ドゥシャン・カーライ

Dusan Kallay

* 作家紹介

 1948年、旧チェコスロヴァキアのブラティスラヴァ生まれ。66〜72年、ブラティスラヴァ美術大学で絵画、グラフィックデザインを学び、73、75年の二度BIB金のリンゴ賞を受賞。83年には、『不思議の国のアリス』の挿絵でグランプリ。88年には国際アンデルセン賞を受賞。グラフィック・デザイン、挿画、蔵書票などを中心に活躍する、スロヴァキアを代表するイラストレーター。

 古今の名画を思わせる色彩や造形を駆使し、そこにアニメチックなタッチを加えたような不思議な作風。写実的なのかデフォルメされているのかよく分からない画風は、そのつかみ所のなさ自体が魅力にもなっています。ごちゃごちゃと細かくディティールを書き込んだ精緻な絵が得意で、細長い物や鋭利なエッジを多く盛り込むのも特徴ですが、陰影に富んだ美しい色彩感は東欧のアーティストならでは。ピンクや暖色系が勝ったカラー・パレットは独特です。

* 作品

『アンデルセン童話全集』 (挿絵、全3巻、西村書店)

『不思議の国のアリス』 (挿絵、新潮社)

『鏡の国のアリス』 (挿絵、新潮社)

 他

* おすすめ

『どきどき おんがくかい』 (1997年、日本)

 作・絵:ドゥシャン・カーライ  訳:関沢明子

 福音館書店・1997年

 こどものとも年少版・通巻246号(月刊予約絵本の1巻)。正方形の薄い本で定価350円とありますが、単売もされていたのかどうかは不明です。時折ネット・オークションや古本サイトに出品されているのを見かけますが、大抵は1000円以上のプレミアが付いています。動物や虫たちがひたすら楽器を奏でる本で、ストーリーもほぼなく、ひらがなばかりの文章はほとんどが擬音。背景が白抜きなのは残念ですが、色彩や造形にカーライ独特のセンスが溢れています。

『カエルのおんがくたい』 (2001年、日本)

 作:アーサー・ビナード  絵:ドゥシャン・カーライ

 福音館書店・2001年

 こどものとも年少版・通巻288号、こちらも月刊予約絵本の1巻。カエルに食べられかけたシロアリが、命乞いのために楽器を作り、カエル達が音楽会をする話。シロアリに利があるラストは少々シニカルですが、そう捉えるのは大人だけなのかも。背景は白抜きですが、やたらと細かくて鋭角を多用した画風は完全にカーライ・タッチ。やはり時折ネットに出品されているのを見かけますが、大抵1000円以上のプレミアが付いています。

『12月くんの友だちめぐり』 (1986年、ドイツ)

 作:ミーシャ・ダミヤン  絵:ドゥシャン・カーライ

 訳:矢川澄子

 西村書店・2010年

 12月という月を擬人化して、その旅を描いたユニークなお話。文章は多めで、漢字にもルビがないので大人向けかもしれません。カーライの個性が余す所なく発揮されたインパクトの強い画風ですが、人物の造形や色彩センスなどには、チェコで修行した出久根育との共通点も多く、彼女はカーライの影響も受けているかもしれません。

『魔法のなべと魔法のたま』 (1990年、ドイツ)

 作:バルバラ・バルトス=ヘップナー  絵:ドゥシャン・カーライ

 訳:遠山明子

 ほるぷ出版・1990年

 おかみさんに小人がくれた、何でも望みが叶う魔法の鍋のお話。民話風の展開で、予想の付く事ですが、「悪用はいけないよ」という教訓話になっています。カーライ節全開のデザインと色彩が溢れ返った絵」は圧倒的。文章の分量も結構多いですが、お話よりも画の力がずっと強い絵本です。

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