■イタリア 

『麗しの郷ピエモンテ 北イタリア 未知なる王国へ』

 著:山岸みすず、井川直子

 昭文社・2005年

 トリノ・オリンピックの時期に合わせて出版された、北イタリア、ピエモンテ州の特集本。ピエモンテはシチリアに次いでイタリア第二の広さを持つ州ですが、州都のトリノも含め、他のイタリアの都市と較べるとあまり知られていない印象があります。

 オールカラーで写真満載、ガイド的な情報から作家やアーティスト達による寄稿など、豊富な内容を誇る本ですが、書店で手に取ってパラパラめくってみて、まずは各ページの写真の美しさに目を奪われました。特にトリノの文化を支えてきたカフェ、世界中から美食家が集まるリストランテやピエモンテ・ワインなど、食に関するページには、ひときわきれいな写真が並んでいます。どれも、簡単に手が届くお値段ではありませんが、写真を眺めているだけで目の御馳走というか、充分おなか一杯。

『ローマのおさんぽ』

 著:Studio Yuccino 

 竹書房・2005年

 パノラマ写真を横へ横へと繋げて、街の中の様々な通りにあるお店や建物を網羅的に紹介するこのシリーズ、最初は『パリのおさんぽ』から始まったと記憶しますが、ヨーロッパの都市で次に出たのが本書。とにかく企画のユニークさで頭一つ抜きん出た本ですが、情報面も充実していて、ガイドとしても使えそうです。もっとも、ぱらぱらとページをめくっているだけでも本当にそこに行った気になれるので、私のようにヴァーチャル旅行を楽しむタイプにはすごくうれしい本。もっと色々な街でやってくれないかな、と思っているのですが…。オールカラーで横長サイズ。

『ミラノからの小さなおみやげ』

 著:徳永佳代

 ギャップ・ジャパン・2007年

 ミラノ在住のフリー・エディター/スタイリストが、旅行のおみやげにお薦めのアイテムを紹介。どちらかといえばお店紹介といった性格が強いですが、現地在住者ならではの視点から、旅行ガイドではなかなか知る事のできないディープな情報をたくさん掲載していて、旅行の予定はなくても、イタリア好き、雑貨好きの人には最適でしょう。

 著者が現地で出産、子育てを経験している事もあり、子供向け商品やオーガニック食品などの情報も紹介。職人さん手作りによるこだわりのお店からスーパーマーケットまで、多様なニーズにも対応している他、街中の公園やデザイン・コンシャスなホテルの紹介、ミラノっ子のライフスタイルなど、話題もおみやげに限定せず幅が広いです。オールカラーの各ページは、デザインや写真のセンスもマル。ちなみに、著者の名前は最後のページに小さく載っているだけで、表紙やカバーには記載がありませんので念のため。

『イタリアのカフェ&ドルチェ』

 著:富田佐奈栄

 産業編集センター・2009年

 日本カフェプランナー協会の設立者で、カフェズ・キッチンの学園長である著者が、20年通ったイタリアの、カフェとスウィーツを紹介する、《私のとっておき》シリーズの1冊。現地で覚えたイタリアン・ドルチェのレシピも載っています。ローマ、フィレンツェ、ナポリそれぞれのお店や郷土菓子等の紹介の他、アグリ・ツーリズモの体験記やエスプレッソ・マシン工場の見学があるのはユニーク。ほぼオールカラーで写真も豊富です。職業柄か、カフェ経営を目指す人向けのアドバイスもちょこちょこ入ります。

『トスカーナの暮らしとインテリア イタリア流スローリビング』

 トーソー出版・2009年

 最近よく聞くようになった「アグリツーリズモ」。いわば農家が経営する宿、イタリア流のB&Bみたいなものですが、イタリアではもう田舎バカンスの代名詞として使われるくらいメジャーな言葉だそうです。本書では、トスカーナのアグリツーリズモを計9件、オールカラーで紹介。ほとんどが写真で文章は最小限、それぞれの宿の雰囲気や特色を美しい写真で知る事ができる魅力的な本です。表紙には著者の名前が書かれていませんが、取材と文は岩田砂和子、写真は井田純代が担当。

『アマルフィ&カプリ島 とっておきの散歩道』

 著:池田匡克、池田愛美

 ダイヤモンド社・2011年

 地球の歩き方 gem STONEの1冊。このシリーズはピンポイントでこだわった情報をオールカラーの美しい紙面で紹介していて、お薦めです。本書はナポリの南に位置するアマルフィ海岸の一帯と、カプリ島に対象を絞った稀少な一冊。美しい写真が豊富で、眺めるだけでも楽しい一方、レストランやお土産ショップ、屋台、ホテルなどの情報もたくさん紹介しています。とにかく、どの場所も目を奪われる絶景ばかりなので、妄想旅行用の写真集としては余す所なく楽しめる本です。

『かわいいイタリア イタリアの雑貨とおしゃれと散歩の話』

 著:添田有美

 マイナビ・2012年

 代官山で手芸店を営む著者が、ローマ、ミラノ、フィレンツェで見つけたかわいい雑貨やお店を紹介。他に、スーパーマーケットや蚤の市も取り上げています。著者の専門分野ゆえ、やはり手芸関係のお店が多いですが、カフェや書店、革製品やキッチングッズ、ジュエリー店、レコード店、文具店、薬局にも取材していて、内容も写真も豊富です。アリタリア航空の紹介もあり。オールカラー。

『とっておきのフィレンツェ/トスカーナ おいしいものと素敵なところ』

 著:古澤千恵

 筑摩書房・2012年

 イタリア中部のフィレンツェと、その近くの丘陵地帯トスカーナ地方に照準を絞ったカラー写真ガイド。類書の中では文章の量が多い印象ですが、どのページにも写真が入っているし、大きなサイズの写真だけで構成された美しいページも挟んでいます。

 サブタイトルの通り、食べ物の紹介が最も多く、その合間に花屋、文具店、活版印刷、図書館、薬局、インテリア/アンティークショップなど、幅広いスポットを取材。むしろ内容が先で、後からサブタイトルを発想した感じです。紙モノをはじめ、エプロン、石鹸などピンポイントのアイテムも採り上げられ、雑貨好きにもアピールしそうな内容。

『ヴェネツィア カフェ&バーカロでめぐる14の迷宮路地裏散歩』

 著:篠利幸

 ダイヤモンド社・2013年

 地球の歩き方 gem STONEの1冊。人気の観光地ヴェネツィアは、行った事のない私からすると運河と広場とガラスくらいしかイメージがないですが、本書はカフェとバーカロにスポットを当てたユニークな構成。夜の写真が多いこともありますが、思わずそこへ行って一杯やりたくなる楽しそうな光景が続出します。夕景や逆光の写真など、光と影の美しさを見事に捉えた写真の数々も魅力。アートや手仕事の工房、造船所や郊外のワイナリーなど、テーマ以外の情報もフォローしているのが親切。

『「イタリアの最も美しい村」全踏破の旅』

 著:吉村和敏

 講談社・2015年

 イタリア全土の田舎に点在する234の村を、オールカラーで紹介したガイド写真集。『「フランスの美しい村」全踏破の旅』が反響を呼び、第2弾として企画されたものですが、全150村だったフランスと較べると取材対象がぐっと増え、本自体も厚みを増しています。前作は、詰め込みすぎて各村に1ページしか当てていないのが残念でしたが、本書は村によって2ページ当てていたり、大きなサイズの写真も混ぜるなど、見た目が改善されています。

 一読して分かるのは、やや地味で似通った雰囲気の村も多かったフランスと較べると、イタリアの場合は場所によって全く建築様式のコンセプトが異なる事。風変わりなデザインで統一された村も多く、全景の写真など、「なんだここは!」と叫びそうになるおとぎ話のような風景も目に飛び込んできます。色彩的にも、フランスと較べるとカラフルな感じがするのはお国柄でしょうか。一般の観光旅行ではなかなか行く機会のなさそうな村ばかりなので、ぜひ紙面で空想の旅をしてみて下さい。

■マルタ

『まるごとマルタのガイドブック』

 著:林花代子

 亜紀書房・2017年

 マルタ共和国だけに照準を絞ったガイド本。私などはマルタというのが複数の島からなる国で、イタリアとは別の国だという事すら、本書を手に取るまで知りませんでした。マルタへ行こうという人以外はなかなか縁のない本かもしれませんが、情報量は圧倒的。あらゆる施設やお店の住所、電話番号、サイトのアドレスが丁寧に記載されています。情報の鮮度は問題になるかもしれませんが、まあ日本ほどお店の入れ替わりも早くないでしょうし、事前にネットで調べられる時代ですから・・・。

 こういう本を眺めて旅行をした気分になる目的の読者(私がそうです)には、写真がみんな小さいのが難点かもしれません。何といっても、内容は「地球の歩き方」を凌駕するほどの情報ガイドですし、持ち運びを意識してかスリムなサイズに製本されています。しかし、ほぼオールカラーでパラダイスのように美しい南国の風景がてんこ盛り。著者のコメントも旅行本並みに読めるので、この欄で紹介するのは妥当と判断しました。

Home  Back