ルーシー・ミュレロヴァ

Lucie Mullerova

* 作家紹介

 チェコ、チェスキー・クルムロフで生まれ、在住。02年、オーストリアのリンツ芸術アカデミー卒業後、プラハの出版社で働く。イタリアでイラストレーションのセミナーを受け、イタリアやスペインで絵本を出版。文化財保護を目的とした子供のための教育プログラムにも取り組んでいる。

 写実的で立体感のある画風の一方、わずかに擬人化やデフォルメを忍ばせる遊び心あり。それと、濃厚かつ繊細な色彩の豊かさが卓抜で、美しい絵本を量産してきたチェコの伝統が、彼女の中にも脈々と受け継がれているのを感じます。チェコの人なので、本来であれば「ミュレロヴァー」と発音するはずですが、ここでは出版社の表記に合わせます。

* おすすめ

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『ひつじのメェーリンダ』 (2006年、イタリア)

 作:マヌエラ・サルヴィ  絵:ルーシー・ミュレロヴァ

 訳:鈴木敦子

 岩崎書店・2008年

 空を飛びたいと夢見る、変わり者のひつじのお話。リアルな作風なので、表紙の通り、主人公のメェーリンダも目玉が飛び出ていてあまり可愛くはないですが、リュックを背負っているのが唯一の擬人化。鳥たちも写実的な一方、みんな同じ方向を向いている構図にデザイン的なセンスがあるのと、一羽だけ帽子を被っているという、ほんの少しだけの擬人化がユニークです。

 最初と最後に何の説明もなく登場する操り人形は、語り手のような存在感もありますが、それこそチェコの人形劇の伝統を盛り込む意図があるのかもしれません。作者はイタリアのアニメーターで、本書もフィレンツェの出版社から出た本です。08年、第14回いたばし国際絵本翻訳大賞(イタリア語部門)受賞。

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