クロード・K・デュボア

(クロード・K. デュボワ)

Claude K. Dubois

* 作家紹介

 1960年、ベルギーのベルビエ生まれ。版画を学んだ後、東部の工業都市リエージュのサン・リュック高等芸術院に進学。現在は同校でデッサンを教えながら、イラストレーターとして活躍。柔らかいタッチの水彩画を得意とする。娘のサラ・Vも児童書ライター、イラストレーターで、『路上のおじさん』では文章を担当。ムーズ川のほとり、リエージュ在住。

 クロードというファーストネームですが、女性です。彼女の作品は、まず題材が独特。思春期の自意識や悩みを描いたものや、友達の死と向き合ったもの、ホームレスやアルツハイマー病などの社会問題、戦争孤児など、シリアスなテーマを扱った絵本が目立ちます。ただ、彼女の描き方は主人公に優しく寄り沿っていて、あくまでも暖かく、心に沁み入る話になっている所が救い。私も、彼女の絵本を読んで思わずむせび泣いてしまう事が、よくあります。

 ラフなのに繊細な線で描かれたスケッチ風のタッチと、モノクロに近い淡い色彩感が、同じくベルギーのカブリエル・バンサンを想起させますが、キャラクターは小さくて丸っこく、可愛らしい事が多いです。初期の頃は逆に、こってりとした太い線で描いていますが、キャラクターの可愛さと配色のセンスは共通。ハムスターのロラのシリーズはもっと漫画チックなタッチで、線もはっきりしていますので要注意。人名もデュボア、デュボワと複数の表記があります。

* 作品

『路上のおじさん』 (六耀社)

『かあさんは どこ?』 (ブロンズ新社)

『つりはもういいんだけどな、パパ!』 (平凡社)

『だいすきっていいたくて』 『だきしめてほしくって』

『わたしはだいじなたからもの』 『いそがしいっていわないで』

『ねえ、わたしのことすき?』 『せかいいちのおともだち』

『いいこだもん』 『しあわせのおくりもの』

『キスちょうだい!』 『さいこうのおたんじょうび』

 (以上ハムスター、ロラのシリーズ、ほるぷ出版)

* おすすめ

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『レアの星 ー友だちの死ー』 (2002年、ベルギー)

 作:パトリック・ジルソン  絵:クロード・K・デュボア

 訳:野坂悦子

 くもん出版・2003年

 がんで入院する事になったレア。毎日一緒に通学していたロビンはレアの病院に通い、楽しく過ごすが・・・。重いテーマを優しく、暖かく描く、正にデュボアならではの素晴らしい絵本。大人が読み聞かせるには、言葉が詰まって最後まで読めない本かもしれません。丸みを帯びた、太いラインで描かれたイラストは可愛らしいですが、それが悲壮感を和らげる一方、キュートさゆえに胸を締め付けられる面もあります。

 作者のジルソンは旧ベルギー領コンゴ出身の教師で、「子供と死」というテーマの文章教室で16歳の生徒たち3人と書いたものが、本書の原案になっています。主人公ロビンは、リエージュの病院でデュボアが会った、ロビンソンという少年がモデルになっているそう。

『なにがほしいの、おうじさま?』 (2004年、フランス)

 作・絵:クロード・K・デュボア  訳:河野万里子

 ほるぷ出版・2008年

 何不自由ない恵まれた環境に生まれたのに、「いや」ばかり言う王子様。彼が本当に欲しかったものは・・・。ユーモアと優しさで読者を温かく包むお話を、丸っこく太い線でキュートに描いた絵本。特につぶらな瞳の王子さまが、めちゃくちゃ可愛いです。背景や描写も至ってシンプルですが、こってりとした絵の具で描かれたおもちゃや動物など、ディティールがすごく味わい深いのも魅力。

『わたしの おばあちゃん』 (2006年、ベルギー)

 作:ヴェロニク・ヴァン・デン・アベール

 絵:クロード・K・デュボア  訳:野坂悦子

 くもん出版・2007年

 アルツハイマー病に冒されたおばあちゃんの姿を、孫のマリーの目を通して暖かく見つめた絵本。社会的な問題を扱いながらも、登場人物に向けられた暖かい眼差しが印象的です。丸くて太い線で可愛らしくポップに描かれたイラストは、カラフルな彩色を施しながらも、全体をセピア調の褐色で包み込んでいます。シンプルな印象を与える一方で、室内インテリアの描写や、ベルギーらしい公園の木立など、随所に情感を喚起する美しさがあって、味わい豊か。

『ふたりの箱』 (2007年、フランス)

 作・絵:クロード・K・デュボア  訳:小川糸

 ポプラ社・2010年 

 両親が離婚する事になった少女。彼女は母を悲しませた父を許せず、その態度が父を傷つけてしまう。お互いの事を心の箱に入れてしまった少女と父親。しかし離れていても、相手を嫌いになる事は出来なかった。デリケートな人の心を描いた、忘れ難く心に残る、素晴らしい絵本。スケッチ風の繊細なタッチで可愛らしく造形された画風ですが、悲しみや温もりが切々と伝わってきて、目頭が熱くなります。柔らかな言葉が心に沁み渡る、作家・小川糸の日本語訳も素敵。

『わたし、ぜんぜんかわいくない』 (2008年、フランス)

 作・絵:クロード・K・デュボア  訳:小川糸

 ポプラ社・2011年

 可愛くてちやほやされている同級生に嫉妬する少女が、劣等感と向き合って克服するまでを描いたお話。「パパは私がもっとかわいかったらよかった?」と訊く主人公に、「じゃあステファニーは、パパがもっとハンサムだったらよかったのかい?」と返す父親が素晴らしいです。キャラクターが漫画っぽくてキュートですが、1ページ4つとか、絵をコマ割りのように分割しているページが多く、絵本と漫画の中間みたいな体裁なのがユニーク。小川糸の訳文も美しいです。

『さようなら、わたしの恋』 (2010年、フランス)

 作・絵:クロード・K・デュボア  訳:小川糸

 ポプラ社・2011年

 失恋した少女が、少しずつ前を向いて、一歩を踏み出すまでを描いた絵本。こちらも作家の小川糸が、美しい訳文を付けています。デッサンのようなラフな線が、少女の頼りなく所在なげな心境を伝えますが、彼女の中に芽生えたほのかな希望を、背中に生えた小さな羽で表現しているのは素敵なアイデア。登場人物の心情にぴったりと寄り添う、著者らしい優しさが溢れる作品です。

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