『アメリ』のプロデューサー、クローディー・オサールの企画の元に、パリの18の地区で世界各国の映画監督と俳優達が各5分の短編を繋いでゆく、おしゃれなオムニバス作品。5分というのはドラマが成立するギリギリの時間のようで、どこまでもスケッチ風の作品と、工夫を凝らして物語を持ち込んでいるものと両タイプがありますが、どれも始まったと思ったらあっという間に次へ移ってしまうという印象です。監督/キャストは非常にユニークな人選で、必ずしもオムニバス映画でよく名前を見かけるような人達ではないし、ウォン・カーウァイ作品で有名な撮影監督クリストファー・ドイルや、名優ジェラール・ドパルデューなど、元々映画監督ではない人の作品も混ざっています。 個人的に印象に残った作品を挙げてゆくと、まずは地下鉄駅で撮影されたコーエン兄弟の作品。彼らの映画には欠かせないスティーヴ・ブシェミが主演ですが、撮影を『アメリ』のブリュノ・デルボネルが担当していて、例のオレンジがかった独特の映像を展開しているのが目を惹きます。ギャスパー・ウリエルを起用したガス・ヴァン・サントの作品も、インディペンデント出身らしい監督の自由な個性がよく出た一編。日本から参加の諏訪敦彦作品はジュリエット・ビノシュ、ウィレム・デフォーという豪華キャストで送る、キェシロフスキ映画のような物悲しい叙情に溢れた幻想的な逸品。 密室サスペンス・ホラー『CUBE』で話題を呼んだヴィンチェンゾ・ナタリ監督はモダンな作風から一転、モノクロで描く古典的な吸血鬼物。撮影は『エディット・ピアフ』で仏セザール賞に輝いた永田鉄男、主演はイライジャ・ウッドです。一方『エルム街の悪夢』『スクリーム』など個性的なホラー映画で知られるウェス・クレイヴンの作品は、舞台こそ墓地ですが、男女の微妙な心の揺れを描いたドラマで新境地を開拓。『ラン・ローラ・ラン』『パフューム』のトム・ティクヴァ監督も、ナタリー・ポートマンを主演に早回し映像を随所に盛り込み、5分とは思えないほど緩急のある濃密なドラマを構築。こんな調子で、とても全部は紹介しきれませんが、様々な国の映画作家がパリを舞台に描くショート・ショート集、実に見応えがありますよ。 |