エルザ・ベスコフ

Elsa Beskow

* 作家紹介

  1874年、スウェーデンのストックホルム生まれ。少女時代から絵が好きで、工芸学校卒業後、母校の小学校の絵の先生に。牧師のナタナエル・ベスコフと結婚したのを機に教師をやめ、6人の子供を育てながら、家で絵本や児童書の挿絵の仕事をはじめる。1952年、スウェーデンの子供の本に対する最高賞、ニルス・ボルゲンソン賞を受賞。1953年没。

 生年をご覧になってお分かりの通り、このコーナーの他の作家達と較べて、さらに古い時代の絵本作家です。下欄でも取りあげているデビュー作の『ちいさなちいさなおばあちゃん』はなんと1897年の出版ですが、このコーナーで19世紀の絵本を取り上げるのは勿論初めて。作品は、癖のないシンプルな線と趣味の良い、淡いめの色彩感覚で描かれた、目に爽やかで心優しいものですが、実生活では8歳の息子をスケート中の事故で失うという悲運にも見舞われました。しかし、夫と子供達、そして絵本を作りたいという気持ちは、悲しみを乗り越える大きな支えになったといいます。

* 作品

『ペレのあたらしいふく』(福音館書店)

『おりこうなアニカ』(福音館書店)

『おもちゃ屋へいったトムテ』(福音館書店)

『ぼうしのおうち』(福音館書店)

『ペッテルとロッタのクリスマス』(福音館書店)

『ラッセのにわで』(徳間書店)

『おひさまのたまご』(徳間書店)

『リーサの庭の花まつり』(童話館出版)

『いちねんのうた』(フェリシモ出版)

* おすすめ

『ちいさなちいさなおばあちゃん』(1897年、スウェーデン)

 作・絵:エルザ・ベスコフ

 訳:いしいとしこ

 偕成社・2001年

 ベスコフのデビュー作。近代絵本の芸術性を高めたと言われ、百年以上も世界で愛読されてきた不朽の名作です。なぜか、我が国でこの本が紹介されたのはやっと2001年になってからでした。しかし、本書を開いてみた事のある人はご存知の通り、そんな古い作品とは思えないほどお洒落な絵本です。どのページも、白地の中央に丸い枠が開いていて、その中に絵と文章が描かれています。私は、こういう形式の絵本を他であまり見かけた事がないので、とても斬新な感じがしました。

 文章は簡潔で遊び心に溢れていますが、日本語版は字体も可愛らしいデザインで微笑ましいものです。絵の方も、白樺やキノコなど北欧らしい自然の他、室内の様子なども美しく描き込まれていて、異文化への興味をそそります。小さな小さなおばあちゃんに怒られたネコが、森へ逃げていってもう戻りませんでした、という結びがオリジナルですが、ネコのその後を心配する子供達の事を考え、ベスコフは初版から50年も経って、小さな文字で最後に文章を付け加えました。これも、いいエピソードですね。一家に一冊は欲しい、素敵な絵本。

*   *   *

『ウッレのスキーのたび』(1907年、スウェーデン)

 作・絵:エルザ・ベスコフ

 訳:石井登志子

 フェリシモ出版・2002年

 こちらはデビュー作からちょうど十年後の作品。6歳の誕生日にスキーを貰ったウッレが、森で霜じいさんや冬王様、雪解けばあさんなど、不思議な人物と出会う話。雪が溶けて怒るウッレですが、そんな彼も、春の到来に喜びを感じられるようになります。モノクロのイラストも多数挿入される、大人が見ても楽しめるセンスの良い絵本。というより、アマゾンの読者レビューの中には、子供には色彩が地味すぎるのか、反応がよくなかった旨の書き込みがありました。私達が所有しているのは英語版の『Ollie's Ski Trip』ですが、これも梅田・中崎町の雑貨屋さんで入手したものです。

*   *   *

ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん(1901年、スウェーデン)

 作・絵:エルザ・ベスコフ

 訳:おのでらゆりこ

 福音館書店・1977年

 こちらはまちこまき氏が幼少の頃から持っていた絵本ですが、内容の濃さにびっくりの逸品。お母さんの誕生日のために、ブルーベリーとこけももを摘みに森へ行ったプッテが遭遇するのは、なんとブルーベリー色の衣装(演劇風デザイン!)を来た小さな七人兄弟。彼らはブルーベリーの茂みによじ上って実を穫ってくれるだけでなく、もみじの葉を帆にして川を下ったり、ネズミにまたがって森を駆け抜けたりするのです。

 これだけで驚いてはいけません。次には、こけももかあさんと五人の女の子が登場。みんな赤ずきんみたいな衣装を着て、こけももを磨いています。ものすごい構図です。今度は彼女達がこけももをカゴ一杯にくれて、プッテはお母さんへの誕生日プレゼントをたっぷりと手に入れます。ラストのページがこれまた小粋な感じです。それにしても、ものすごい冒険譚。ベスコフらしいサラッとした画風で描いてはいるものの、内容的にはティム・バートン辺りが映画化してもおかしくないような大胆な展開。

 

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