『あめのひ』 (1969年、アメリカ) |
作・絵:ユリー・シュルヴィッツ |
訳:矢川澄子 |
福音館書店・1972年 |
街に降ってきた雨が、雨どいや溝を流れてゆき、野や山を走って川となり、やがては海へと集まってうく様を、雨のやみ間や町なかの情景をまじえながら詩情豊かに描く、美しい絵本。 |
いかにも東欧出身の作家らしく色を制限していて、くすんだ灰色と青、緑の調子をベースに、子供の頃、雨の日に感じる、甘やかでノスタルジックな静寂の世界へと、私達をいざないます。それらの絵に添えられる、詩的で簡潔なテクストも魅力。例えば、“みずたまりは そらの かけら ぴょんと とびこそう”、“はてしない わだつみ うねり あわだち てんまで とどけ”など。子供達の表情や、街角の描写にも独特なムードがあって、そのヨーロッパ的な色調に、大人になった読者も魅了される事でしょう。 |
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『よあけ』 (1974年、アメリカ) |
作・絵:ユリー・シュルヴィッツ |
訳:瀬田貞二 |
福音館書店・1977年 |
“音もなく、静まり返る湖のほとりに、おじいさんと孫が毛布にくるまって寝ている。やがてそよ風が出て、生き物が活動をはじめ、二人はボートに乗って湖に漕ぎ出す。その時‥‥山と湖が緑に染まった!” |
物音ひとつせず動くものもない世界が、少しずつ活動を開始し、よあけを迎えて輝かしい色に染め上げられるまで。『あめのひ』とはまた違った淡い色調と柔らかい線で、やはり詩的な雰囲気とドラマティックな構成で、スタティックに描いた絵本です。東洋の文芸・芸術にも造詣が深いというシュルヴィッツは、唐の詩人、柳宗元の詩《漁翁》をモティーフとしていますが、それをきかずとも、何かしら深遠で神秘的な世界を感じさせる所はさすが。例によってテクストが簡潔で意味深く、訳文も大変に美しいものです。 |
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『たからもの』 (1978年、アメリカ) |
作・絵:ユリー・シュルヴィッツ |
訳:安藤紀子 |
偕成社・2006年 |
ある貧しい男が、夢のお告げに従って町まで旅をする・・・。すぐ近くにある宝物のためにはるばる旅をしなければならない事もあるという、パウロ・コエーリョの人気小説『アルケミスト』をシンプルにしたような寓話。それをシュルヴィッツらしい、極限まで切り詰めた言葉で描いています。画風としては『あめのひ』に近いタッチですが、色合いに暖かみがある点が違いと言えるでしょうか。80年、コルコデット賞銀賞受賞作。 |
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