『レアの星 ー友だちの死ー』 (2002年、ベルギー) |
作:パトリック・ジルソン 絵:クロード・K・デュボア |
訳:野坂悦子 |
くもん出版・2003年 |
がんで入院する事になったレア。毎日一緒に通学していたロビンはレアの病院に通い、楽しく過ごすが・・・。重いテーマを優しく、暖かく描く、正にデュボアならではの素晴らしい絵本。大人が読み聞かせるには、言葉が詰まって最後まで読めない本かもしれません。丸みを帯びた、太いラインで描かれたイラストは可愛らしいですが、それが悲壮感を和らげる一方、キュートさゆえに胸を締め付けられる面もあります。 |
作者のジルソンは旧ベルギー領コンゴ出身の教師で、「子供と死」というテーマの文章教室で16歳の生徒たち3人と書いたものが、本書の原案になっています。主人公ロビンは、リエージュの病院でデュボアが会った、ロビンソンという少年がモデルになっているそう。 |
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『なにがほしいの、おうじさま?』 (2004年、フランス) |
作・絵:クロード・K・デュボア 訳:河野万里子 |
ほるぷ出版・2008年 |
何不自由ない恵まれた環境に生まれたのに、「いや」ばかり言う王子様。彼が本当に欲しかったものは・・・。ユーモアと優しさで読者を温かく包むお話を、丸っこく太い線でキュートに描いた絵本。特につぶらな瞳の王子さまが、めちゃくちゃ可愛いです。背景や描写も至ってシンプルですが、こってりとした絵の具で描かれたおもちゃや動物など、ディティールがすごく味わい深いのも魅力。 |
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『わたしの おばあちゃん』 (2006年、ベルギー) |
作:ヴェロニク・ヴァン・デン・アベール |
絵:クロード・K・デュボア 訳:野坂悦子 |
くもん出版・2007年 |
アルツハイマー病に冒されたおばあちゃんの姿を、孫のマリーの目を通して暖かく見つめた絵本。社会的な問題を扱いながらも、登場人物に向けられた暖かい眼差しが印象的です。丸くて太い線で可愛らしくポップに描かれたイラストは、カラフルな彩色を施しながらも、全体をセピア調の褐色で包み込んでいます。シンプルな印象を与える一方で、室内インテリアの描写や、ベルギーらしい公園の木立など、随所に情感を喚起する美しさがあって、味わい豊か。 |
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『ふたりの箱』 (2007年、フランス) |
作・絵:クロード・K・デュボア 訳:小川糸 |
ポプラ社・2010年 |
両親が離婚する事になった少女。彼女は母を悲しませた父を許せず、その態度が父を傷つけてしまう。お互いの事を心の箱に入れてしまった少女と父親。しかし離れていても、相手を嫌いになる事は出来なかった。デリケートな人の心を描いた、忘れ難く心に残る、素晴らしい絵本。スケッチ風の繊細なタッチで可愛らしく造形された画風ですが、悲しみや温もりが切々と伝わってきて、目頭が熱くなります。柔らかな言葉が心に沁み渡る、作家・小川糸の日本語訳も素敵。 |
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『わたし、ぜんぜんかわいくない』 (2008年、フランス) |
作・絵:クロード・K・デュボア 訳:小川糸 |
ポプラ社・2011年 |
可愛くてちやほやされている同級生に嫉妬する少女が、劣等感と向き合って克服するまでを描いたお話。「パパは私がもっとかわいかったらよかった?」と訊く主人公に、「じゃあステファニーは、パパがもっとハンサムだったらよかったのかい?」と返す父親が素晴らしいです。キャラクターが漫画っぽくてキュートですが、1ページ4つとか、絵をコマ割りのように分割しているページが多く、絵本と漫画の中間みたいな体裁なのがユニーク。小川糸の訳文も美しいです。 |
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『さようなら、わたしの恋』 (2010年、フランス) |
作・絵:クロード・K・デュボア 訳:小川糸 |
ポプラ社・2011年 |
失恋した少女が、少しずつ前を向いて、一歩を踏み出すまでを描いた絵本。こちらも作家の小川糸が、美しい訳文を付けています。デッサンのようなラフな線が、少女の頼りなく所在なげな心境を伝えますが、彼女の中に芽生えたほのかな希望を、背中に生えた小さな羽で表現しているのは素敵なアイデア。登場人物の心情にぴったりと寄り添う、著者らしい優しさが溢れる作品です。 |
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