東京を舞台にした３話構成のオムニバスですが、スタッフとキャストは大半が日本人で、セリフも日本語ながら、脚本・監督は全て外国人という風変わりな作品。監督の人選も映画ファンの興味をそそる、とびきりユニークなものです。 第１話は『エターナルサンシャイン』をはじめ、奇想天外なアイデアで世間を驚かせ続ける奇才ミシェル・ゴンドリーの作品。ガブリエル・ベルの短編漫画をベースにした、明日を夢見る若者達の青春群像です。もっとも、ゴンドリー作品がそれで終わる筈もなく、後半は特殊効果を使用してあっと驚く展開に至りますが、それがひねりの効いた短編小説風のオチに行き着くのは、フランス人的センスのなせる技でしょうか。実力派俳優達の芝居のやりとりはテンポが妙な感じですが、これは敢えて狙ったもののようです。エティエンヌ・シャリーのエスプリ溢れる音楽も素敵。 第２話は、『汚れた血』『ポンヌフの恋人』等で８０年代フランス映画界を席巻したレオス・カラックス監督とドゥニ・ラヴァン主演コンビが、なんと東京にて復活。もっとも本作は、過去のカラックス作品とはがらりと変わって、とにかく奇妙で過激な短編。全体は、突如マンホールから怪物メルドが登場し、街を大混乱に陥れる様を描く前半と、彼が捕えられて裁判に掛けられる後半に分かれますが、終始不思議なタッチの作品です。しかも、異様な風体で繁華街を駆け抜けるドゥニ・ラヴァン、ムシャムシャ花を食べるドゥニ・ラヴァン、全裸で捕獲されるドゥニ・ラヴァンと、彼の衝撃映像目白押し。日本からは石橋蓮司の他、嶋田久作、ジュリー・ドレフュス、顔田顔彦なども参加。撮影を、ゴダールやジャック・リヴェット作品も手掛けたキャロリーヌ・シャンプティエが担当しています。 第３話は『グエムル 漢江の怪物』のポン・ジュノ作品。個人的にはこの監督、ここ数年で出て来た人の中では屈指の天才だと思います。引きこもり男性の恋を描いたこの作品も、静謐なタッチと映像美が光る好篇。地震の場面は展開がちょっと唐突な印象も受けますが、スタティックな前半部との対比もあって、短編では唐突くらいでちょうどいいのかもしれません。それに、主演が香川照之、蒼井優という希代の演技派二人ですから。 | 
