“街ブラ感覚で建築の雑学を詰め込んだ、敢えて情報過多を楽しむ一冊”

『建築デザインの解剖図鑑 まちで目にするカタチを読み解く』 (エクスナレッジ)

 スタジオワーク

 建築のスタイルや歴史を取り上げた本ではありながら、いわゆる名建築ではなく、街中で目にする様々なカタチに焦点を当てた内容。分類としては建築関係になるのでしょうが、どちらかというと雑学の本という感じです。NHKの番組『ブラタモリ』みたいに、街歩きをしながらあれこれと観察して、その由来や機能性を語るような楽しさがメインで、その意味ではありそうでなかった本かもしれません。

 情報の密度が高く、細かいイラストや文章がびっしりと書き込まれていて、かなりマニアックな内容。建物だけでなく、坂道やお堀、窪地や街並など地形に関する項目もあるし、路地、横丁、井戸、仏像、地蔵、駅、銭湯、タバコ屋から、塀、竹垣、縁日の屋台配置まで、テーマは実に多彩。古い建物ばかりでなく、復興公園やガード下、のれんや看板など、現代的なトピックも取り上げています。もちろん、建築デザインについての項目も多数あり。

 著者のスタジオワークとは、建築士の資格を持つメンバーから成るグループ。各人の経歴や参考文献も紹介されていて、ちゃんと信頼のおける書籍となっています。

“世界の名建築を取り上げ、徹底的に細かい情報を網羅”

『世界名建築解剖図鑑』 (エクスナレッジ)

 オーウェン・ホプキンス  監訳:伏見唯、藤井由理  訳:小室沙織

 一方こちらは同じ出版社から出ているシリーズですが、対照的に名建築をクローズアップ。やや大判のサイズで、世界の色々な建築物を例にとって、各部の名称やスタイル、機能を紹介した図鑑です。写真も豊富で建築好きにはたまらない内容ですが、テーマがあまりに細かいので、「デザイン面からちょっと建築に興味がある」という程度の読者(私がそうです)には、本格的すぎて容量オーバーの情報量。逆に、建築デザインの詳細まで知りたいという人には、なかなか充実した内容ではないでしょうか。

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