カーティエ・ヴェルメール

Kaatje Vermeire

* 作家紹介

 1981年、ベルギー、フランダース地方のゲント生まれ。同市の専門学校でグラフィックデザインを学ぶ。在学中からエッチングや木版画、コラージュなど様々な技法を駆使した独自のスタイルのイラストレーションを制作。卒業後、フランダース地方のベスト・イラストレーター賞を受賞。以降絵本を手掛け、国内外で作品が高い評価を得る。10年、『マールとおばあちゃん』でロンセ市絵本大賞グランプリ。11各国で翻訳出版された。

 邦訳作品が1作しかないので、常にこの作風なのかどうかは分かりませんが、銅版画のような、写真の模写のような、徹底して精緻な線で描き込まれた美しいイラストは、絵画のような芸術性と完成度で観る物を圧倒します。考え抜かれた配色はページごとに変化させながらも、古い雑誌や褪せた写真のような、シックに落ち着いた色調にまとめていて、まったく見事という他ありません。特に、木々やお花畑、草原など、植物の緻密な描写は驚異的。

* 作品

『De vraag van olifant』

『Japie de stapelaar』

 他

* おすすめ

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『マールとおばあちゃん』 (2010年、ベルギー)

 作:ティヌ・モルティール  絵:カーティエ・ヴェルメール

 訳:江國香織

 ブロンズ新社・2013年

 倒れて言葉を失ったおばあちゃんと、似た者同士で心が結ばれていた孫のマール。言葉こそ交わされないものの、マールは目や唇から祖母の思いを読み取ってゆく。目を奪われる美しい色彩センスと、繊細を極めたタッチ、変化に富んだ構図と詩的な描写力など、画集としても圧倒的なオーラを放つ絵本。

 どのページも読者の目を釘付けにするに十分ですが、絵の一部だけに彩色したページや、コラージュ技法を使ったページもあり、作風も一筋縄ではいきません。マールとおばあちゃんを取り囲む看護師達をほぼ白一色で表現しているページは圧巻。各々の顔も白い煙で覆い、表情を隠す事で匿名性を高め、「理解のない大人達の壁」として描いているのは、凄いアイデアだと思います。

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