『うさぎの恩返し』 (2012年) |
作:アンドレ・プラトーノフ 絵:イリーナ・ザトゥロフスカヤ |
訳:児島宏子 |
未知谷・2012年 |
本書は、短篇小説に挿絵を付けたものと位置付けするのが正しいのかもしれませんが、出版している未知谷は、同じくザトゥロフスカヤがイラストを付けたチェーホフ・コレクションと同様、「大人のための絵本」と定義しているようです。確かに、モノクロではありますが全て見開きで文章ページと絵のページのペアで構成されています。 |
物語の内容は、ダゲスタンの民話を作家プラトーノフが再話したもの。水彩の太い筆で、さっと書き殴ったようなラフな画風は、どこか我が国の書道や水墨画を連想させる、幻想的な雰囲気です。表紙のイラストを見て心を惹かれた人は、中身もきっと気に入るでしょう。 |
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『1わのおんどり コケコッコー』 (2014年、日本) |
作・絵:イリーナ・ザトゥロフスカヤ 訳:児島宏子 |
福音館書店・2014年 |
本書はどうも日本企画のようで、著者は孫のリューカ君の事を思いながら、初めて絵本を創作したとのこと。1わのおんどりから始まり、2わのがちょう、3びきのくまと、数を数え上げてゆく知育絵本。特筆すべきはその画風で、黒をバックにこってりとした筆で描かれたイラストは、シンプルに凝集されていながら豊かな想像力を喚起するもの。背景に木が数本描いてあるだけで、森のムードが濃厚に漂うのが不思議です。 |
妙に写実的なリューカ君に対し、ぬいぐるみのような熊やフクロウなど、童心溢れる筆致も魅力的。この内容の幼児向け絵本にダークな色合いの絵を付けるのも斬新ですが、ダークなのに可愛いという、相反する要素の同居もユニークです。 |
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『裸足で』 (2016年、日本) |
作・絵:イリーナ・ザトゥロフスカヤ 訳:児島宏子 |
未知谷・2016年 |
こちらは絵本ではなく、彼女が上記芸術祭で日本海を前にして詠んだ21篇の国際俳句に、自身で1句ずつイラストを付けたもの。ロシア語のオリジナルと翻訳したものを2部構成で同時収録しています。絵は全てモノクロですが、俳句に付けた絵という性質や、そもそもの彼女の画風からして、モノトーンの世界が本の雰囲気に見事にマッチ。 |
又、俳句の体裁を守った日本語の訳文も素晴らしく、翻訳の苦労が偲ばれます。「ささやかでも、私にとっては宝物となる初めての俳画集」だと語るザトゥロフスカヤのまえがきも素敵で、暖かい人柄が滲み出ている感じ。手に取りやすい小さなサイズながら、布張りの表紙、函入りの装丁も秀逸。 |
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