■北欧・二カ国以上

『北欧 ナチュラルライフに出会う旅』

『北欧 デザインと美食に出会う旅』

 著:植月緑、鈴木緑

 東京書籍・1999年、2001年

 スウェーデンとデンマークの自然志向の生活スタイル、アート、食・住などを巡る写真入りエッセイ。前者はオーガニック・ガーデンの庭師やシェフ、デザイナー、エコロジー・ホテルのオーナーなど特定の人物に密着しているのに対し、後者はガラス工房や陶器工場、古城、クロ(宿)とレストランなど、場所を幅広く紹介。文章がメインなので、写真を中心に眺めたい人にはヴォリューム的に少々重たいかもしれないが、内容は読みやすく充実している。

 北欧特有の繊細な光を捉えた写真が美しく、紹介されているライフスタイルがひたすら素敵。著者はそれぞれインテリア雑誌編集、輸入家具バイヤーを経て雑誌の取材を行なっている2人。北欧雑貨ブーム黎明期の出版で、当時はまだこういう本も少なかった記憶がある。読んでいるだけで北欧に想いが飛んでゆく本。

 

『ロッタの北欧スケッチ旅行』

 主婦の友社・2004年

 テキスタイル・デザイナー、ロッタ・ヤンスドッターの北欧旅行を、エッセイとスケッチ、写真で紹介したオールカラーの美しいムック。「雑貨カタログ」誌の特別編集で、記事を再構成して掲載している部分もあって、ファッション雑誌のようなおしゃれテイストの本になっている。前年発売の、『ロッタちゃんのハンドメイドのある暮らし』の好評を受けて出た本という事で、本書を気に入った人にはそちらもお薦め。

 彼女はその後カリフォルニアに住んでいるが、本書では彼女が生まれたフィンランドと、幼少期を過ごしたスウェーデンを旅している。首都のヘルシンキ、ストックホルムだけでなく、郊外の町オーランド(彼女の生まれ故郷)やポルヴォーにも足を伸ばしているのも魅力。素顔を垣間見せるスナップの数々は、本人が被写体としてもモデルのように見栄えがする事もあって、どれも素敵。お気に入りのショップもたくさん紹介されているし、気軽に眺められる体裁ながら、じっくり味わえる本。

『北欧のかわいいデザインたち 〜日用品をたくさん集めてみました〜』

 著:pieni kauppa 

 ピエ・ブックス・2005年

 北欧の日用品を販売している人気のウェブサイト、pieni kauppa(ピエニ・カウッパ)が、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、デンマークの日用品や食品のパッケージ、買い物袋、ポスター、パンフレット、切手、雑誌や新聞、交通機関の切符、看板など、グラフィカルで可愛いデザインの数々をカラー写真で豊富に紹介。

 食器や家具、テキスタイル等の分野では日本でも何かと注目度の高い北欧デザインだが、敢えてそういう方面やアートの分野へは行かず、徹底して日用品をフィーチャーしている所がいい。本書辺りから、似た企画の本がたくさん出版されだした。文章は少なく、写真についての一口コメント程度。最後にはミニ買付け日記まで掲載されている。紙質も立派で充実の内容。サイトの人気の一端が窺える

『サルビア北欧日記』

 著:セキユリヲ

 ピエ・ブックス・2005年

 グラフィック・デザイナーの著者がアルネ・ヤコブセン、オーレ・エクセル、スティグ・リンドベリなど、北欧を代表するデザイナーゆかりの地やものづくりの現場を訪ねる、ちょっと突っ込んだ内容の旅日記。他にも、映画監督アキ・カウリスマキが経営する元老人ホームのホテルや、手刷りのテキスタイル工房・ヨブス、自然の中のものづくり村・フィスカルス、マリメッコやアラビアの陶器工場など、北欧デザインに興味がある人なら外せないスポットも数多く紹介。

 さすがはセキユリヲだけあって、イラストや手書き文字も活用した日記風のページ構成、シャレた写真、丸みのあるページ角、センス抜群の装丁デザインなど、書籍自体のモノとしての魅力も大。

『スカンジナビア・ノスタルジア』

 著:柳沢小実

 PHP・2005年

 エッセイストの著者による、デンマーク、スウェーデン、フィンランドの旅エッセイ。主に雑貨や食器、テキスタイル、衣料品に興味がある人向けで、ほどよく挿入される写真と共に、文章も落ち着いた大人の雰囲気。装丁デザインも含め、北欧の静謐なムードをよく表している。

 デンマークのレゴランドやフィンランドのイッタラ&アラビア社のミュージアム、マリメッコのお店など、著者の興味は既に日本でも有名なものが多いが、ローゼンタール・ガーデンやカウリスマキ監督のホテルなど、『サルビア北欧日記』に出て来たスポットも紹介されている。薄手の本なので、ちょっとした軽めの読書に。

『北欧雑貨をめぐる旅』

 著:おさだゆかり

 産業編集センター・2006年

 北欧雑貨に関する本はこの数年で随分たくさん出たが、雑貨店バイヤーの著書が結構あるのも特色。本書の著者も、サザビー・アフタヌーンティー・リビングのバイヤーから独立して、オンライン・ショップ・SPOONFULを立ち上げた人。日用品も紹介していないわけではないが、基本的に著者の関心はハンドクラフトやインテリア・デザイン、フリマで見つけたセカンドハンド等で、全体として手工芸品に興味がある人向きの本という感じ。

 特にサマースクールの体験記は、北欧でハンドクラフトを学んでみたい人には良い参考になるかも。もっともカフェや動物園、フェリー、図書館など取材対象は多岐に渡り、ホテルやミュージアム関係の紹介もあり。対象国はスウェーデン、デンマーク、フィンランド。オールカラーで、写真も雰囲気をよく伝えている。

『北欧トラベルダイアリー』

 著:すげさわかよ

 河出書房新社・2008年

 既にヨーロッパ全土やチェコに関する類書を出している著者の、北欧イラスト旅行記。フィンランド、スウェーデン、エストニアの様々な街を可愛いイラストで紹介していて、著者の他の本と同様、地図やショップガイドなど、微に入り細を穿って多彩な情報を満載。単なるイラスト本ではなく、旅行ガイドとしても有効に使える。カフェめぐりや現地のファッション・チェック、切手、絵本、フリマ、工場見学など、テーマの設定も変化に富んでいて、ガーリーなイラストに似合わずディープな内容。

『北欧の、おとぎばなしと雑貨たち』

 著:斎藤志乃 

 ピエ・ブックス・2009年

 フィンランドではトーベ・ヤンソンの『ムーミン』、スウェーデンではアストリッド・リンドグレーンの児童文学(ピッピ、ロッタちゃん、やかまし村)、デンマークではアンデルセンにまつわる施設や雑貨を紹介した、オールカラーのガイドブック。全体としては、雑貨類の紹介をおとぎばなしというテーマでゆるく括った感じで、特に作家を深く掘り下げた取材がある訳ではない。メルヘンチックで可愛らしい北欧雑貨本を探している人にはお薦め。

『北欧のおいしい話 スウェーデンのカフェから、フィンランドの食堂まで』

『北欧のおいしい時間 デンマークのカフェから、ノルウェーの食堂まで』

『コーヒーとパン好きのための北欧ガイド』

 著:森百合子

 P-Vine Books、SPACE SHOWER Books・2010年、2012年、2013年

 北欧の“食”にテーマを絞って、お店や文化を紹介した楽しい本。特にコーヒーに関しては大きなウェイトを置いていて、今コーヒー文化の新たな潮流を成している北欧の、特にリーダー国のようになっているノルウェーを中心に、その盛り上がりの熱さをヴィヴィッドに伝えている。

 著者が同じだけあって、前2冊と『コーヒーとパン好きのための北欧ガイド』には情報の重複もあるが、いずれもベーカリーや市場、レストラン、スイーツ、スーパーの商品から食器、レシピに至るまで、食にまつわる情報を広く扱っているのも嬉しい所。装丁やページのデザインもしゃれている。著者は、大使館の仕事を通じて北欧文化への見識を深めたという、コピーライター。12年には、東京・田園調布に北欧ビンテージ雑貨の店『Sticka』をオープン。

『北欧デザインの巨人たち あしあとをたどって。』 

 文:萩原健太郎  写真:永禮賢

 ビー・エヌ・エヌ新社・2011年

 デンマーク、スウェーデン、フィンランドをめぐり、建築、家具、インテリア、器、グラフィック、テキスタイルと、幅広い観点から北欧デザイン界の巨匠の足跡を追ったフォト・ドキュメント。それぞれの国で、アルネ・ヤコブセン、エリック・グンナール・アスプルンド、アルヴァ・アールトを中心に取材している。

 著者は全国展開している家具ショップ・アクタス出身という事で、家具やインテリアの専門知識なども文章に生かされているのと、写真家による美しく高品質な写真が満載されているのが特徴。写真ページはほぼオールカラーで、装丁やページ・デザインもハイセンス。巻末に、本文で取り上げたアーティスト達やブランドの紹介とインデックスが付いているのは親切。

 

『北欧かわいいものみつけた』

 著:斎藤志乃

 ピエ・ブックス・2011年

 フィンランド、スウェーデン、デンマークの可愛い物を色々と紹介するカラー写真本。意外にマリメッコ、アラビア、チボリ公園などの定番や蚤の市を紹介していたりもするが、ページ構成や写真のセンスが良いので楽しく読める。リネンやクロス、クッションなど布類も多いの。野外博物館や美術館、テーマパークなど、施設の紹介もあってコンセプトが絞り切れていない印象もあるが、広義で「かわいいもの」を捉えていると言える。

 

『北欧インテリアBOOK』

 著:森百合子

 宝島社・2012年

 北欧の実際の家庭に取材し、インテリアと生活スタイルに焦点を当てたカラーの写真本。スウェーデンを中心に、都会暮らしよりは郊外や田舎の家を紹介している。室内の写真も多いので、その辺りは田舎住まいの人でなくても参考になるかも。ただ、日本と違ってスペースにゆとりのある家が多いのも事実。ほとんどモデルルームみたいな部屋も多いが、北欧の人は本当にセンスが良いのだろう。

 

『北欧インテリア ブランド図鑑』

 ネコ・パブリッシング・2013年

 北欧インテリア105ブランドの新作、代表作をオールカラーで紹介するネコ・ムックの一冊。こういう本は大体アイテム別に掲載する構成が多いので、このスタイルは効率が良いし、ブランド自体に興味がある読者にとっては非常に有り難い。インテリアのブランドといっても、大抵は家具だけを作っているだけではないので、小物や日用品も紹介されている。

 今では北欧雑貨を扱うお店も珍しくはないし、百貨店やショッピングモールでもよく見かけるので、大抵のブランドは知っているつもりになるが、本書をめくるとまだまだ知られていない北欧ブランドがたくさんある事が分かる。無味乾燥な実用カタログにはならず、美しいページ構成で目を楽しませてくれる点も好印象。巻末には、国内ショップの紹介もあり。

 7/13 追加!

『北欧のおもてなし Nordic style home party』

 著:森百合子 

 主婦の友社・2015年

 北欧関係の本を多く出版している著者が、北欧流のおもてなしスタイルを紹介するカラー写真本。現地家庭の内装やインテリアも素敵だが、ホーム・パーティの本なので料理のレシピや食器、テーブルクロスなどインテリアの話題が中心。そちらの方面に興味がある人向け。

『北欧雑貨図鑑 いま手に入れたい最旬ブランド123』

 ネコ・パブリッシング・2016年

 北欧雑貨125ブランドの旬のアイテムをオールカラーで紹介する、『北欧インテリア ブランド図鑑』に続くネコ・ムックの一冊。北欧雑貨をブランドに分けて体系的に紹介してくれる本は案外ないので、ありがたくて稀少。

 前作は家具と日用品が中心だったが、本書では幅広く雑貨を紹介。ページをめくるだけで物欲が高まり、欲しい物がどんどん増えてしまう難点はあるが、知らなかったブランドやメーカーをたくさん教えてもらえる楽しさがある。巻末に国内の北欧雑貨取扱ショップや、北欧スタイルのカフェを紹介しているのも親切。

 

『北欧おみやげ手帖 12年間の「これ、買ってよかった」』 

 著:森百合子

 主婦の友社・2017年

 北欧関係の本を多く出版している著者が、現地で買った色々な物を紹介するカラー写真本。おみやげと銘打っているだけあってあまり大きな品物は扱わず、日用品や文具、キッチンツール、衣服、食品や食器など、雑貨の範疇に入るものばかり。セレクトのセンスは抜群だが、マリメッコのバッグやダーラヘストなど意外にメジャーな定番も紹介している。ただ、これ良いな、欲しいなと思っても、現地に行かないと買えない感じなのは残念。一点物だと、現地でも無理だろうし。

 7/13 追加!

『わたしの北欧案内 ストックホルムとヘルシンキ デザインとフィーカと街歩き』 

 著:おさだゆかり 

 筑摩書房・2018年

 過去にも北欧本を数冊出している著者が、都市を2つに絞って紹介。こういう本は雑貨の紹介に傾きがちだが、本書はお店や施設、文化の紹介が多く、実用面も充実。いかにヨーロッパとはいえ、やはりお店やブランドにも時代と共に流行、衰退があり、最新の情報が得られるのはメリット。

 著者は北欧のスペシャリストだけあり、ツリーホテルやアイスホテル、女子校を改造したホテル、森の墓地、トラムカフェなど、少々突っ込んでユニークな施設も紹介。オールカラーの写真も美しく、もちろん雑貨の紹介もあり。

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