『不思議の国のアリス』 (1991年、ドイツ) |
作:ルイス・キャロル 絵:ユーリア・グコーヴァ |
訳:酒寄進一 |
西村書店・1995年 |
本書は絵本ではありませんが、カラーの挿絵がたっぷり入っていて、挿絵を全部合わせると通常の絵本以上の分量にはなります。キャロルはもちろん英国の作家ですが、オリジナルがドイツでの出版で訳者が酒寄進一である所からすると、ドイツ語から訳したのかもしれません。 |
訳者が軽妙洒脱なまえがきで「グコーヴァ版『不思議の国のアリス』をおとどけします、と言った方がいいでしょうか」と述べている通り、イラストが実にシュールで不思議。例えば緑色の傘の一辺が野原になっている、宙を舞う提灯アンコウが部屋の床を照らしている、ティーパーティでアリスの姿だけがテーブルクロスの模様になっている、チェスの駒が全て魚になっている等々、奔放なイマジネーションの洪水に圧倒される思い。 |
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『あやつり人形ピッパ』 (1992年、ドイツ) |
作:エーディト・ターペット 絵:ユーリア・グコーヴァ |
訳:酒寄進一 |
西村書店・1996年 |
子供部屋から逃げ出したあやつり人形ピッパの冒険。お話は他愛のないものですが、可愛いというよりはミステリアスなピッパのマスクや、彼女を拾い上げた悪者二人組の強烈な悪人顔など、全体のほの暗い色彩と共に、子供向けに太鼓判を押せる画風ではありません。いわば、苦み走った大人が味わう画集といった所でしょうか。色彩や構図、造形など絵画としては非常に美しいので、大人には見応えがあります。文章にもルビが振られていない漢字もあり、お子様向けには要注意。 |
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『ギリシャのむかしばなし 砂糖菓子の男』 |
(1993年、ドイツ/オーストリア) |
作:アルニカ・エステル 絵:ユーリア・グコーヴァ |
訳:酒寄進一 |
西村書店・1998年 |
お眼鏡にかなう男性が現れないため、王女が好みの男を砂糖菓子でこしらえるというお話。男の美しさは世界中に知れ渡り、遥か遠くの野心的な女王にもその噂が届く。シンボリックで幻想的なグコーヴァのスタイルが全面的に展開された作品で、海上の空に漂う無数の仮面、表面が星空になっている傘、アヒルや白鳥が点在する宮殿の廊下と、謎めいたイマジネーションの飛翔は枚挙に暇がありません。文章には、ルビが振られていない漢字もあるのでご注意。 |
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