マッティ・ピックヤムサ

Matti Pikkujamsa

* 作家紹介

 1976年、フィンランドのオウル生まれ。ヘルシンキ芸術デザイン大学(現アアルト大学)在学中に、イラストレーターとして仕事をはじめる。その後、フィンランドの大手新聞社ヘルシンギン・サノマット社や出版社から依頼を受け、挿絵を多く手掛ける。カウニステ、ラプアンカンクリ、マリメッコ、無印良品などでテキスタイルや食器をデザイン。

 トーベ・ヤンソンも受賞した名誉ある児童文学賞、ルドルフ・コイヴ賞を13年に受賞。19年、フィンランド・イラストレーター協会による、イラストレーター・オブ・ザ・イヤーを受賞。17年、同郷の心理療法士アンッティ・エルヴァスティ、エリーナ・レッモネンと、メンタル・ヘルスへの理解促進を目的とするプロジェクト、CupOfTherapyをスタート。イラスト入りメッセージブックの出版を行う。

 いかにもデザイナーらしい、ポップな配色とモダンに抽象化された造形センスが生かされた画風で、可愛らしさやユーモアも感じさせるのが特徴。題材のチョイスも、動物や自然など北欧らしいものが多く、作風の印象とは違って伝統や出自を大事にしているようです。我が国でも時折展覧会が開かれたりしていて、ポストカードやカレンダー、ポスターや原画、ハンカチなど、ぽつぽつとグッズは手に入りますが、書籍は日本で企画されたものが中心。母国で発売されている絵本や児童書は入手困難のようです。

* おすすめ

『TUULI-HATTU』 (2009年、フィンランド)

 作:アンナ=マリ・カスキネン 絵:マッティ・ピックヤムサ

 フィンランドの詩人/児童文学作家カスキネンによる童話に挿絵を付けた児童書。タイトルは、直訳すると「被りもの」という意味だそうです。絵本ではないので文章が中心ですが、全69ページ中30カ所に挿絵があるので、外国人にとっては画集のように楽しめる本かもしれません。

『Suomen lasten laulukirja』 (2012年、フィンランド)

 フィンランドの童謡やテレビの主題歌など、様々な世代に親しまれているヒット・ソング等を100曲以上収録した、歌詞付きピアノ楽譜集。タイトルは直訳すると、「フィンランドの子供達の歌の本」だそうです。223ページにも及ぶ大部のスコアですが、各ページを開くと片方が楽譜、片方がカラーの可愛いイラストという体裁で、ファンにはやはり画集として価値のある本と言えるでしょう。一部の曲はCDになっていて、『Suomen lasten lauluja』というタイトルで出ています。左の画像はCDのジャケットですが、楽譜集の表紙にも同じイラストを使用。

『マッティ・ピックヤムサ作品集 フィンランドの日曜日の新聞から』

 (2014年、日本)

 マルカ・2014年

 作品集として発売されていますが、元は「マッティ・ピックヤムサ イラスト原画展2014」の図録です。ピックヤムサ作品の販売やイベントに力を入れている神戸・北野の北欧カフェ/雑貨店マルカが発行していて、リング綴じにリボンを付けたスケッチブック風の装丁も素敵(ピックヤムサがいつもスケッチブックを持ち歩いているので、それをイメージしたそうです)。

 内容は、フィンランドで最もポピュラーな新聞ヘルシンギン・サノマットで、毎週日曜日に掲載される「スンヌンタイ(日曜日)」というコラムの挿絵を集めたもの。毎ページ、カラーのイラストにひとことコピーが付いています。社会情勢がテーマなので、可愛い動物などが多い平素の作風とは少し違いますが、デザイナー出身らしいユニークな切り口と、グラフィカルで美しい画風が楽しめます。

『めとめがあったら』 (2015年、日本)

 作:おくむらけんいち 絵:マッティ・ピックヤムサ

 ブロンズ新社・2015年

 日本企画の幼児向け絵本。小型サイズで、全ページ厚紙に印刷されています。文章も「めとめがあったら」のリフレイン以外ほとんどなく、全てひらがな。白抜きの背景は少々物足りなく思う人もいるでしょうが、幼児向けに敢えて情報を減らしているとも言えます。各ページ、色々な動物が登場しますが、その造形は正にピックヤムサ印。ファンには、画集として楽しめる本でもあります。

『まねっこおやこ』 (2016年、日本)

 作:おくむらけんいち 絵:マッティ・ピックヤムサ

 ブロンズ新社・2015年

 日本企画の幼児向け絵本第2弾。同じく小型サイズに、全ページ厚紙です。色々な動物が子供と親で同じ仕草をするという内容。ピックヤムサ特有のハイセンスな配色とデザインが楽しい、可愛い絵本。

 

『CupOfTherapy いっしょに越えよう』 (2020年、フィンランド)

 著:アンッティ・エルヴァスティ、マッティ・ピックヤムサ

 訳:西本かおる

 小学館・2020年

 17年に同郷の心理療法士エルヴァスティ、エリーナ・レッモネンとスタートさせた、、メンタル・ヘルスへの理解促進を目的とするプロジェクト、CupOfTherapyのイラスト入りメッセージブック2冊目。クレジットは並列に記載されていますが、エルヴァスティの文章とピックヤムサのイラストそれぞれ1ページずつの組み合わせで、112のヒントを提案。小さなサイズだけど、そこそこ分厚い本です。

 残念なのはイラストが全てモノクロなのと、エルヴァスティの文章が常套的で、斬新な視点には欠ける点。講演会やワークショップも行っている人ですが、いわゆるアーティストや作家ではないので仕方がないのでしょう。それも私が、ヨシタケシンスケの素晴らしいメッセージブック、『あつかったら ぬげばいい』を読んだばかりだったせいもあります。一般向けの理解促進プロジェクトなので、分かりやすくて平易なメッセージで良いのかもしれません。

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