往年の人気テレビ番組『トワイライトゾーン』を、映画でリメイクしようといういかにもスピルバーグらしい企画。プロデューサーも兼任しているジョン・ランディスとスピルバーグがそれぞれ一作ずつ担当する上、『グレムリン』のジョー・ダンテと『マッドマックス』のジョージ・ミラーが参加して、大変ユニークな映画となりました。 プロローグと第1話を監督するのは『アニマル・ハウス』『ブルース・ブラザーズ』のジョン・ランディス。タクシー運転手と乗客が夜道で繰り広げるテレビ主題歌の当てっこは、いかにもテレビ世代の観客を意識したプロローグですが、唐突にホラー風のオチが付くのも『狼男アメリカン』を撮ったランディスらしい展開。主演の二人に人気コメディアンのアルバート・ブルックスとダン・エイクロイドを配しているのも心憎いキャスティングです。テレビ版を再現した、ファンには嬉しいオープニング・タイトルの後、引き続きランディスがメガホンをとる第1話は、クールなコメディを得意とする彼には珍しい、シリアスなサスペンス。歯に衣着せぬ差別主義者の男が突然時空を飛び越え、ユダヤ人や黒人となって必死に逃げ回るというお話。 なかなか緊張感のある佳作ですが、主演のヴィック・モローと二人の子役の頭上に撮影用ヘリコプターが墜落し、三人が悲惨な死を遂げた事で、この映画は様々なスキャンダルを巻き起こしました。ランディスは業界の第一線から外れ、最後まで法廷に立たず逃げ通したスピルバーグは、社会から激しい批判を浴びました。私のような一映画ファンでも、色々な意味で「この事故さえなかったら」と思わずにはいられません。残念です。 スピルバーグが監督した第2話は、老人ホームを舞台にした心温まるファンタジー。夜中に缶蹴りをする老人達が、実は毎晩少年少女に若返っていた、というお話です。彼としては『E.T.』の次に撮った映画ですが、ほぼ同じスタッフを登用し、ファンタスティックな映像で感動的に盛り上げているのも見どころ。ただこの演出は、今の感覚で観ると少々センチメンタルに過ぎる傾向もあり、人によってはちょっと甘ったるい感じを受けるかもしれませんね。 第3話は、『ピラニア』『ハウリング』で新感覚ホラー映画の旗手として注目されていたジョー・ダンテが監督。スピルバーグもダンテの奇抜な映像センスには賛辞を送っていて、この後にも『グレムリン』をはじめ、多くの作品で組んでいます。彼は、アニメの要素を実写に持ち込んだ最初の映画監督ではないかと思いますが、ここではアニメそのものが画面に登場。特殊能力を持つ少年によって、テレビの中のアニメ・キャラクターが実体化したりするのですが、その見せ方の迫力には圧倒されます。個人的には、当時最も驚いた映画の一つがこれでした。表現主義的なシュールな映像の中、ダンテらしい怪奇色が随所にひんやりと漂う所も魅力。 第4話には、オーストラリアからジョージ・ミラー監督が参加。『マッド・マックス』三部作で世界中を震え上がらせた鬼才ですが、たまたまハリウッドに来ていた所をスピルバーグに急遽スカウトされたとかで、そう聞けば彼の唐突な登板にも納得がいきます。高所恐怖症の男が旅客機の翼の上にモンスターを目撃するというお話ですが、機内での巧みな人物描写や特撮を駆使したアクション場面も見事で、サスペンスフルな演出は再び観客を震え上がらせました。もっとも、ミラー監督の後の作品は『ロレンツォのオイル』や『ベイブ』シリーズなど、必ずしもヴァイオレンスやサスペンス一辺倒ではありませんが、ハリウッドの監督にはない、独自のイディオムで映画を作り続けている人です。 |