“ポルトガル発祥の地を舞台に、個性溢れる名匠達が競作”

ポルトガル、ここに誕生す 〜ギマランイス歴史地区

Centro Historico

2012年、ポルトガル (96分)

第1話『バーテンダー』

  監督・脚本:アキ・カウリスマキ  出演:イルッカ・コイヴラ

第2話『スウィート・エクソシスト』

  監督・脚本:ペドロ・コスタ

  出演:ヴェントゥーラ、アントニオ・サントス、マヌエル“ティト”ファルタード

第3話『割れたガラス』

  監督・脚本:ヴィクトル・エリセ  

  出演:ヴァルデマール・サントス、アマンディオ・アルフォンス、エンリケタ・オリヴェイラ

第4話『征服者、征服さる』

  監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ  出演:リカルド・トレパ

 ポルトガル北西部の古都ギマランイスは、初代国王アルフォンス1世の生地である事からポルトガル発祥の地と言われ、旧市街地が歴史地区として世界遺産に登録されています。本作は2012年、EUが提唱する欧州文化首都にギマランイスが指定された際、様々な記念行事の一環として製作されたプロジェクト。ポルトガル出身のコスタ、オリヴェイラの他、お隣スペインの映像詩人エリセに、フィンランドの人気監督ながら現在はポルトガル在住のカウリスマキを加えた4人が、この歴史地区をテーマに参加した注目作です。

 第1話はカウリスマキ監督作。14分ほどの短篇ですが、ひと目見ただけでそれと分かる、全く独自の作風を貫徹。街角のバーの店主が、ランチにスープを売ろうとするだけの話を、セリフを使わずサイレント映画のように構成しています。淡々としたコミカルな調子やレトロチックな映像センスは、ファンを狂喜させる仕上がりですが、舞台がポルトガルである必要性はほとんどなく、ラジオから流れるニュースとファドの音楽だけが、申し訳程度に郷土色を打ち出しています。

 第2話は、個人的に一番しんどい約30分でした。74年、ヨーロッパ最長の独裁体制を無血で終らせたカーネーション革命の移民労働者が、森の中で意識を失う。気付けば精神病院のエレベーターで、ブロンズ像のような兵士と乗り合わせ、彼のものとの知れぬ声が語りかけてくるという、幻想的な設定ではありますが、全体のほとんどがこのエレベーター内でのやりとりに費やされており、映像的にも、ストーリー的にも一本調子なのが残念です。

 第3話は、世界的に評価されながらも余りに寡作なため、常に動向が注目されるヴィクトル・エリセ監督の新作。たまにオムニバスに参加しているのがせめてもの救いですが、映画全体の評価がこのエリセ篇に集中した傾向も、なきにしもあらず。しかし内容は劇映画ではなく、かつてヨーロッパ第二の繊維工場として繁栄し、2002年に閉鎖されたリオ・ヴィゼラ紡績繊維工場の労働者達へのインタビュー。映画的な演出も施され、エリセらしい格調の高さや詩情が映像に漂うのはさすがですが、突出して高く評価されるのもどうかとも思います。

 第4話は世界最高齢映画監督(撮影時104歳)オリヴェイラの、飄々として肩の力が抜けた、短い作品。ユーモラスなタッチで、長くて重い内容の第2、3話を挟んで、第1話のカウリスマキ篇とシンメトリックな対を成しているのも、構成の妙を感じさせます。歴史地区へやってきた観光客達が、征服者アフォンソ・エンリケスの銅像が立つ広場に集まって、タイトルの解題に繋がる訳ですが、その語り口はまるで落語のようでもあり、老練な味わいが滲み出ます。

 

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