ヴラスタ・バラーンコヴァー

Vlasta Barankova

* 作家紹介

 1943年、チェコスロヴァキアのブルノ生まれ。ブルノ・アカデミーでアートを学ぶ。早くから子供の本の挿絵を多く手がけ、テレビ・アニメの制作に携わる一方、画家としても活躍。チェコ、ポーランド、ドイツ、スイスで積極的に個展を開く。ブルノ市のグラフィック・アート・ビエンナーレを幾度となく受賞。

 人気作家の多いチェコ絵本の世界で、彼女は(少なくとも日本では)それほど名を知られていないアーティストの一人ではないかと思うのですが、画風はいかにも東欧の絵本らしい、トゥルンカやウィルコンの流れを汲んだ可愛らしいものです。陰影に富む色彩感や柔らかなタッチも魅力。日本でも数冊の絵本が出版されており、3匹のこぐまシリーズは4冊が翻訳されました。残念な事に現在は入手困難ですが、気長に探していると稀に古書で見つかる事があります。

* おすすめ

『3びきのこぐまベン・ヤン・ヨーン ぶちじゃないもん』

 (1994年、スイス)

 作:マックス・ボリガー  絵:ヴラスタ・バラーンコヴァー

 訳:ささきたづこ

 講談社・1997年

 ちいさな家に住む3匹のこぐまベン、ヤン、ヨーンは、それぞれトランペット、ヴァイオリン、太鼓を演奏する音楽家。楽しく心躍るこのシリーズは計4冊が翻訳されたようですが、現在は絶版中。絵本もよほどのロングセラーでない限り、あっという間に絶版のリスクにさらされるのが残念でなりません。

 

『3びきのこぐまベン・ヤン・ヨーン ひみつのかくしあじ』

 (1994年、スイス)

 作:マックス・ボリガー  絵:ヴラスタ・バラーンコヴァー

 訳:ささきたづこ

 講談社・1997年

 3匹のこぐまベン、ヤン、ヨーンのシリーズ第2弾。本書は、彼らのお友達のパン屋さんが使っている隠し味のお話で、ストーリー自体は他愛のないものですが、とにかく絵の美しさ、深いグラデーションと柔らかなタッチに魅了されます。調子の悪い彼らの演奏を聴いて寂しく去ってゆくお客さん達の描写なんて、思わずはっとさせられるほど詩情豊か。

『3びきのこぐまベン・ヤン・ヨーン こまった! ちいさなおきゃくさん』

 (1995年、スイス)

 作:マックス・ボリガー  絵:ヴラスタ・バラーンコヴァー

 訳:ささきたづこ

 講談社・1997年

 3匹のこぐまシリーズの続刊。毎晩台所の窓の外に現れる子猫。元々猫を飼いたかったヨーンですが、ベンとヤンに反対されてしまいます。しかし、ベンもヤンも窓の外に現れる子猫を放っておけず、結局世話をしてやるのでした。子猫用にも特製のパンを焼いてあげるパン屋さんの優しさも心にしみる一冊。

『3びきのこぐまベン・ヤン・ヨーン こねこのなまえは…?』

 (1996年、スイス)

 作:マックス・ボリガー  絵:ヴラスタ・バラーンコヴァー

 訳:ささきたづこ

 講談社・1997年

 こちらもこぐま達のシリーズ。前作で新しく家族になった子猫に名前を付けようとするが、男の子か女の子か分からずに右往左往するというお話。今回はやんちゃな子猫の生き生きとした描写がメインですが、こぐま達が干している洗濯物の素晴らしい色彩感なんかはどうでしょう。彼らが草原でワルツを演奏する最後の場面も素敵。

『やさしい ゆきだるま』 (2000年、スイス)

 作:フランチェスカ・シュティッヒ  絵:ヴラスタ・バラーンコヴァー

 訳:那須田淳

 ひくまの出版・2000年

 心の優しい雪だるまが困っている動物達に自分のパーツを分け与えてゆくという、オスカー・ワイルドの『幸福な王子』を思わせるお話ですが、そこまで物悲しい雰囲気ではなく、最後のページにはじんわりと暖かい感動が溢れます。次々と現れる動物達の他、まん丸お目目の子供達が可愛らしく、彼らの衣服や背景の描写、ページを追って刻々と変わりゆく色彩にも目を奪われる美しい絵本。

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