『大きな空の木』 (1999年、フランス) |
作・絵:エリック・バトゥー 訳:加藤登紀子 |
フレーベル館・2003年 |
大きな木をめぐる春夏秋冬の風景を、色とりどりの美しいイラストと詩的な文章で綴る、素晴らしい絵本。ある1本の木について定点観測的に描くのでなく、それぞれ別の場所の別の光景が描かれています。 |
それにしても、ページごとに色彩や構図を変えてゆく、鮮烈で味わい深いイラストといったら! もう全てのページをポスターにしたいくらい魅力的です。歌詞を思わせるような加藤登紀子による訳文も、作品にうまく合致。彼女初の翻訳絵本という事で、最後にはバトゥーの文章に自身で付曲した楽譜も載っています。尚、フレーベル館は著者名を「バテュ」としているので要注意。 |
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『ペローの赤ずきん』 (2000年、スイス) |
作:シャルル・ペロー 絵:エリック・バトゥー |
訳:池田香代子 |
講談社・2001年 |
グリム兄弟が採録した童話集から遡ること100年前、ペローによって再話された「赤ずきん」にバトゥーがイラストを付けた絵本。ペロー版の最大の特徴は、おばあちゃんも赤ずきんも狼に食べられてしまうエンディング。随分と救いがないですが、それが本来口承されていた形だったようで、教訓話としてもその方が筋が通ります。 |
イラストはどのページも暖色で統一。斜めにかしいだポプラのような樹をパターン風に並べ、シンプルに抽象化された丘の稜線に、可愛らしい人物や家、風車などを配置するというもの。アーリッカの妖精のオブジェみたいな赤ずきんの造形がキュートで、人物の顔をはっきり描いた数少ないページでは、他のバトゥー作品と少し違う表情も見られます。静物画や風景画など、名画のパロディみたいなイラストも味わいあり。 |
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『ペローのろばの皮』 (2000年、フランス) |
原作:シャルル・ペロー 文:ジャン=ピエール・ケルロック |
絵:エリック・バトゥー 訳:石津ちひろ |
講談社・2002年 |
妃を病で失った悲しみのあまり、母と生き写しの娘と再婚しようとした王の物語。フランスで最も古く、最も魅力的と言われるこのお話は、口承で様々なバリエーションを生みましたが、それをペローが文章にまとめました。その100年後、作者不詳の散文版テキストも出版されますが、本書はその2つの原典を元に再話したもの。少し複雑なお話なので文章の量もかなり多いですが、圧倒的な魅力がやはりイラスト。 |
左ページが文章、右ページがイラストという体裁ですが、縦長の構図を生かしたその絵のなんという素晴らしさ! とてつもなく天井の高いお城の描写は圧巻だし、巨大なシャンデリアが吊り下がる様や、窓の外の夕陽や月空など、どれもため息の出るような美しさ。野外の情景も、ボートが模様のように浮かぶ池、うらさびしい冬枯れの道、長い長い石段とその両脇の芝生の傾斜など、終始目を奪われっぱなしです。 |
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『せんそう』 (2000年、フランス) |
作・絵:エリック・バトゥー 訳:石津ちひろ |
ほるぷ出版・2003年 |
並んで建っている、赤いお城と青いお城。人々は平和に暮らしていたのに、ささいな事がきっかけで戦争が始まってしまう。戦争の愚かさを美しい色彩で寓話的に描いた、意欲的な絵本。客観性とも神の視点ともとれるロングショットの遠景で一貫し、人間達をこまごまと矮小化して描いています。おもちゃのような軍隊はむしろ可愛らしいですが、それは生々しさを避けるためなのか、それとも人間をちっぽけに描くためなのでしょうか。 |
様々な時間帯や天候を描き分け、微妙な色彩のヴァリエーションで読み手を魅了する背景の美しさは、正にバトゥーの面目躍如たる所ですが、考えようによってはそれも描き手の平和への祈りと取れるように思います。人々は争っていても世界はこんなに美しいと、そう言われているように感じられないでしょうか? |
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『あかいろてんてん』 (2002年、スイス) |
作:マリタ・マーリンガー 絵:エリック・バトゥー |
訳:那須田淳 |
講談社・2003年 |
てんてんの色の国に住むあかいろてんてんが、見知らぬ世界の他の色を発見する旅に出る。色彩の魔術師バトゥーらしい、遊び心溢れるカラフルな絵本。真っ暗な世界、真っ白な世界、赤いお花畑、なんだか目立ってしまって落ち着かなかったり、うまく溶け込んだり、赤色の点の気持ちになって描かれているのが新鮮で、その視点自体が面白いです。イマジネーション溢れるカラー表現も美しく、鮮やか。 |
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『もしも ゆきが あかだったら』 (2002年、イタリア) |
作・絵:エリック・バトゥー 訳:もきかずこ |
フレーベル館・2003年 |
「もしもゆきがきいろだったら〜」「もしもゆきがむらさきだったら〜」と、様々な色に染まった世界を想定してゆく、色彩の魔術師バトゥーらしいイマジネーション豊かな絵本。全ては主人公「ぼく」の想像なのですが、この「ぼく」とペットに連れている犬がどのページの世界にも小さく配置されていて、それが実に可愛いです。 |
背景はラフな筆遣いで塗られた水彩のようですが、ある時は水墨画みたいだったり、グラフィカルな模様のようだったり、斬新な構図があったり、金色のページがあったり、映画の一場面みたいな構図だったり、千変万化する美しい色彩とユニークな発想に目を奪われます。 |
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『ちいさな ぽむさん』 (2002年、フランス) |
作:シルヴィ・ポワレヴェ 絵:エリック・バトゥー |
訳:谷内こうた |
主婦の友社・2008年 |
音のない国に住む小さなぽむさんが、国のみんなのために、音を探す旅に出る。まるで演劇の舞台のように、どのページもあまり変わらないシンプルな背景なのに、可愛らしいキャラクター造形と色彩のマジックで読者を魅了する、凄い作風です。何といっても、カラフルな中にも微妙な陰影に富んだ色合いが素晴らしいし、ぽむさん自体が可愛い! |
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『にっこりねこ』 (2003年、フランス) |
作・絵:エリック・バトゥー 訳:石津ちひろ |
講談社・2005年 |
とてもきれいな国にいる、一度も笑った事のないむっつりネコ。そこに、ぱっくりかいじゅうが現れて・・・。バトゥーらしいたくらみを仕掛けながらも、平素の画風とは全く違うタッチで描かれた本書。限られた色彩とシンプルな線で描かれた切り絵のようなスタイルですが、内容は黒いネコが黒い怪獣に食べられてしまう様子を段階的に描くだけ。中盤はページがほぼ真っ黒というありさまです。そして怪獣が吐き出したものはというと・・・。あっと驚くエンディングがおしゃれ。 |
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『それはひ・み・つ』 (2004年、フランス) |
作・絵:エリック・バトゥー 訳:石津ちひろ |
講談社・2005年 |
真っ赤なリンゴを見つけたネズミが、それを自分だけの秘密にするが・・・。左のページは短い文章だけ、右のページがイラストですが、それも白の背景に小さくネズミが描かれているだけ。そこにリンゴや木が控えめに追加され、他の動物が代わりばんこに現れるという、極度に凝集された表現で一貫しています。ほぼ白一色のページなのに、限られた原色の鮮やかさが目に焼き付く所、やはり色彩の魔術師という他ありません。 |
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『やっと みつけた のら犬ヨハンのおはなし』 (2007年、スイス) |
作・絵:エリック・バトゥー 訳:田中尚人 |
グランまま社・2009年 |
野良犬のヨハンが、幸せを見つけるまでのお話。いつものタッチとは少し違い、全編オレンジを基調にした上で黒の太い線を隈取りに用いるスタイル。それがとてもアーティスティックに見えるのと、詩情豊かな背景、並んだ警察官や建物の直線を斜めに傾かせたグラフィカルなデザインなど、読者を楽しませるおしゃれなアイデアが豊富に盛り込まれています。絵葉書にしたいようなページも多々あり。 |
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『すいようびくんのげんきだま』 (2006年、日本) |
作:那須田淳 絵:エリック・バトゥー |
講談社・2006年 |
曜日の妖精すいようびくんは、月の光や朝日の色を集め、みんなの夢や笑い声、幸せな気持ちを加え、お鍋に入れてぐつぐつ煮る。そうやって出来上がった「げんきだま」を、他の曜日の妖精が世界中に配って歩く。 |
「講談社の創作絵本」と銘打たれている日本発の国際絵本で、ミヒャエル・ゾーヴァ作品の翻訳も担当している那須田淳氏が文章を担当。氏にとっても、この企画は長年の夢だったそうです。素敵なお話もさる事ながら、イラストがバトゥー作品の中でも一、二を争う素晴らしさで、私は図書館で本書を見つけたその足で、中古本を探しまわりました(絶版なのです)。表紙にもある、ヨットに乗ったすいようびくんの姿は、正に絵本の可愛さの権化。そしてページをめくってゆくと・・・、もお〜たまりませんっ。色彩の魔術師、万歳! |
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『太陽のしずく』 (2008年) |
作・絵:エリック・バトゥー 訳:那須田淳 |
講談社・2008年 |
自分のいるべき場所を求めて、太陽のしずくは旅に出た・・・。お話も絵本らしくロマンティックですが、とにかく絵が可愛くて、ページごとに千変万化する色彩の美しさにも目を奪われます。遠景や背景が喚起するしみじみとした情感もたまらない、実に詩的な絵本。出版国の記載がないですが、「翻訳絵本」となっているので、日本オリジナル企画ではないようです。『すいようびくんのげんきだま』に負けず劣らず素晴らしい内容ですが、負けず劣らずプレミア価格になっているし・・・。絵本業界は絶版が多すぎます。 |
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