シャルロット・デマトーン

(シャーロッテ・デーマートンス)

Charlotte Dematons

* 作家紹介

 1957年、オランダ人の母とベルギー人の父の間に、ハーレムで生まれる。フランスの中等学校に就学後、アムステルダムのヘリット・リートフェルト・アカデミーで美術を学んだ。卒業制作展でオランダの児童書出版社レムニスカート社に才能を見いだされ、『Dido』で絵本作家デビュー。

 夫と娘と共にハーレムで暮らし、数多くの児童小説や教科書、雑誌のために挿絵やイラストを描いている。06年、210話全てに絵を付けた『グリム童話全集』で銀の絵筆賞、08年に『Sinterklaas』で金の絵筆賞を受賞。他に『Nederland』『RAF』など、作品多数。

 鮮やかな色彩とほの暗い陰影、やや写実的なタッチ、くりりと丸い目の表情など、多くの部分でミヒャエル・ゾーヴァとの共通点を感じさせる画風。おもちゃの棚や空から見た街など、細かいものをたくさん描き込むのは得意なようです。

 美しい絵を描く人ですが、日本での紹介作が少ないのは残念。『グリム童話全集 子供と家庭のむかし話』は挿絵も多いものの、文章が中心の上に大部の重い書籍で、イラスト目的に買うのは現実的ではないです。『きいろいふうせん』も、空から眺めた地上の絵ばかりで人間も動物もほぼ登場しない、文字のない絵本。『ぼくといっしょに』も鳥瞰絵本で、彼女の本領が発揮された翻訳作品は、目下一冊のみという現況です。

* 作品

『グリム童話全集 子供と家庭のむかし話』 (西村書店)

 他

* おすすめ

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『ぼくといっしょに』 (2000年)  

 作・絵:シャルロット・デマトーン  訳:野坂悦子

 ブロンズ新社・2020年

 発刊から20年経って、オランダ文学基金の助成金を受けて翻訳された、海外ではロングセラーという絵本。赤いセーターを着た「僕」が、リンゴを買いに行くために道に出て、深い森や海を渡って大冒険をするという、ユニークな内容です。

 後の『きいろいふうせん』ほどの高度はありませんが、ドローン時代を先取りしたような微妙な高さの鳥瞰ショットで、全てが真上から描写されています。色彩や造形にヨーロッパらしい美しさはあり、ディティールを眺める楽しさもありますが、安野光雅の絵本と同様、少々特殊なカテゴリーに分類される感じでしょうか。

『どうしたの』 (2002年)

 作・絵:シャルロット・デマトーン  訳:小池昌代

 あかね書房・2003年

 おもちゃ屋の片隅で、一匹だけ不安で眠れないこぐま。みんなが心配して声をかけても何も答えないこぐまが、友達を見つけるまでを描いたお話です。なかなか心を開かないこぐまが、きゃらめるぐまの「少しだけ」という言葉に反応して仲良くなってゆく過程は、どことなく営業関係のビジネス書を思わせる展開。他愛のないお話ですが、童心に溢れた可愛い絵本です。

 鮮やかなのにセンスが良い配色、柔らかくも明快なタッチなど、相反する要素が美しく混在するイラストは見事。著者名がシャーロッテ・デーマートンスと表記されているので、検索の際はご注意を。

『きいろいふうせん 地球一周』 (2003年、オランダ)

 絵:シャルロット・デマトーン

 西村書店・2013年

 タイトルの通り、黄色い風船が世界中を飛ぶ様子を、空撮アングルの大きなイラストで描いた、文字のない絵本。本のサイズも大きめになっています。ディティールは非常に細かく描き込まれていて、長時間眺めるのには良い本だし、各ページのどこに風船があるか探す楽しみもありますが、画家の個性はあまり出にくい内容です。

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