あまりにもドラマティック! 人生の機微に満ちた、嘘のような本当の10話

ジーノの家 イタリア10景』 (文春文庫)

 内田洋子  

 神戸生まれ、イタリア在住30余年で欧州〜日本間のマスメディア向け情報発信を行ってきた著者による、すこぶるドラマティックなエッセイ集。イタリア生活を描く女性エッセイストというと、読書好きの頭にはすぐに須賀敦子が思い浮かぶかもしれませんが、本作の文体は須賀作品の、ストイックに磨き抜かれた文学性の濃い日本語とは少し違います。むしろ、ジャーナリズムに携わってきた人らしく、情景を正確に生々しく伝える、明晰な文章と言えるかもしれません。

 特筆大書したいのは、彼女自身が経験したり、見聞きしてきた各エピソードの、まるで映画か短編小説かというほどの物語性の強さ。本作に収録された10篇は、エッセイであってエッセイでないような、ほとんど小説と同等の強い読後感と余韻をもたらす話ばかりです。あまりに話がよく出来ているので、私などはちょっと信じられないというか、これは本当にあった事なのだろうか、事実だとしても少し脚色しているのではないかと勘ぐってしまったくらい。

 須賀敦子ほど文学的ではない、と先に書きましたが、それでも文章は美しく、味わいに富んでいて、時にウィットも感じさせる自在な文体によって、イタリアに生きる様々な人々の人生模様や人情の機微を活写しています。日本エッセイスト・クラブ賞、講談社エッセイ賞という、この分野において最有力と言われる二つの賞を史上初ダブル受賞したのも納得の一冊。情感も豊かで、感銘度の深さには太鼓判を押したい傑作エッセイ集です。続刊も必読。

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