レナータ・リウスカ

Renata Liwska

* 作家紹介

 ポーランド、ワルシャワで生まれ育つ。カナダに渡って、アルバータ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインで学び、同地カルガリーにてイラストレーターの夫と暮らす。子供の頃の経験や思い出をイラストに盛り込むのが好きとのこと。

 立体感のある写実的なタッチながら、擬人化した動物達をメイン・キャラクターに据えて童心もたっぷり。細かい線で点描のように用いる手法は精緻極まりないタッチを生んでいますが、絵全体としては柔らかさと造形の丸みが印象に残るのが不思議です。彩度を落とした色合いも美しく、ほの暗いムードの中で控えめに色を散りばめるカラー・パレットの使い方は、東欧出身のアーティストらしい感じがします。

* おすすめ

『しんとしずかな、ほん』 (2010年、アメリカ)

 作:デボラ・アンダーウッド  絵:レナータ・リウスカ

 訳:江國香織

 光村教育図書・2011年

 気まずい沈黙や、緊張感のある空白、しみじみと切ない静寂など、日常の中にある様々な「静けさ」を、各ページごとにイラストと、ほぼワンセンテンスのコピーで綴ってゆく本。気が利いた文章も美しく、不思議な魅力に溢れた詩情豊かな作品です。リアルで具体的な状況だけでなく、「願い事をするひそやかな静かさ」とか「一番の仲良しには言葉は要らない静かさ」など、観念的な発想も織り交ぜている所がいいです。

 リウスカのイラストはそれらを全て動物達で表現していて、可愛らしい画風に持ってゆくことで、気取った調子になるのを回避しています。それでいて、各々のセンテンスが持つ深みは十全に表現されているのがさすが。線やデザインはすっきりしていながら、どこか影を感じさせる色彩センスも魅力。江國香織の訳文は全てひらがな表記で、「静かさ」という言葉ばかりリフレインせず、「しーん」とか「しーっ」など擬音の表現も混ぜていて一本調子に陥りません。

『にぎやかな ほん』 (2011年、アメリカ)

 作:デボラ・アンダーウッド  絵:レナータ・リウスカ

 訳:江國香織

 光村教育図書・2012年

 『しんとしずかな、ほん』の続刊。今度は「にぎやかな」音をキャプチャー付きで羅列してゆきますが、単に「うるさい」「やかましい」音だけではなく、もっと詩的に感じたにぎやかさや、ポジティブなにぎやかさも語られます。例えば、「学校に着くまで続く歌声」「素晴らしかった時の拍手や歓声」などがそうだし、「耳をふさぎたいくらいおそろしい静かさ」という逆説的な表現もあったりします。

 彩度こそ抑えているものの、カラフルな配色や暖色も使って「静けさ」との対比を表しているリウスカのイラストは、やはり魅力的。全て動物達で表現しているのも同じ趣向ですが、東欧の人らしい陰影に富んだ美しい色彩感と、繊細な筆致が素晴らしいです。

『しずかな、クリスマスのほん』 (2012年、アメリカ)

 作:デボラ・アンダーウッド  絵:レナータ・リウスカ

 訳:江國香織

 光村教育図書・2012年

 既刊『しんとしずかな、ほん』のクリスマス版。同様に、クリスマスの時期に関する様々な「静けさ」を、詩的で可愛らしい文章で羅列してゆくスタイルです。こちらも、動物達に置き換えたイラストが童心に溢れていて素敵。しっとりと落ち着いた彩度の低い画風が、クリスマスに溢れる鮮やかな色彩を厳かな静寂の中に溶け込ませていて、甘やかなノスタルジーを誘います。ちなみにシリーズの作者デボラ・アンダーウッドは、ワシントン州出身の子供向けノンフィンクション・ライター。

『ゆき、まだかなあ』 (2016年、アメリカ)

 作:マーシャ・ダイアン・アーノルド  絵:レナータ・リウスカ

 訳:江國香織

 光村教育図書・2016年 

 動物の子供たちが雪が降るのを待つ、ただそれだけのお話。シンプルな設定ですが、子供達が一生懸命考えて色々やる、という所が絵本の絵本たるゆえんです。前3作のような詩的な内容ではなく、お話の絵本という感じ。やはり柔らかなタッチでほの暗い色合いが美しい、リウスカのイラストが魅力的。あくまでも人間は登場させないのが、彼女の流儀のようです。

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