“世界中で、あらゆるシチュエーションで、本を読む人たちの姿を捉えた名作写真集”

『読む時間』(創元社)

 アンドレ・ケルテス  訳:渡辺滋人

 名写真家ケルテスによる、本を読む人の姿ばかりを集めたモノクロ写真集。1971年に出版された彼の代表作が、谷川俊太郎の書き下ろし詩を巻頭に、新版として登場しました。書店を営んでいたらしい亡き父の記憶もあってか、故郷のハンガリー、後に移り住んだパリ、ニューヨークでも彼は、読む事に心を奪われる人の姿を撮り続けます。1915年から70年までの55年間、ゆうに半世紀以上に渡ってです。

 ヨーロッパや南米の他、タイ、フィリピン、東京や京都の写真も数点あります。屋上、公園、街角、学芸会の舞台袖、ホスピス、ベッドの上、裸足の子供達や聖職者の姿もあるかと思えば、本にとまった昆虫の写真など遊び心もあり。電子書籍も普及しつつあるこの時代、紙の本を読む歓びを、この作品集はヴィヴィッドに、かつ愛のある眼差しで伝えていて秀逸です。

 写真集としてはサイズが小さく(普通の単行本くらいの大きさ)、ページ数も少ないのは利点。装丁もシンプルで美しく、大判の写真集マニアでなくても、一般の読書好きの人が気軽に手に取れる本になっています。

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