■ドイツ

『ドイツ・クリスマスの旅』

 著:谷中央・長橋由理

 東京書籍・1995年

 ドイツのクリスマスにまつわる話題を一冊にまとめた、ロマンティックな暖かみの感じられる本。95年出版の東京書籍らしい読み物紀行なので、近年流行の雑誌感覚で編集されたヴィジュアル本とは趣きが異なるが、ヨーロッパのクリスマスに憧れのある私としては、よくぞこのテーマをチョイスしてくれたと大満足である。

 例によって文章ページとカラー写真のページがほぼ交互に現れる構成だが、シュトーレンやアドヴェント・カレンダー、クリスマス・マーケット、グリューワイン、キャンドル、くるみ割り人形などなど、ドイツの伝統的なクリスマス風物詩を詳しく紹介している。毎年クリスマスに凝った飾り付けをされる方には参考になるかも。

『ドイツデザイン No.1』

 えい出版社・2005年 *漢字変換できなかった為「えい」をひらがな表記。

 同社から出ているエイムックに『北欧スタイル』という人気シリーズがあるが、こちらは2005/06の「日本におけるドイツ年」に出たドイツ版。日本で入手できるドイツデザインプロダクトをほぼ全て集めたと豪語するだけあって、日用品や家具、家電製品、文具に至るまで、膨大な数のアイテムをほぼオールカラーで紹介。情報面で大変充実したムックだが、続刊は出なかった様子。

 特集の“ベルリン探訪”では、アーティスト達のインタビューも多数掲載、蚤の市のレポートや、パン/ソーセージ/ビールの紹介などのコーナーもあって、デザイン系のマニアックな記事に特化していない所が楽しい。それにしてもドイツデザイン、イケていますね。見ているだけで色々欲しくなっちゃう。

『ドイチュラント ドイツあれこれおしながき』

 著:山田庸子

 ピエ・ブックス・2005年

 当コーナーではお馴染み、ピエ・ブックスのドイツ本は、テーマを絞らず様々な話題に少しずつ触れてゆく、今風のマニアックなドイツ・ガイド。ざっとページをめくっただけでも、グラフィック・デザイナー達の対談あり、ベルリンのクマ探しコーナーあり、カフェや本屋の特集に、エーリヒ・ケストナーやサンドマン、レコード・ジャケットや建築家メンデルスゾーンの特集に、郷土菓子やプレッツェルのレシピ、蚤の市巡りと、雑貨好き世代の読者にぴったりな話題の拡げ方。

 後半数十ページを除いてほぼオールカラー、写真も豊富なので雑誌感覚で楽しめる。著者は結婚を機にベルリンに移り住んだグラフィック・デザイナーで、日本でもドイツの本や雑貨をテーマにした企画展やフリーペーパー等で活躍。写真の比重が大きな本だが、撮影は杉浦かな子という人。

『ベルリン かわいい街歩きブック』

 著:吉野智子 

 産業編集センター・2006年

 同社の“私のとっておき”シリーズは“プチ・マニアックな旅の本”を売りにしていて、情報のディープさ加減が良い案配である。本書はベルリンのカフェやショップ、ホテル、観光スポットなどを、著者の好みでセレクトした一冊。“乙女な”というフレーズが頻出する通り、かわいい物、ガーリーなものへのこだわりが徹底していて、いわば“乙女のベルリン”といった雰囲気。

 著者は何かのスペシャリストでもお店のオーナーでもなく会社員だそうだが、膨大な数のショップにきちんと取材をして、お店の人の言葉なども掲載しており、充分プロフェッショナルの名に値すると思われる。写真が全て白っぽく褪せているのが気になるが、敢えて古い写真のような風合いを出しているのかもしれない。オールカラー。

『ドイツ発見 ベルリン・セレクトA to Z』

 グラフィック社・2006年

 ベルリンという街の、先鋭的でモダンな側面に惹かれる人にはお薦めの本。アルファベット順に現代ベルリンの文化を取り上げているが、記事はそれぞれ別の人が書いており、執筆陣は現地のデザイナー、ラジオDJ、ジャーナリスト、学生、ミュージシャン、女優、教師、建築家、映画監督、写真家など、アマチュアからプロまで実に多彩。

 記事も公園やショップ、蚤の市、ギャラリー、カフェなど、ガイド本らしいものから、ユースホステルや映画館、プール、薬局、ビオトープ、ハマーム(トルコ式リラクゼーション)、クラブ、墓地、サッカー、集合住宅、温室、ダンスシアター、コインランドリーまで、普通は取り上げないようなマニアックなものも多数。写真がやたらファッショナブルにとんがっていたり、凝った書き出しで注意を引いたりと、各ライターの個性が出るのも面白い所。巻末のイエローページ(情報リスト)以外は、オールカラー。

『永遠のドイツデザイン Masterpieces of Greman Design』

 著:ハイデルベルグ・ジャパン

 グラフィック社・2007年

 積み木や日用品からポルシェまで、ドイツの秀逸デザインアイテム32点を紹介したカラー写真集。ページ数は55ページとさほどでもないが、大きさが縦33.4センチ、横26.4センチとメガサイズ。ページいっぱいに拡大された写真も多く、ディティールを味わい尽くそうというフェチ的な考えなのだろうが、ほとんどの本棚には入らないと思う。

 その分、写真の上質さは絶品。ライカのカメラやラミーのボールペンなど定番も多いが、この辺りはもう実物よりも写真のサイズの方が大きいのでは。とにかく、一点豪華主義的な写真のインパクトで見せてしまうユニークな本。

『素顔のベルリン 過去と未来が交錯する12のエリアガイド』

 著:中村真人

 ダイヤモンド社・2011年

 地球の歩き方「GEM STONE」シリーズから。カラー写真満載のガイド本で、これだけ細かくベルリンを紹介した本はなかなかないので、空想旅行として実に楽しく読める。観光ツアーでは行かないような、ベルリンっ子たちの活動エリアを取材しているのがメリット。ブランデンブルク門やベルリンの壁など定番スポットもフォローしているが、現地で暮らしていなければまず出会わないような風景をたくさん見られるのは嬉しい。

 それにしてもこのベルリンという町、あまりにも先鋭的な未来都市化が進行していて、いわゆるヨーロッパらしい雅びな古都を想像しているとびっくりする。それだけに、現代文化の発信地としては今、欧州有数の先進性があるというのも納得。

『ドイツ クリスマスマーケットめぐり』

 著:見市知

 産業編集センター・2012年

 良書をたくさん出している、私のとっておきシリーズの1冊。このテーマでは95年刊の『ドイツ・クリスマスの旅』があったが、さすがに本の造りや記事が古いと感じられる向きに最適の本。写真の配置や字体など、ページのデザインもぐっとモダンになっているので広くお薦めしたい。シュトーレンやアドヴェント・カレンダー、お菓子、くるみ割り人形など、クリスマスにまつわる話題にも周到に触れているし、グリューワインのカップ・コレクションやソーセージの食べ比べなど、コラムも充実。

 街のチョイスはローテンブルクやニュルンベルク、ベルリン、ドレスデン、リューベックと、大都市や定番のクリスマス市の他、アーヘン、フライブルク、ジークブルク、アンナブルク、ザイフェンといった、通好みの地方都市にも取材。ただし網羅的な情報本ではないので、旅行ガイドとして使う目的なら事前に一読して確認したほうがいいだろう。

『歩いてまわる小さなベルリン』  4/29 追加!

 著:久保田由希

 大和書房・2014年

 ベルリン在住で、ベルリンの魅力をブログ、書籍等で発信しているフリーライターによる、かなり実用的なガイド。街をブロックごとに分け、詳細な地図を元に飲食店、雑貨店、アパレル・ショップ、家具ショップ、ホテル、ギャラリー、スーパーマーケット、蚤の市など、詳しい情報を掲載している。

 こういったショップ紹介に特化した本は、店内の写真がメインになって空想旅行には向かない事が多いが、本書は空間性を感じさせる大きな写真も多く、街並の様子も適度に入って紙面に開放感がある。ページのデザインもおしゃれで可愛い。ただ、情報がメインの本には全て言える事だが、ガイドブックとして使うなら内容が現行かどうか事前に調べる確認作業は必須。オールカラー。

『ドイツ・クリスマスマーケット案内』

 著:沖島博美

 河出書房新社・2015年

 こちらもクリスマスマーケットの本。オーストリア(ウィーン、ザルツブルグ、インスブルック)も含めたたくさんの街を取り上げているのと、夜景の写真が多いのが特色。類書でも紹介しているドイツのクリスマス文化にまつわる諸々の話題は最後にまとめてあるが、こちらはモノクロのページが多く残念。街の紹介でも、さほどメジャーじゃない都市はモノクロだったりするが、他社ならオールカラーにしたかもしれない。

■オーストリア

『ウィーンのカフェハウス』

 著:田部井朋見 

 東京書籍・2007年

 古くから栄えた華やかなカフェ文化を持つオーストリア、ウィーンのカフェハウスについて、その奥深い文化や歴史から、利用法や愉しみ方まで、豊富なカラー写真と共にたっぷりと語り尽くした素敵な本。東京書籍のシリーズなので文章の比率が大きいが、その文章が予想以上に軽妙で読み易く、楽しめる。

 圧巻は、全体の半分近くの分量を費やしたカフェ名店ガイド。各店の詳しい解説に加えて、電話番号や営業時間、地図などの実用的情報も完備している。メニュー内容も美しい写真で紹介されていて、飲み物の他にもスウィーツ類やパン、郷土料理にも紙面を割いていて親切。オーソドックスな構成で、決してファッショナブルな造りではないが、ページをめくるだけでほんわりと豊かな気分に浸れる本。

『ウィーン旧市街 とっておきの散歩道』

 著:山口俊明

 ダイヤモンド社・2008年

 地球の歩き方ビジュアルブック・シリーズ。96年に出たエッセイ『ウィーン 旅の雑学ノート』の文章に、07年夏撮影の写真を盛り込んで再編集されたもので、イラストもたくさん入って可愛らしいページ構成。各エリアごとに細かい散歩コースの地図が出ているので、旅に必要な情報をある程度持っている人には、通常の観光ガイドよりずっと使える本かも。勿論、旅行に行かなくてもページをめくるだけで楽しい。オールカラーで情報量も豊富。

『ウィーントラベルブック』

 著:塚本太朗 

 東京地図出版・2009年

 東京、東神田のドイツ雑貨店「MARKTE(マルクト)」のオーナーで、雑貨関係の本も多数出している著者によるウィーン案内。オールカラーで、いわゆる観光名所からカフェ、レストラン、スーパー、ショップ、ホテル、建築、蚤の市、工場見学まで、豊富な写真と共に独自の視点で紹介。

 ウィーンに関してはこの手の可愛い本が今までほとんどなかったので大歓迎。オーストリア航空の歴史など、興味深い記事も多数。地図のページも冒頭にあり、各スポットの情報も完備しているので、若者向けの旅行ガイドとしてこれ1冊でも使える。一青窈のコメントが付いた帯も紙質共々なかなか味わいがあるので、帯付きの新品がお薦め。

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