“TV映画ながら苛烈な描写も満載のホラー・オムニバス。キャストもユニーク”

ボディ・バッグス

John Carpenter Body Bags

1993年、アメリカ (94分)  *TV作品

 第1話『ガス・ステーション』 Gas Station

  監督:ジョン・カーペンター

  出演:アレックス・ダッチャー、デヴィッド・ノートン

     ロバート・キャラダイン、サム・ライミ、ウェス・クレイヴン

 第2話『ヘアー』 Hair

  監督:ジョン・カーペンター

  出演:ステイシー・キーチ、シーナ・イーストン

     デヴィッド・ワーナー、デボラ・ハリー

 第3話『アイ』 Eye

  監督:トビー・フーパー

  出演:マーク・ハミル、ツィッギー

 『ハロウィン』のジョン・カーペンターが仕掛けた3話のオムニバス・ホラー。TV作品ながら海外ではDVD、ブルーレイも出ていますが、日本語字幕の入ったソフトはVHSの中古を探さないと観られないのが残念です。第1話と第2話、幕間のパートは、カーペンターが監督。口の悪い解剖医が死体袋を開けながら各エピソードに誘導する体裁ですが、この役をカーペンター自身が演じているのも見ものです。

 彼は自作で音楽も手がけるなど多才な人ですが、この演技がまた抜群に上手くて仰天。表情豊かにまくしたてる軽妙な芝居は生き生きとしていて、正直な所、専業の役者でもこれより下手な人はたくさんいるくらいです。しかも本作には他にも映画監督がたくさん出演。メイン・スタッフは製作のサンディ・キング、撮影のゲイリー・キッベ、プロダクション・デザイナーのダニエル・ロミノ、編集のエドワード・ワーシルカと、カーペンター組で固めた印象です。

 第1話は、ガソリンスタンドで深夜バイトの初日から殺人鬼に襲われる女子大生の話。ストレートなサイコ・スリラーで、『エルム街の悪夢』『スクリーム』のウェス・クレイヴン監督が薄気味悪い中年男、『死霊のはらわた』『スパイダーマン』のサム・ライミ監督が無惨な死体役で出演しています。バイト先の先輩は『狼男アメリカン』のデヴィッド・ノートンで、『ハロウィン』のセルフ・パロディも見どころ。

 第2話は、薄毛を気にする中年男がありとあらゆる増毛製品を試し、怪しげなテレビCMに惹かれてダメ元で増毛施術を受ける話。ブラック・コメディのテイストがカーペンターには意外ですが、オチがこれも『遊星からの物体X』のパロディっぽくSFホラーに転換。主人公の恋人が歌手のシーナ・イーストン、うさん臭いドクターがデヴィッド・ワーナー、看護師が『ビデオドローム』のデボラ・ハリーと、キャスティングが超ユニークです。

 第3話は、『悪魔のいけにえ』『ポルターガイスト』のトビー・フーパーが監督。交通事故で右目を失明したプロ野球選手が眼球移植を受けるものの、幻覚で精神錯乱に陥るという怪奇色の強いサイコホラーです。主人公は『スター・ウォーズ』三部作でルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミル、その妻が『ボーイフレンド』のツィッギーというポップな配役をしておきながら、狂気じみた陰惨な物語を展開する辺りはさすがフーパー。

 まずは開巻早々、交通事故の場面から雨の効果、雷光の点滅照明で、最初の2話と映像のルックが変わるのが見ものです。所々で奇声を発するかのような、発作的で不気味な音楽も緊張感を高め、手術後の眼球にゆっくり寄っていくショットは、ぞっとするほど異様。

 土の中から蘇る死体、ディスポーザーから突き出た血まみれの手、おぞましい屍姦と、ショッキングな場面が連続しますが、そういう幻覚の描写よりも、映像が連続的に断絶し、甲高いショック音が入るフラッシュバックの演出が、ただそれだけでコワいです。

 映像や照明の好みだけでなく、死体を掘り起こす場面の猟奇性や主人公を捉える狂気、連続殺人鬼の眼球に聖書で立ち向かう悪魔祓い的な行為など、フーパー作品共通の個性は随所に刻印されています。眼球移植の専門医役でB級映画の帝王ロジャー・コーマン監督も出演し、オムニバスの最後には死体解剖医の役でフーパー自身も登場。

*   *   *

 

Home  Top