■スイス

『めるへんいっぱいスイス紀行』

 絵:安野光雅  文:宮沢乃里子  写真:クラウス・ディーター・モイリッヒ

 東京書籍・1994年

 著者はNHKのディレクターで、『おかあさんといっしょ』『できるかな』等の子供番組も手掛けた人。その中には『安野光雅・風景を描く』という趣味の番組もあったという事で、その縁が本書に繋がっているようです(同じシリーズでデンマーク紀行の本も出ています)。あくまでエッセイがメインで、写真やイラストを含むカラー・ページはそれほど多いとは言えないかもしれませんが、どれも美しく、こまめに挿入されているので、あらかじめ読み物として捉えておけばヴィジュアル面からも充分楽しめます。

 スイスは見所の多い国で、著者によって取材地域がかなりばらつきますが、本書はハイジの舞台となったマイエンフェルトと、絵本作家カリジェゆかりの村トルン、グアルダに紙面を割き、後はシュタム・アム・ラインや切り絵で有名なシャトーデーなどの滞在記を少し入れた感じです。スイスのこういう本は意外に少ないので、貴重な一冊と言えるでしょう。

『小さな家とスイスの朝食』

 著:堀井和子

 KKベストセラーズ・2000年

 人気の料理スタイリスト堀井和子によるエッセイ。スイスだけでなくバスクの旅や、スイスもバスクも関係ない普通のエッセイも収録されています。写真やイラストが美しくおしゃれで、装丁もきれい。エッセイの内容も興味深いものなのですが、残念なのが著者の文章力。何と言うか、私にはものすごく読みにくかったです。ただ、さすが料理研究家だけあって、食べ物や飲み物の話題は豊富。簡単なレシピも載っています。

 個人的には、この本に載っているルツェルンのチーズ用カッティングボードを現地で探した事があって、思い出深い一冊(このカッティングボードは《旅のめっけもん》コーナーでご紹介しておりますので、是非ご参照下さい)。

『メイド・イン・スイス:小さな国の豊かなデザイン』

 監修:慶応義塾大学DMF  編集:フリックススタジオ

 ichii・2005年

 本書は旅とは全く関係のないデザインの本ですが、アルプスなど自然の観光やトレッキングに偏りがちなスイス旅行に、デザインや雑貨を見るという愉しみを付け加えるのに有意義な内容かと思います。そもそも、北欧やドイツ辺りと違ってデザインのイメージもあまりない国かもしれませんね。有名な所ではスウォッチや高級メーカーの時計、ヴィクトリノックスのアーミーナイフがありますが、本書ではまだまだあるスイスの豊かなデザインを紹介しています。

 ちなみに本書は、05年から我が国で実施されている国際博覧会「スモール&ビューティフル:スイス・デザインの現在」のコンテンツを元に制作されていて、表紙も厚くてしっかりした本だし、文章も多めで専門書的な雰囲気もあります。しかしカラー写真をグラフィカルに配置したページ構成は見ているだけでも楽しいし、アイテムも日用品やTシャツに至るまで幅広いジャンルから選ばれていて、必ずしも一部のデザイン・マニア向けの内容ではありませんので、広くお薦めしたいです。

写真集『MY SWITZERLAND』

 著:織作峰子 

 清流出版・2006年

 スイスの紀行物や写真集は圧倒的にアルプスの山関係が多く、街や雑貨、デザインに焦点を当てたものが少なくて残念ですが、本書は街や人の表情をふんだんに盛り込んだ珍しい写真集。特に子供や老人、動物などが生き生きと撮影されているのが印象的です。ロケーションはスイス全土に及び、その分、観光地の網羅的な写真集には全くなっていませんが、個人的には正にこういう写真集を待っていました。

 勿論、アルプスの山々をはじめ美しい風景も収録されていますが、少なくともアイガーやマッターホルンといった名峰は全く登場しないので、山の写真が見たい人は他の本を当たって下さい。それほど大きなサイズの本ではないので、軽い気持ちで購入できるのも嬉しい所。著者は1981年のミス・ユニバース日本代表で、任期終了後写真家を志して独立した人。テレビにも時々出ているようです。

『スイス悠遊』

 文:末安正博  写真:末安潤子

 成隆出版・2007年

 写真を満載した、オールカラーのスイス紀行本。5週間にも及ぶ旅という事で、ほぼスイス全土に足を運んでいる他、観光客が行かないマニアックな場所も果敢に攻めているのが本書の特徴です。スイスは小国ながら見所が多く、人気のスポットに絞っても一冊ではなかなか網羅しきれないものですが、その点から言えば、本書がカバーしている地域の広さは驚異的。もっとも、各地の記述は短く、有名な観光スポットにはそれほど焦点が当てられていない印象も受けます。

 著者は円谷プロやショウワノートなどで宣伝企画やデザイン部門を担当してきた人。つまり、プロの物書きではなく、カメラ担当の奥方もプロフィールを見る限りいわゆる普通の主婦のようです。写真は、飛び抜けて美しいとかセンスが良いという感じではなく、時折本人が写っていたりして、その辺は観光客の記念写真と大差ありません。

 文章も、旅の行程を事細かに著述するスタイルで、分量の多さと情報の詳細さには圧倒されますが、特に文学的な味わいやセンスで傑出している訳ではなく、ごくストレートな文章。いわば老夫婦の旅日記といった趣の、アマチュア的な雰囲気の本ですが、観光ツアーでは見られない絶景も多数収録していて、著者夫婦のスイスへの憧憬、愛着の強さをよく伝えます。

『スイスのかわいい宝物』

 著:Chiemi Clavadetscher

 ピエ・ブックス・2008年

 ヨーロッパのかわいい雑貨を紹介する本は、もう大体各国出揃ってきたものの、スイスだけはいつも含まれておらず、どことなく“かわいい雑貨”後進国の様相を呈しておりました。スイスびいきの私達としてはこの現状に寂しい気持ちもあり、当サイトではスイスで見つけたかわいい物を出来るだけ紹介してきたつもりですが、やっとピエ・ブックスが着手してくれました。著者は、静岡でSumirenoという花とスイス雑貨のお店を営んでいる人で、結婚してスイスに移住後、現地発送のオンライン・ショップも運営しています。

 内容は、チューリッヒのお店を中心に雑貨や日用品の他、フラワーショップ、レストラン、カフェ、さらには美しい山の風景や、四季折々の伝統行事の紹介など、雑貨にとどまらない充実した内容。アロイス・カリジェやハンス・フィッシャーなど絵本作家も取り上げていて、個人的には、正にこういう本を待っていました。これを機にスイスの雑貨やデザインが注目されはじめるよう、切に願います。オールカラー、写真満載。

Home  Back