モダン・ホラーの祖とも言われる作家、エドガー・アラン・ポーの小説を、カルト的人気のある二人の映画作家が映像化するという、ホラー・ファン垂涎の企画。ブライアン・デ・パルマ作品の甘美なメロディでサスペンス・ファンを陶酔させたピノ・ドナジオが音楽を担当している他、ホラー特殊メイクの第一人者トム・サヴィーニが参加しているのもいかにもなラインナップで、言わばホラー・ファンのためのお祭りみたいな映画と言えなくもありません。尚、この映画は日本ではロードショー公開されず、東京国際ファンタスティック映画祭で一度上映されたきりだという事です。 第1話は『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』『ゾンビ』でゾンビ物のジャンルを確立し、今でもこの分野では余人の追随を許さぬジョージ・A・ロメロが監督。ここでも又ゾンビ的なテーマを扱っていますが、語り口も映像も淡々として格調高く、普通にドラマを撮らせても彼が一級の監督である事を証明しています。もっとも、クライマックスでは目を覆うようなシーンが待っているので要注意。ジョン・カーペンター監督夫人のエイドリアン・バーボーが主演しているのも、ホラー・マニアならニヤリとさせられる所でしょう。 第2話は、私も昔読んで震え上がった傑作『黒猫』を、『サスペリア』『フェノミナ』の異才ダリオ・アルジェントが映画化。彼ほどの独自のスタイルを持ったクリエイターの手に掛かると、さすがに原作とは趣が違ってくるもので、静かに恐怖を盛り上げてゆくポーの原作と違い、全編に渡って美しくも凄惨な地獄絵図が繰り広げられます。アルジェントが監督すると、どの作品もアーティスティックな色彩を帯びるのが不思議ですが、残虐シーンはあまりにマニアックで、これだけはいつも目を背けてしまって、私など大抵は画面をちゃんと観ていません。物語は現代風にアレンジされていて、写真家の主人公を名優ハーヴェイ・カイテルが怪演。もともとアブナイ感じの人なので、役にぴったりかも。イタリア映画ながら、アメリカで撮影されています。 |