ガン、糖尿病、高血圧、三大成人病をテーマにしたリレー・コメディ

ボクが病気になった理由  (1990年、日本

 

 第1話『マイ・スウィート・リトル・キャンサー』

  監督・脚本:鴻上尚史  出演:勝村政信、鷲尾いさ子、地井武雄

 第2話『ランゲルハンス・コネクション』

  監督・脚本:大森一樹  出演:名取裕子、ラサール石井

 3話『ハイパーテンション・ロード』

  監督・脚本:渡邊孝好  出演:大竹まこと、中川安奈

 ガン、糖尿病、高血圧という三大成人病をテーマにリレー形式で描くコメディ・オムニバス。各エピソードのラストとオープニングがそれぞれ同じ場面で繋がっているのが特徴です。『恋する女たち』や吉川晃司三部作の監督で医学部出身の大森一樹による企画ですが、この映画の少し前に森田芳光監督が『バカヤロー!』シリーズを企画して大当たりしているので、日本でもオムニバス映画が少し盛り上がりを見せはじめた時期だったのかもしれません。本作も、表現や映像のタッチに少々古さを感じさせる部分も多いものの、独自の視点を持ったオムニバス企画という意味では存在価値が高い映画であります。

 第1話は、自分は癌だと思い込んだ男がビルに立てこもり、人質を取って癌の特効薬を要求するというストーリー。劇団第三舞台の鴻上尚史は、当時『ジュリエット・ゲーム』で映画界に進出しはじめたばかりだったと思いますが、個人的にどうもこの人の演出、映画でも舞台でも面白いと思った事がありません。ビジネス街の一角で延々と不毛なやり取りが展開するという演劇的なシチュエーションも、映像的な面白味には欠けるきらいがあります。道路を封鎖して空撮も入れてと、大規模な撮影ではあるのですが、映画の豊かさというのは、残念ながらそういう部分になかったりもするので…。

 第2話は、人気女性キャスターがグルメ番組に抜擢されるも、視聴率に比例して糖尿病の危険度が上がってゆくというお話。脚本家としても定評があり、医学は専門分野である大森一樹だけあって、さすがは短い中にも多彩な緩急を付けて飽きさせません。要所要所に登場して細かい学術的解説を入れてくるドクター・ランゲルハンスの存在は、大森作品らしい軽妙な語り口に一役買っています。キャストも上田耕一や斉藤洋介など、大森映画の顔があちこちに出演。

 第3話は偶然と手違いから一緒に旅をするはめになった音楽家の若い女性と、高血圧の中年親父の珍道中。ハリウッド映画によくあるパターンのお話ですが、映画マニア的な雰囲気を出したかったのか、ジェリコの壁のエピソード(『或る夜の出来事』)なども引用しています。監督は大森組で長く助監督を務め、『君は僕をスキになる』『居酒屋ゆうれい』で人気を博した渡邊孝好。タッチも少し大森一樹と似ていますが、映像と音楽の使い方や、役者の芝居に時代がかった雰囲気があって、少々色褪せて見えるのも事実。

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