ヌーヴェルバーグの監督も多く参加したフランスのオムニバスで、52年にロベルト・ロッセリーニらが参加したものの続編。「7つの大罪」というのは人間の本質を描くのに便利なテーマで、クルト・ヴァイル作曲のバレエも名曲だし、映画のオムニバスにするにも1話が大体16、7分でちょうどいい感じです。 本作はVHSでしか観られないのが残念ですが、ゴダールやヴァディムの他、『シェルブールの雨傘』のジャック・ドゥミや『いとこ同志』のクロード・シャブロルも参加している豪華版。撮影監督のアンリ・ドカエ、音楽のミシェル・ルグランなど、スタッフも一流どころが起用されています。 前半のよく知らない監督たちも意外に前衛的な演出で健闘していますが、いかんせん脚本が弱く、冗漫な印象。俄然面白くなってくるのは、やはり後半からです。特にゴダール篇は傑作。何をするにも面倒くさい、靴紐さえ自分で結びたくない映画スター(コンスタンチーヌが本人役で登場)の姿を淡々と描きますが、古風な音楽や洒脱なオチなど、ゴダールらしくない親しみやすさが稀少です。 ヴァディム篇は代表作の一つ『危険な関係』を彷彿させるダブル不倫の話。ストーリーは他愛の無いものですが、演技と描写力に初期ヴァディムらしいシャープなタッチがあり、才気走ったダイアローグもヴァディムの手になるもの。シャブロル篇は、若者たちがお金を出し合ってくじ引きで高級娼婦に挑む話で、『ボッカチオ’70』のデ・シーカ篇と似た内容。時代を感じさせない、みずみずしい演出と演技にセンスを感じさせます。 |