメディ・カレフ篇、HIV感染した少女の苦悩を描くスパイク・リー篇はどちらもリアルな感触。一方、鬼才クストリッツァによる、少年院から出所してもすぐに外の世界から逃亡して戻ってきてしまう少年の物語は、まるでフェリーニ映画のようにテンションが高く、デフォルメされた雰囲気、貧民街で廃品回収をして小銭を稼ぐ兄妹を描いたカティア・ルンド篇もユーモラスなタッチと、監督によって子供達への視線は微妙に異なります。

 ドキュメンタリックな前半の作品群から、後半は幾分映画らしい色彩が濃くなってきます。『ブレードランナー』『グラディエーター』等の巨匠リドリー・スコットは、娘ジョーダンと共同で監督。もっとも、プロダクション・ノートによれば彼はオブザーバー的な立場で参加し、主に撮影を進めていたのはジョーダンのようです。森の中に入って行ったキャメラマンが子供時代に戻ってしまうというファンタジー風の設定ですが、内容は大人向きの苦みも含んだ趣。戦争の現実がファンタジーの世界に入り込んできます。ナポリを舞台に、街頭犯罪を繰り返すストリート・チルドレンの姿を追ったヴィネルッソ篇は、名手ヴィットリオ・ストラーロがキャメラを担当。深い陰影を持つ芸術性豊かな映像の中に佇む子供達は、犯罪者の顔と子供らしい感性を併せ持っていて、不思議と胸を打たれます。

 『フェイス/オフ』など独創的なアクション映画で知られるジョン・ウーが担当したのは、彼の作風からは意外ともいえる、美しく叙情的なドラマ。路上で花を売り歩く貧しい少女と、数え切れないくらいの人形を持て余している上流階級の少女。対照的な境遇にある二人の人生が、一体の人形を介して交錯するというお話。透明な悲しみに溢れた映像美と、それでもどこか希望を感じさせる、少女の素晴らしい笑顔が感動を呼ぶ名篇です。

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