新潮クレスト・ブックス初期の話題作『ソーネチカ』の著者による小品集。スターリン時代のロシアで、中庭のあるアパートに住む子供達の日常を、優しくも透徹した眼差しで描いた6篇の物語で構成されています。帯には“大人のための絵本”と謳われていますが、さほど挿絵が多い訳ではなく、児童書くらいのバランス。 イラストを書いたリュバロフは、本書でコラボする前に著者と出会ったのですが、実はウリツカヤと同い年で、住んでいた家も近所。モスクワの同じ学校で、同級生だった事が分かったそうです。そんな2人の幼少時の記憶が、生き生きと躍動する本書。少しシュールなイラストですが、ほっこりとしたコクのある色合いと詩情に溢れ、我が国の絵本作家・出久根育のスタイルとも共通しています。 物語には共通したパターンがあって、どの子供達もちょっとした窮地に陥るのですが、そこに何かしら奇跡のような事が起きます。『ソーネチカ』の解説で柴田元幸は「人間の祝福」という表現を用いていますが、本書における子供達への暖かな視線も、出版社は帯で「祝福」と形容しています。言い得て妙ですね。扉のミニ解説は、作家の梨木香歩が寄せています。 |