“幻想的で美しい死、悽愴で悲劇的な死”
『かくれんぼ・毒の園 他五篇』 (岩波文庫)
フョードル・ソログープ 訳:中山省三郎、昇曙夢
かくれんぼに夢中になる内、それが不吉な予兆となって病に倒れる幼い少女。影絵に熱中するあまり、優等生から劣等生へと転落の一途をたどる少年。毒をもたらす美女と共に、命を投げ打つ青年。ソログープが描く登場人物は、子供であれ大人であれ、みな夢と現実の狭間を漂って、美しい非現実的な死に向かって突き動かされてゆく。
『毒の園』のように、ロマン主義的な陶酔のムードが濃厚な死もあれば、『かくれんぼ』『子羊』のように悲劇的な色合いの濃い、恐ろしいほど真に迫った悽愴な作品もあります。そうかと思えば、『白い母』などは人情もののような雰囲気もあり、最後には戯曲『死の勝利』が配置されて、短編集としてはなかなか盛りだくさんな内容と言えるでしょう。
ソログープ(1863-1927)はロシア前期象徴主義を代表する詩人、作家。幻想的な作風ながら、苛烈なストーリー展開と迫真の描写力によって、読後感は圧倒的です。こんな凄い作家がいたなんて、私も勉強不足でした。翻訳の調子がかなり古風なので、そろそろ新訳を期待したい所。
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