日本、韓国、香港の人気監督達が、それぞれ異常心理をモティーフにホラー作品を監督した、美しくも恐ろしいオムニバス映画。純粋なホラーは一作もなく、ブラック・ユーモアだったりサスペンス心理劇だったりしますが、演出力に定評のある監督ばかりが集まった事で、ホラー、サスペンス映画ファン以外にも充分見応えのあるオムニバスとなりました。本編は１２６分ですが、第１話と第２話がやや長く、第３話が短めという時間配分です。 第１話は、『オールド・ボーイ』でカンヌ映画祭のグランプリに輝いたパク・チャヌク監督によるブラックな一編。性格も良く、人が望む全てを手に入れた映画監督が、正にそれ故、自宅に侵入した見知らぬ男によって悪夢の世界に突き落とされるお話。人気の韓流スター、イ・ビョンホンがパンツ一丁で尻文字をやらされるまでに貶められる、凄まじいドラマです。斬新な美術デザイン、息詰まるサスペンス、グロテスクな笑いと残酷な恐怖が同居するこの作品は、常識的な型にとらわれず、常に新鮮な驚きに溢れる韓国映画のバイタリティをよく伝えていると思います。謎めいた表現も散りばめながら破滅的なラストへ急加速してゆく、恐るべき密室劇。 第２話は、既成概念に反旗を翻すような作品群で国際的にも評価の高い三池崇史作品。このオムニバスは各国の映画の特徴が如実に表れているのが面白い所ですが、本作もＪホラー特有の不気味なタッチを随所に盛り込みながら、美人小説家の後ろ暗い過去をスタティックに描写。日本映画らしい情念とエロスの世界を美しい映像で描く、耽美的な一編です。 第３話は香港インディペンデント界の鬼才フルーツ・チャンが監督。ウォン・カーウァイ作品で有名なクリストファー・ドイルが撮影を担当しています。夫の気持ちを繋ぎ止めるため、口コミで紹介された謎の餃子で美貌を保つ夫人のお話。ご推察の通り、この餃子の中身はとんでもない代物なのですが、それでも美容のために食べ続ける主人公の姿は滑稽なような、恐ろしいような。実際、おぞましい描写もあちこちに挿入されますが、映像自体はいかにもスタイリッシュに美しく構成されているのが、題材とギャップがあってショッキング。 | 
