アナトリ・ブーリキネ

Anatoli Bourykine

* 作家紹介

 1950年、モスクワ生まれ。モスクワ建築専門学校を卒業後、同校で9年間ドローイングを教える。その後、ロシア北部の民俗誌「スヴェルニェ・プロストリ」で芸術部門を担当。数多くの奥地旅行を経て、ロシア大陸極北の民族生活に造詣を深め、国際的な展覧会で写真やドローイングが注目を集める。現在はウィーンに在住し、絵画や挿絵、デザイン画などを描き続ける。

 プロフィールを眺めている限りでは特に児童書や絵本の分野で活躍している人ではないらしく、絵本は下記の一冊以外に見た事がありませんが、これが大層魅力的な本で、タッチが美しく、キャラクター・デザインも可愛らしいので、もっともっと絵本を出して欲しい所。ラフな線を重ねたような作風は、一見粗雑なようでいてその実、ものすごく繊細なポエジーに溢れ、思わずはっとさせられるような美しい色彩と相まって、読者を魅了しつくします。

『こねことサンタクロース』(2001年、スイス)

 作:ユッタ・ゴアシリューター

 絵:アナトリ・ブーリキネ

 訳:木本栄

 ひくまの出版・2001年

 雪の日に捨てられた子猫が、サンタクロースに拾われて新しい家を見つけるまでのお話。ドイツの作家が書いたお話はこれ以上ないほどシンプルなものですが、絵に圧倒的な魅力があって、それだけで大満足。どのページもとにかく美しい。複雑でほの暗い色彩はヨーロッパ的ですが、雪夜の場面のブルーなんて何と鮮やかな事でしょう。それに主人公の子猫をはじめ、雪だるまの上にとまったカラスや木の上のふくろう、雪の中に並んだうさぎ達など、動物の造詣がいちいち愛らしい。それでいて画面構成やデッサンには、格調の高い芸術的なセンスも強く感じられます。この人の絵はまだまだ見たいので、今後に期待したいと思います。

 

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