ロシア

『ハラショー! ロシア&旧ソビエトカメラの世界』

 日本カメラ社・2003年

 こちらは旅と全然関係ないカメラの本ですが、トイカメラ・ブームの火付け役となったロシアのカメラに照準を絞っているのと、カメラ自体が旅の必需品なので、敢えて当欄で取り上げました。私もかつてフィルム・カメラLOMO(ロモ)のLC-Aと、CMEHA8M(通称スメ8)、CMEHA35の3台を所有していました。後の2台はいわゆるトイカメラで、作りが完全におもちゃですから早々に壊れてしまいましたが、デッドストックのため私が数千円で購入してから数年で値段も高騰。LC-Aはおもちゃではなくきちんとしたカメラで、故障もなく使っています。

 LC-Aについてご存知ない方にご説明しておくと、これは旧ソビエト時代の82年にサンクトペテルブルグ(当時のレニングラード)で職人が手作りしていたカメラです。その10年後、チェコに流出していたこのカメラをウィーンから来た大学生二人が入手して帰国。現像したプラハの町の写真を見て、その濃厚な色合いやレトロな写りに衝撃を受けた二人は、ロモグラフィー・ソサエティというグループを発足。ロシアの工場に働きかけて、ロモの生産を再開させます。これがいわゆるウィーン・バージョン。

 我が国では、デジカメの台頭によるフィルムへの郷愁を背景に、北欧雑貨やチェコ絵本のブームとも相性が良かったのか、LC-Aは雑貨店で人気を呼び、それに付随してトイカメラ・ブームが起こります。私が所有していたスメ8などもそうですが、ちゃんと写るかどうか分からない不安定な性能や、はるか昔の写真みたいに撮れる究極のアナログ感覚が、雑貨好きの若者やカメラ女子のアンテナに引っかかったのです。分割写真や魚眼レンズのような写真が撮れるカメラや、ポラロイド・カメラなど、ヒット商品も幾つか出ました。

 本書では他にも様々なカメラを紹介していて、天下の日本カメラ社から出ているにも関わらず、カメラ・マニアより雑貨ファンを喜ばせる内容になっています。勿論、旧ソビエト連邦はトイカメラだけでなく、ちゃんとした銀塩カメラもたくさん作っていました。デザイン的にはローライやライカ、カール・ツァイスなど、ドイツ・ブランドの古い機種と似た雰囲気があるのも、雑貨好きをワクワクさせる要因かもしれませんね。

『ホンマタカシ写真集 アムール 翠れん』

 写真:ホンマタカシ  モデル・日記:東野翠れん 

 プチグラパブリッシング・2005年

 写真家ホンマタカシがハバロフスク、ウラジオストクでモデルの東野翠れんを撮ったロシア的“ユルさ”溢れる写真集。何がユルイと言って、モデルのポワ〜ンとした雰囲気と、ロケ地のいかにも旧ソ連っぽい雰囲気に尽きます。どちらも、新潟からフェリーに乗って行けるくらいの近場ですが、れっきとしたロシアです。それも、モスクワやサンクトペテルブルグのような近代化にはまだ遠いような、朴訥で、アナログ風情全開のロシア。バリバリのファッションモデルがパリで撮りました、みたいなとんがった感じではなくて、全体にまったりとしてユル〜イです。

 最後にモデルさん直筆の日記を数ページに渡って掲載。これが又ユルイ! 装丁のデザインもなかなかイケてますが、カバーを取ると赤地に白の水玉柄で、さらにお洒落である事が判明。ヴィレッジ・ヴァンガードで一度、この本をカバーなしで陳列しているのを目撃しました。(本書は“プチ読書好きに贈るブックリスト”のコーナーでもご紹介しています。本文はその要約です)

『ロシアのかわいいデザインたち』

 著:井岡美保、小我野明子

 ピエ・ブックス・2006年

 ロシアというと、旧ソ連時代は社会主義の暗くていかめしいイメージが強く、かわいい雑貨とは無縁という感じもありましたが、連邦崩壊によって自由主義経済に移行するにつれ、アナクロでどこか懐かしいようなアイテムが日本でも次々に紹介されはじめました。アニメ『チェブラーシカ』、手動カメラLOMOやトイカメラの流行など、ロシア雑貨を見直す機会はここ数年随分と増えたように思います。

 奈良でカフェ「カナカナ」を営む井岡美保、大阪で図書喫茶「ダーチャ」を運営する小我野明子が「かわいいデザインたち」シリーズにロシア篇を加えてくれました。モスクワ、ハバロフスク、ウラジオストクを巡り、日用品から玩具、紙製品、文房具、古本、アンティーク、食品、お土産物と、あらゆるジャンルをカヴァー。マトリョーシカ工場見学や、ダーチャについてのコラムも掲載しています。こっくりした色合いのデザインだけでなく、意外にカラフルだったり洗練されていたり、多様な顔を見せるロシア雑貨でした。オールカラー。

『カナカナのかわいいロシアに出会う旅』

 著:井岡美保

 産業編集センター・2008年

 本書は『ロシアのかわいいデザインたち』の著者の一人、井岡美保によるロシアのかわいい物探しのガイドブック。前著と同様、モスクワ(及び近郊の街)、ウラジオストク、ハバロフスクが対象ですが、雑貨そのものよりも旅の方に焦点が当てられ、ガイド本としての性格がより強く出ています。

 それぞれ街の紹介から、ホテル、航空機、レストラン、カフェ、市場、古本屋、博物館、工場、遊園地、おもちゃ屋、花屋、スーパー、キオスクと、極めて幅広いスポットに取材。珍しい所では、猫サーカスや子供の百貨店などというのもあります。ほぼオールカラーで装幀や各ページのデザインも素敵ですが、本のサイズが小さめなせいか、風景写真などで時に小さすぎるものがあるのは残念。旅に必要な情報は丁寧に紹介されていて親切です。

『おとぎの国、ロシアのかわいい本』

 著:小我野明子

 ピエ・ブックス・2008年

 こちらも『ロシアのかわいいデザインたち』の著者の一人による、ロシアの絵本を150冊以上も紹介した稀少な本。古い年代のものから近年のもの、珍しいものからマルシャークのような有名作家のものまで、実に幅広く掲載されたロシア絵本たち。思わず「これ欲しい!」と叫んでしまう本も一冊や二冊ではありませんが、入手は難しいのでしょうね。表紙だけでなく、中身も数ページずつ紹介されているのが親切です。

 また、絵本だけでなく教科書や学習本、ぬり絵、雑誌なども取り上げていて、他にも幼稚園訪問や図書館、古書店、雑貨、マトリョーシカの紹介など、コラムも充実。オールカラーです。(本書は“大人のための絵本館”のコーナーでもご紹介しています)

『ぬくもり雑貨いっぱいのロシアへ』

 著:花井景子

 イカロス出版・2011年

 ロシアのリャザン国立大学で日本語教師を務める著者のブログを書籍化した、カラー写真ガイド。雑貨や民芸品は勿論、食品、建築物、化粧品、文具、アニメ、広告看板、機械製品など、類書で取り上げそうなものはほぼ網羅していますが、現地人だけあってチョイスも掘り下げ方もディープ。ブログのせいか、小さな写真を細かく配置したページ構成は好みを分つかもしれませんが、良く言えば丁寧で凝った編集です。著者の博識さもよく生かされている印象。モスクワからの小旅行ガイドもあり。

 

『ロシアと雑貨 ラブリーをさがす55の旅』

 著:井岡美保

 WAVE出版・2014年

 本書もカナカナの井岡美保による、雑貨をテーマにしたロシア旅行記。観光地としてあまり一般的とは言えないこの国に、雑貨の買い付けで20回以上も渡航している著者が、お薦めのスポットやアイテムなどを、55のコラムで紹介しています。様々なスタイルで撮影されたオールカラーの写真も素敵で、「ロシアってなんか怖そうだし、治安とかどうなの?」と思っている私のような読者でも、ページをめくる内に一度は行ってみたいなと思ってしまいます。

 こういう本を書くライターは文章に品のある人が多く、悪く言えば無難に似通った内容になりがちですが、チェドックザッカストアの谷岡氏や本書の井岡氏など関西出身の店主さんは、関西弁も交えたりして自分の言葉で自在な文章を綴っているのが楽しい所。そのため、写真エッセイとしての読み応えがある本です。ガイドブックではないにも関わらず、著者が身をもって得た情報や経験を通して、実際に読者がロシアに行ったとしたら役に立ちそうな記述が随所にあるのも面白い点。

バルト三国  

『旅のコラージュ バルト3国の雑貨と暮らし』

 著:les deux 

 ピエ・ブックス・2007年

 かつては旧ソ連に属していたバルト3国、エストニア、ラトヴィア、リトアニアという珍しい国の雑貨と暮らしを紹介する稀少な本。著者は雑貨店「le petit merche(プチマルシェ)」「世界の民芸ming ming(ミンミン)」の店主・滝村美保子と、イラストレーター松尾ミユキによる le deux(レ・ドゥ)という二人組ユニットで、雑貨やハンドメイドブックの制作も行っているとの事。

 3国中で唯一北欧系民族の国、エストニアの首都タリンは、フィンランドやスウェーデンから船で渡れる事もあって、まだ旅番組などで時折取り上げられますが、ラトヴィアやリトアニアは私もほとんど知らない国だったので、興味津々でページをめくりました。それぞれの国の市場やおいしい物、雑貨、おみやげ、民芸品、お祭り、民族衣装、郵便局、アトリエなど、写真の豊富なカラーページで紹介。著者の趣向か、編み物や布製品、木製雑貨などが中心の上品なセレクションで、スーパーマーケットのポップな商品パッケージなどは外されているのが特徴です。

『ラトビア、リトアニア、エストニアに伝わる温かな手仕事』

 著:赤木真弓 

 誠文堂新光社・2014年

 手芸関係の本を出している出版社から出た、バルト三国の伝統的なハンドクラフトを紹介する本。こういうタイプの書籍としては、ひと回り大きなサイズです。オールカラーで写真も豊富ですが、内容的には伝統工芸や手工芸の取材が大半で、そういう方面に興味がない人には向きません。民芸市、織物やリネン、陶器、かご等の工房や工場、作家のアトリエなど、記事自体は非常に充実しています。

 街歩きガイドという事で、地図や観光情報にも少しページは割いているものの、スポットの紹介は民族博物館や工芸美術館などが多い印象。各国のクリスマスや、料理、レストラン、お土産の紹介なども少しあります。

『旅するリトアニア』

 著:口尾麻美

 グラフィック社・2014年

 リトアニアにスポットライトを当てて、街歩きや自然、文化と行事、ハンドクラフトやオーガニックフード等を紹介する稀少な一冊。旅行先としてもあまり知られていない国ですし、どの記事もどの写真も、新鮮に目に映ります。レストランやショップの情報も載っていますが、章を設けて大きく取材しているのはハンドクラフトと食べ物。後者は、伝統料理やそのレシピから、クラフトビール、コーヒー、チョコレートまで、幅広く食文化を紹介しています。オールカラーで写真満載。

『バルト三国 愛しきエストニア、ラトビア、リトアニアへ』

 著:Sanna 

 書肆侃侃房・2016年

 『スウェーデン 森に遊び街を歩く』のフリーライターによる、オールカラーのガイド本。各国の簡単な紹介のあと、ショップやレストラン、カフェ、ハンドクラフトやホテルなど、ひと通り情報を紹介しています。これらの国独特の、大規模な歌の祭典を紹介しているのが特色ですが、各ページの写真が細々としてかなり小さいのと、お店の内部の写真が多く、町並みや風景があまり分からない所がやや不満。こういう本で写真を眺めるのが好きな人(私です)には、あまり向かないかもしれません。

『世界遺産の都へ 「ラトビア」の魅力100』

 著:ウエミチメグミ、三宅貴男

 雷鳥社・2017年

 対象をラトビアに絞り、100の項目で魅力を紹介するレアなカラー写真本。いわゆるガイド本的な体裁ではなく、A to Zみたいな「ラトビアにまつわる100の話題」という感じの構成がおしゃれです。写真も美しく、行かなければなかなか伺い知る事のできない、街の表情を細かく紹介していて、妄想旅行には最適の内容。

 通常、こういう本で取り上げそうなスポットは大体網羅していますが、ユニークな所では彫刻、ワイン、インターネット、スポーツ、検札、ウーマン・パワー、国旗、琥珀、水、通り雨なんて項目もあります。写真も美しく、豊富。

『おとぎの国をめぐる旅 バルト三国へ』

 著:渋谷智子

 イカロス出版・2018年

 埼玉の雑貨ショップ「rytas」、リトアニアの手仕事の店「fragmentas」のオーナーによる、旅のヒントBOOKシリーズの1冊。写真がみな美しい上に、風景やスナップショットなどチョイスや配置のセンスも良く、視覚的にも楽しい本です。各ページのデザインも秀逸。

 また、雑貨屋ばかりではなく、博物館や教会、修道院、市場、コスメ、コーヒー・ロースター、さらには理髪店、時計修理店まで扱う情報にも意外性があって新鮮。離島や避暑地の取材もしています。レストランも郷土料理だけでなく、ベルギー、ネパール料理店まで紹介。また、料理やスイーツが本当においしそうに見えますが、決して類似本が全てそうというわけではありません。もちろん著者の本職だけあって、手工芸関係の情報は充実。

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