社会学者である著者が、社会学のカテゴリーに収めきれない断片的な出来事を、アンソロジー的に集めて一冊にまとめた本。新聞広告や帯で様々な分野の人達が素敵な賛辞を寄せていて、それがいわゆる学者の本っぽくなかったので、思わず惹かれて手に取りました。 内容は本当に断片的ですから、必ずしもオチのようなものや分かりやすいメッセージがあるとは限らず、中には「何なんだこの話は」というくだりもあります。著者は主にマイノリティの人々に取材をしていますから、本書に束ねられたエピソードもそういう人々に関するものが多くなり、必然的に、ごく普通の身辺雑記とは異なる肌触りを持つ事にもなります。例えば夜逃げとか、暴力とか、裏の商売とか。 それでも本書が、どこか柔らかなタッチで、心に沁み入るような言葉を差し出してくるのは、ひとえに著者の人柄や物の見方による所が小さくありません。著者は関西人ですので、自身のセリフがベタベタの関西弁で記述されるのも、こういう本としては独特に感じられます。でもやっぱりこの人は、語り口が巧い。そして、構成が巧い。こんな断片の中から、それでもやっぱり、様々な生き方の有りようが、人生の機微が、立ち現れてくるじゃありませんか。単に良質のエッセイを読みたいという人だけでなく、小説や脚本を書いたりする人も、一度読んでみるといい本かもしれません。 |