“アメリカ映画らしいストーリー感覚を前面に出した、『パリ、ジュテーム』の続編”

 

ニューヨーク、アイラブユー

New York, I Love You

2009年、アメリカ (103分)

 第1話 監督:チアン・ウェン

     出演:ヘイデン・クリステンセン、アンディ・ガルシア、レイチェル・ビルソン

 第2話 監督:ミーラー・ナーイル

     出演:ナタリー・ポートマン、イルファン・カーン

 第3話 監督:岩井俊二

     出演:オーランド・ブルーム、クリスティーナ・リッチ

 第4話 監督:イヴァン・アタル

     出演:イーサン・ホーク、マギー・Q

 第5話 監督:ブレット・ラトナー

     出演:アントン・イェルチン、ジェームズ・カーン、オリヴィア・サールビー

 第6話 監督:アレン・ヒューズ

     出演:ブラッドリー・クーパー、ドレア・ド・マッテオ

 第7話 監督:シェカール・カブール

     出演:ジュリー・クリスティ、シャイア・ラブーフ、ジョン・ハート

 第8話 監督:ナタリー・ポートマン

     出演:カルロス・アコスタ

 第9話 監督:ファティ・アキン

     出演:スー・チー、ウグル・ユーセル

 第10話 監督:イヴァン・アタル

      出演:クリス・クーパー、ロビン・ライト・ペン

 第11話 監督:ジュシュア・マーストン

      出演:クロリス・リーチマン、イーライ・ウォラック

 インサート・カット  監督:ランディ・バルスマイヤー

            出演:エミリー・オハナ

 『パリ、ジュテーム』の続編企画ですが、監督の顔ぶれは一新。各話が独立していた前作とは異なり、合間に繋ぎのエピソードを挿入しているせいで、各話の独立性が薄れてやや混乱する感じもあります。この繋ぎ部分は、数々の作品で特殊効果やタイトル・デザインを手掛けてきたランディ・バルスマイヤーが担当。街角を撮影するビデオ・アーティストを軸にする事で、各話の登場人物をちょこちょこと再登場させています。

 ひねりの効いた短編小説みたいなエピソードが多いのは、アメリカ映画らしい所で、例えば『鬼が来た!』のチアン・ウェン監督篇、イスラエルの俳優イヴァン・アタルが監督した2篇。これらはダイアローグ主体でオチのある構成がいかにもニューヨーク映画という感じで、落ち着いた雰囲気もあって素敵です。同じくオチのあるものでは、『ラッシュアワー』シリーズの売れっ子監督ブレット・ラトナー篇が、小粋なタッチでテンポも良く非凡。ドイツのファティ・アキン監督篇も、短い中に凝縮されたストーリーを展開し、スケッチ風のエピソードで誤摩化さない所が、潔いです。

 そして、故アンソニー・ミンゲラ監督の脚本を引き継いだ、『エリザベス』のシェカール・カプール監督篇も、静謐でエレガントな会話劇として、美しい作品に仕上がっています。それから何と言っても岩井俊二篇。映画音楽の作曲家という設定の主人公(なんとジブリ・アニメ『ゲド戦記』のサントラを作曲中です)や、ジョン・レノンのダコタハウス、ドストエフスキーの小説など、豊かなイメージを盛り込みながら、独特のナイーヴなタッチでストーリーを展開する手法は健在。この人はいつも、短篇がうまいなあと感じます。

 ちなみにDVDには、特典として人気女優スカーレット・ヨハンソンが監督したエピソードが収録されていますが、これはモノクロで撮影されている上、ケヴィン・ベーコンがフィックスの画面の中に佇むだけという、正にスケッチ的な内容で、これではカットされても致し方ないように思います。本編を観ると分かりますが、うまくいっているエピソードの監督は皆、短篇映画のリズムをというものをよく理解しているようですね。

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