ヘルガ・ガルラー

Helga Galler

* 作家紹介

 『まっくろネリノ』の著者紹介文によれば、「ヘルガ・ガルラーさんは、1939年オーストリアのウィーンに生まれた、たいへんきれいなおねえさんです」とのこと。本職はデザイナーで、美術工芸学校を出た後、イタリアで暮らしたり、渡米したりして、テキスタイルや室内装飾、映画のアニメーションの仕事など、幅広い分野で活躍。

 68年の絵本『まっくろネリノ』は彼女の初めての絵本で、その年、オーストリアの子供の本の最優秀賞に選ばれています。その後は、『二人の星どろぼう』『銀の王子さま』『にこにこちゃんといやいやちゃん』など4冊の絵本を発表しているそうですが、いずれも現時点で邦訳はなく、洋書でも今の所は見かけた事がありません。読書好きの若者の間で人気の書店、ユトレヒトさんのHPサイト情報によると、正式なクレジットはなされていませんが、60年代のお洒落スパイ映画『カジノ・ロワイヤル』のタイトルバック・デザインに、彼女が参加しているようです。

* おすすめ  

『まっくろネリノ』 (1968年、オーストリア)

 作・絵:ヘルガ・ガルラー  

 訳:矢川澄子

 偕成社・1973年

 小鳥(?)のネリノは、5兄弟の末っ子。でも色が真っ黒なせいで、一緒に遊んでもらえず、いつもひとりぼっち。そんなネリノが、持ち前の優しさと機知を発揮して、苦境に陥った兄弟達を救い出す。

 幼児期の孤独な悲しみや疎外感、そして、それを乗り越える強さ、うれしさを、いかにもデザイナーらしいグラフィカルな作風で、優しく、繊細に描いていて、とても心に沁みる絵本です。柔らかなパステル画で描かれた各ページは、味わい深く、可愛らしく、おしゃれで、どのページをとっても、そのままポスターや絵葉書にしたいくらい。

 こういうものを発見すると、思わず同じ作家の他の絵本を探してしまいますが、残念ながら現在はこれだけしか国内で出版されていません。しかしこの本は、私が所有しているもので04年の72刷になっていますから、ロングセラーの部類に入るでしょう。オリジナルのドイツ語版は表紙の絵が違ったり、本のサイズが小さかったりして、ファンの間で人気があるようです。

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