“多彩なユーモアセンスをちりばめた、むしろ大人向け(?)の童話小説”

『チャペックのこいぬとこねこは愉快な仲間』 (河出文庫)

 文と絵:ヨゼフ・チャペック  訳:いぬいとみこ、井出弘子

『ダーシェンカ』の所でご紹介したカレル・チャペックのお兄さんが、このヨゼフ・チャペックです。彼もまた、チェコを代表するイラストレーター、デザイナーとして様々な業績を残し、最近では彼の装丁デザインを集めた本なども出版されていますが、こういった童話風の小説も書いていた事は、あまり知られていないかもしれません。もっとも、小説ではあっても、お得意のイラストは全編に渡ってふんだんに挿入されています。

 敢えて“童話風の小説”というのは、漢字にルビが振られていないし、著者のユーモアセンス自体も結構辛辣だったりして、大人を笑わせようという意図がなくもないからです。ひとつ屋根の下で共同生活を営むこいぬとこねこの間抜けなやり取りは、基本的にドタバタ調というか、スラップスティック・コメディのような単純な設定に基づいているのですが、それが、やり過ぎてシュールな展開になっていったり、オフビートな笑いに転化したり、ちょっと、児童文学とは言えない方向へ持って行かれる感触があります。二匹が著者のチャペックに会って抗議を行うというようなメタフィクション的な展開があったかと思うと、地味にダジャレを連発したり…。結論から言うと、よく分かりません。読んでみて下さい。私には、不思議と笑える本でしたけど…。

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