マックス・ベルジュイス

Max Velthuijs

* 作家紹介

 1923年、オランダのハーグで生まれる。アルンヘイムの美術学校を卒業後、グラフィック・デザイナーとして活躍する。64年にはじめて児童書を手掛け、本格的に創作を開始。71年にブラティスラヴァ世界絵本原画展で金のりんご賞、04年に国際アンデルセン賞画家部門を受賞。ハーグの美術学校で教師をしながら、ポスター、本の装幀、イラスト、アニメーション、リトグラフなど、幅広い分野で活躍。05年1月逝去。

 カラフルで明るい色彩センスと、可愛らしい造形や背景、童心溢れる発想と構図など、絵本の楽しさを存分に味わせてくれる、素敵な作風です。ただし、代表作の「かえるくん」物など、シリーズ化されている作品はもう少し漫画チックなタッチ。ヤーノシュやシュルヴィッツ、バーナディットなどの場合と同様、私がピンポイントで一部の作風をチョイスしているので、そこはご注意下さい。

* 作品

『ああ うるさい』 『かえるくん どうしたの』

『かえるくんと とりのうた』 『げんきをだしてね かえるくん』

『かえるくんとたびのねずみ』 『かえるくんのこわい夜』

『すごいぞ かえるくん』 『かえるくんは かえるくん』

『かえるくん たびにでる』 『かえるくんのとくべつな日』

『かえるくんのあたらしいともだち』 『かえるくんのたからさがし』

『かえるくんは かなしい』 『こびとくんのいえさがし』

『こびとくんのしあわせないちにち』 『こびとくんのきゅうじょたい』

『ワニくんのだいけっさく』 (すべてセーラー出版)

 他

* おすすめ

『おおかみとちびやぎ』 (1967年、スイス)

 作:ミッシャ・ダムヤン  絵:マックス・ベルジュイス

 訳:芦野あき

 佑学社・1979年

 群れからはぐれた子山羊が、森の中で狼に出会うお話。といっても、主人公は山羊飼いのヤンコですが、この造形がめちゃくちゃ可愛いです。そして、森の中にいるフクロウやハリネズミもキュート。こうなってくると、笛を吹くオオカミまでどこか可愛く見えます。素晴らしいセンスの配色や、夕焼けの森の背景など情感の豊かさも出色。入手しにくいですが、実に美しく、可愛らしい絵本です。作者のミッシャ・ダムヤンはマケドニア出身、スイス在住の児童文学作家。

『男の子とおおきなさかな』 (1969年、スイス)

 作・絵:マックス・ベルジュイス  訳:野坂悦子

 ほるぷ出版・2007年

 絵も文章も全て自身で手掛けた、最初の絵本。男の子が大きな魚を釣って、友達として風呂で飼いますが、結局みずうみに返してあげるまでのお話。シンプルで他愛のないストーリーですが、本当に相手を想うという事は、束縛するのではなく、共に自由に生きる事、というメッセージをストレートに伝える寓話になっています。

 明朗な色合いで描かれた、可愛い画風がとにかく素晴らしい。私がベルジュイスを知ったのは、本書のイラストが使われた絵葉書を友人にもらったのがきっかけですが、どのページもポストカードにしたくなるような絵ばかりです。ポップな配色も、さすがはグラフィックデザイナー出身。

『きこりと はと』 (1970年、スイス)

 作・絵:マックス・ベルジュイス  訳:佐々木元

 フレーベル館・1981年

 命乞いをしたハトに願いを叶えてもらったきこりが、どんどん欲を出して王様になり・・・。よくある教訓物語ですが、きこりもハトも城も軍隊も、みんな小さく丸っこく描かれていて、ひたすら可愛いページの連続です。やはり背景がほぼ白抜きですが、それが逆に明朗な色彩感を引き立てているのは、ベルジュイスならではの個性です。

『えかきさんとことり』 (1971年、スイス)

 作・絵:マックス・ベルジュイス  訳:長谷川四郎

 ほるぷ出版・1979年

 貧乏な絵描きが一番気に入っていた小鳥の絵を金持ちが買ってゆくが、絵の中から小鳥が抜けだして、というお話。ベルジュイスの絵は背景を白にしているものが多く、それが彼の絵を明るく見せている要因の一つでもありますが、小鳥が絵描きの家に戻ってきた場面だけ背景を真っ赤に塗っていて、これが大きな効果を上げています。また小鳥そのものや動物達、町並みや木々などもとても可愛いデザインで、カラフルながらどきぎつくならない絶妙の色彩センスともども、実に魅力的。

『こころのやさしいかいじゅうくん』 (1972年、スイス)

 作・絵:マックス・ベルジュイス  訳:楠田枝里子

 ほるぷ出版・1978年

 人間に捕まえられたかいじゅうくんは、軍隊に利用されたり見せ物にされたりするが、心が優しいために人間の意図には沿わない。しかし吐く火で電気を起こして町の役に立ち、名誉市民として自由が与えられる。今の感覚で読むとけっこう人間本意のお話で、これでいいのかなと思う所もありますが、絵が可愛いので単に画集として魅了されてしまいます。ベルジュイス特有の太い線で描かれた、優しくもポップな、味わい深いイラストは秀逸。

『ぬすまれたかいじゅうくん』 (1976年、スイス)

 作・絵:マックス・ベルジュイス  訳:楠田枝里子

 ほるぷ出版・1978年

 『こころのやさしいかいじゅうくん』の続編。盗賊たちにさらわれたかいじゅうくんが、逆に盗賊たちをやっつけてしまい、町から盗まれた品々もみんな取り返すというお話。やっぱり絵が美しいので、話が大したことなくてもじっと見入ってしまいます。色彩と造形のセンスが抜群。

『たことしょうねん』 (1979年、ドイツ)

 作・絵:マックス・ベルジュイス  訳:楠田枝里子

 ほるぷ出版・1980年

 現実に不満を持つ少年が、大きな凧で空を飛び、新しい世界を探し求めるが・・・。メーテルリンクの『青い鳥』のような、幸福は身近にあったというテーマのお話。やはり童心に満ちた可愛らしい画風が展開します。このコーナーで取り上げている画家は、担当者の好みを反映して陰影に富んだほの暗い作風が多いですが、ベルジュイスは柔和で軽快、明るくて爽やかなタッチが特徴的です。自身も画家であるタレントの楠田枝里子が翻訳を担当。

『かえるでよかった マックス・ベルジュイスの生涯と仕事』

 (2003年、オランダ)

 著:ヨーケ・リンデルス  訳:野坂悦子

 セーラー出版・2007年

 オランダの伝記作家、書評家、研究者のヨーケ・リンデルスによって書かれた、ベルジュイス初の評伝本。サイズはさほど大きくはないですが、厚みのある紙が使われていてページ数も多く、持つとずっしり重い本です。幼少の頃の姿や家族の写真から、スケッチやイラスト、作品の一部に至るまで豊富な資料を満載し、詳細に渡る伝記が作成されていて圧巻。我が国で、ここまで充実した伝記本が出版されている絵本作家は、さほどいないのではないかとも思います。

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