ジュリー・モンクス

Julie Monks

* 作家紹介

 大学でイラストとデザインの勉強をした後、絵本作家として活動。04年、『ふゆのまほうつかい』でイギリスの絵本部門の最高峰、ベスト・オブ・ブリティッシュ・イラストレーション賞を受賞。

 柔らかい線と、丸っこくて可愛いらしいキャラクター造形は絵本らしいですが、彼女の絵の特徴は、引きのロングショットを多く用い、広々とした空間に物や人を小さく描く所。空間全体が淡い色に支配さえているため、部分的に原色を使っても、全体がパステル調のソフトな印象になります。室内の描写も、無駄なものを配してシンプルに抽象化され、やはりスカスカした空間を作っています。それでいて、行間に滲み出る叙情が素晴らしく、詩的な感性に溢れている点が魅力。

* おすすめ

『ふゆのまほうつかい』 (2004年、イギリス)

 作・絵:ジュリー・モンクス  訳:代田亜香子

 小峰書店・2005年

 ある雪の日の、男の子と女の子の経験をスケッチ風に描いた、詩情溢れる美しい絵本。広い空間に人物や家、木を小さく配置し、しんとした静寂を感じさせる作風がよく出ています。アクセント的に原色を使いながらも、全体の色合いが淡く感じられるのも、この手法のため。画面の上に二人の足元だけが描かれているページなど、斬新な構図のセンスも光ります。柔らかく、可愛らしいタッチも素敵。

『100のたいこのように』 (2006年、アメリカ)

 作:アネット・グリスマン  絵:ジュリー・モンクス

 訳:浜崎絵梨

 小峰書店・2010年 

 予兆と共に農場に嵐がやってきて、去ってゆくまでを、ソフトで可愛いイラストと詩的な散文で描いた、ユニークな作品。モンクスは、幼少期にイギリスで見た嵐の事を鮮明に覚えていて、「よく姉妹で嵐を題材に物語を作った。雷が鳴るのは、天の巨人が怒っているからだと想像していた」と語っています。やや彩度を落としながら、カラフルに配色された色彩センスは抜群の美しさ。予兆を感じ取る動物達の緊張感や、嵐に怯え、過ぎ去った後に笑顔を見せる子供達の姿も、実に愛らしく表現されています。

 文章がまた、素晴らしいです。アメリカ中西部在住のグリスマンは、「嵐は最もイメージしにくい現象の一つ。子供に対して、嵐を限られた言葉で的確に表現できるのは、詩だけだ」と語っています。特に私が惹かれたのは結びの部分。「あらしのふしぎな出来事が/カラスやイヌやネズミの/心のおくに残っている/あそぶ子どもたちの心にも/みんなは もう知っている/あらしは また やってくる」。

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