欧州・二カ国以上

『文房具と旅をしよう』

 著:寺村栄次、浅井良子

 ブルース・インターアクションズ・2001年

 東京・本郷の文房具屋さん、スコス ステーショナリーズ・カフェのお二人による、買い付け日記風の旅行記。ただの旅日記ではなく、なかなかシャレた本になっている所がさすがです。豊富なカラーページで文房具や雑貨の写真を紹介している他、各国の郵便事情、郵便局でのやり取りや、旅の携行品のアドバイス、日本への商品発送の様子など、雑貨屋さんを目指す人達にも参考になるような記述が続きます。お国は、フィンランド、スウェーデン、イギリス、フランス、オランダ。

『スーパーマーケットマニア ヨーロッパ編』

 著:森井ユカ 

 講談社・2004年

 海外スーパーの雑貨を紹介する話題のシリーズ、ヨーロッパ篇。スーパーマーケットのみに焦点を絞った画期的な企画で、商品のみならず、欧州各チェーンごとの個性も捉えたオールカラーの小さな本です。取材されている街はロンドン、パリ、ベルリン、ストックホルムの4ヶ所。コラムも充実していて、オランダとベルギーのスーパーに少し触れている他、レシピカード、スーパー雑誌、スーパー袋やショッピングカートのランキングなど、遊び心に溢れていて楽しさ満点。

 著者は立体造形家だそうですが、雑貨関係の著書が多く、雑貨好きの人なら何冊かは手に取った事があるかもしれません(『IKEAファンブック』もこの人の本です)。ユニークな企画力が光るこのシリーズは続刊も要注目で、郵便局にターゲットを絞り込んだ『ポストオフィスマニア』、美術館グッズに着目した『ミュージアムショップ トリッパー!』、『ドラッグストア トリッパー!』など、どれもヨーロッパ各地の雑貨を紹介する著者の面目躍如たる企画。後者2冊は出版社が異なりますが、すべて正方形のミニサイズで統一感あり。

『タエコワーズのヨーロッパ・ヴァカンス便り』

 著:内生蔵妙子

 二見書房・2004年

 人気ホームページの名物コーナーを書籍化。グラフィック・デザイナーで、DJユニット「サヴァビアン」として都内クラブでも活動する著者が、ヨーロッパ9カ国(フランス、イタリア、ドイツ、スイス、モナコ、オランダ、ベルギー、デンマーク、スウェーデン)全50都市を巡る旅の写真日記。

 著者は映画好きらしく、古い映画のロケ地となったゆかりの場所をたくさん回っていますが、現代アートの美術館も豊富に紹介されている他、温泉、料理学校、レシピなど、テーマごとに詳しく紹介されています。残念なのは、ホームページが元になっているせいか、各項目がとても短い事と、写真の画質が幾分鮮やかさに欠ける事。イラストも豊富で、センスの良い本です。オールカラー。

『てづくりのヨーロッパ旅行 9か国絵日記』

 著:すげさわかよ

 大和書房・2004年

『チェコへ行こう!』の著者によるイラスト旅行記で、対象国はスウェーデン、デンマーク、オランダ、ベルギー、ドイツ、オーストリア、スイス、イタリア、ギリシア。かわいらしいイラストに気を取られがちですが、情報量の多さには圧倒されます。細かい文字とイラストでページ一杯にびっしりと描かれたその情報が又、かなりディープな内容だったりして、旅行ガイドとしても結構使えそう。ドイツのディンケルスビュールや、スイスのルツェルン、イタリアのアルベロベッロなど、オシャレ系の旅本ではあまり紹介されないような街にも行ってます。

『フランス、ベルギー ショコラを巡る旅』 

 ネコ・パブリッシング・2005年

 ミュゼ・ドゥ・ショコラ・テオブロマのショコラティエ、土屋公二がフランスとベルギーのショコラティエを紹介するオールカラーのムック。彼自身が修行をした店も含め、ダロワイヨ、ジェラール・ミュロ、ヴィタメール、ジャン=ポール・エヴァン、ゴディバ、リシャール、ピエール・マルコリーニなど、日本でお馴染みの人気店も数多く登場します。

 シェフの素顔やお店の裏側を垣間みる事ができる充実した内容ながら、見ているだけで心が湧き立つカラフルなチョコや店内の雰囲気、街角の表情が素敵な一冊。こういうチョコレートって、お店で見ると「高いなあ・・・」と感じますが、作り手の情熱や素材・製法へのこだわりを見ていると、あの一粒ってそんなに高くないのかなあと思ったり。まあ、時々は奮発して買ってみるのもいいかな。

『西欧のかわいいデザインたち オランダ・ドイツ・ベルギーから集めた、ステキな日用品』

 著:井岡美保/カナカナ 

 ピエ・ブックス・2006年

 『北欧のかわいいデザインたち』の続刊は、オランダ、ドイツ、ベルギーのかわいい日用品を紹介する一冊。著者は、奈良でカナカナという雑貨屋・カフェを営業している人。有名なお店ですが、私はまだ行った事がありませんが、著者が自費出版で出している『カナカナ旅のミニブック』は、たくさん持っています。これも、豆本サイズのかわいい見た目としゃれたコメントが気になっていました。

 オランダやベルギーの商業デザインはあまり日本に紹介されてこなかったと思うので、ひと通り紹介され尽くした感のある北欧の同種本と較べて、目新しい感じがします。こちらもオールカラーで写真主体、文章はコメント程度の分量。セレクト、写真ともにセンス良で、とても楽しい本だと思います。

『ヨーロッパのマーケット フランス、オランダ、ベルギー 雑貨とおいしいものを探す旅』

 著:les deux 

 ピエ・ブックス・2007年

 既に『旅のコラージュ バルト3国の雑貨と暮らし』など数冊の著書を出している、雑貨店「le petit merche(プチマルシェ)」の店主・滝村美保子と、イラストレーター松尾ミユキによるユニット le deux(レドゥ)の本。ここでいうマーケットとはスーパーマーケットではなく、蚤の市や朝市、屋内市場の事を指しています。徹底して蚤の市を紹介していて情報量が凄いですが、オールカラーでレイアウトや字体が可愛らしく、レトロチックな味付けの写真もおしゃれです。

 国別で言うと、フランスではパリ、アルザス、プロヴァンス、バスク、オランダではアムステルダム、ユトレヒト、ベルギーではブリュッセル、ルデュと、大都市以外も紹介。地図や住所リストも載っているのは親切だと思います。

『南欧のかわいいデザインたち スペイン・ポルトガルのセンスのよい日用品』

 著:pieni kauppa

 ピエ・ブックス・2007年

 “かわいいデザインたち”シリーズではお馴染みの、ネット雑貨店ピエニ・カウッパによる本。類書は多いですが、スペインやポルトガルにスポットライトを当てた雑貨本は珍しく、本書以外にはまだ無いかもしれません。例によって、あらゆる日用品のデザインをオールカラーで紹介していますが、南欧という先入観を持って見るせいか、特に色彩がポップで明るい印象を受けます(北欧のも結構派手ですが)。それでも、アメリカのデザインみたいにどぎつく主張してこないのは、ヨーロッパらしいセンスの良さ。カラフルなのに、美しくて繊細な感じがする所が凄いです。

『フランス・ベルギーのかわいい本』

 編:くりくり編集室

 二見書房・2009年

 雑誌のようなブックシリーズ「くりくり」と、その姉妹シリーズ「SORTIE」のスタッフが95年から08年にかけて撮影した写真を元に、旅行記風に構成した本。文庫本よりひと回り大きいくらいの、小さなサイズもおしゃれです。雑貨のみならず、お店、町並み、人物など、特に対象を絞らず、ぼんやりしたトイカメラ風の写真をコラージュっぽく配置。文章はさほど多くはありません。やや印象が散漫にも感じられますが、絵本には多くのページを割いています。雑誌のように、ぱらぱらめくって楽しむ本かもしれません。ほぼオールカラー。

『旅鞄いっぱいのパリ・ミラノ 文房具・雑貨のトラベラーズ・ノート』

 著:堤信子

 本の泉社・2011年

 “紙好き”フリーアナウンサーによる、2都市限定で紙モノ、文房具系に絞った紹介本。著者の興味の対象が限定されているので、同じ趣味の人には喜ばれる内容でしょうが、半分くらいのページがカラーじゃないのは残念です。内容自体はかなり本格的で、お店などもきちんと取材されているし、雑貨や文具、切手など、アイテムも写真付きで豊富に掲載。文章も達者ですが、ほとんど改行がなく、ぎっしり詰まって読みにくいのは難点。正方形の、小さめサイズの本です。

『PEN BOOKS ロシア・東欧デザイン』

 編:ペン編集部

 阪急コミュニケーションズ・2013年

 『キリスト教とは何か?』など良書をたくさん出している、雑誌「PEN」の番外編ムック・シリーズから。ロシアと東欧諸国(旧東ドイツも含む)のデザインを、豊富なカラー写真でたっぷり紹介しています。やや文章も多めですが、雑誌の記事に近い感覚で、あまり知られていないこれらの国のデザインや、その歴史を知る事が出来る稀少な本だと言えます。

 取り上げているジャンルも非常に幅広く、家具や食器、日用品、本やポスターなどは勿論の事、建築物、カメラ、車やバイク、自転車から果ては航空機まで紹介していて壮観。さほど厚みのない本なので紙面は限られていますが、デザイナーやクリエイター達も少し紹介されています。

Home  Back