マルゴルザータ・ピオトロヴスカ

Malgorzata Piotrowska

* 作家紹介

 1957年、ポーランド生まれ。芸術学院修了後、一時ドイツに滞在。87年からノルウェーで挿絵画家、絵本作家として活躍。オスロ出身の作家トルヴァル・ステーンと組んだ『ちいさなミリーとイルカ』は、2人にとって初めての絵本作りだったが、出版されるやいなや絶賛を浴びた(絵本付属の解説シートより)。他に『一本の木』(96年)も高い評価を得ている。

 大胆でイマジネーションに溢れた画風ながら、非常に繊細な線を駆使する人で、どの絵も見た瞬間に目を奪われる魅力があります。水彩のにじみが随所に生かされているのも特色ですが、強く印象に残るのは、やはり東欧の画家らしい複雑な色彩感覚。幻想的な色使いは何とも言えず美しく、その斬新なセンスは凡百のイラストレーターと一線を画します。それでいて、絵本らしいデフォルメや可愛らしさもあるのも好印象。

* 作品

『一本の木』

 他

* おすすめ

『ちいさなミリーとイルカ』 (1990年、ノルウェー)

 作:トルヴァル・ステーン  絵:マルゴルザータ・ピオトロヴスカ

 訳:山内清子

 岩波書店・1997年

ある朝、少女ミリーはテーブルの下を自分の家と決め、ネコのソーフスと一緒に隠れてしまう。起きてきたパパにも、「いや」と反抗してみるけれど・・・。少女が試してみる新しい世界と、それを暖かく見守る父親を生き生きと描いた絵本。

 このシリーズに母親が登場しないのは少し気になりますが、欧州では父子家庭なんて珍しくないのでしょう。娘のわがままを否定せず付き合うパパの態度にも、ヨーロッパらしさを感じます。詩情豊かなイラストに魅せられますが、とりわけ野外の場面における風景描写の美しさといったらありません。

 作者のステーンは、54年オスロ生まれ。83年に詩集『秘密のバラ』を発表して以来文壇で活躍、91年から97年までノルウェー作家連盟の委員長を務めたという人で、今ではノルウェーで最も秀でた作家とまで称されています。作家にとっても画家にとっても、これが初めての絵本作りだったとの事。

『ちいさなミリーととり』 (1991年、ノルウェー)

 作:トルヴァル・ステーン  絵:マルゴルザータ・ピオトロヴスカ

 訳:山内清子

 岩波書店・1997年

 ちいさなミリーのシリーズ続編。パパと動物園に行くお話です。外の場面が多く、様々な動物が登場するせいか、画家のイマジネーションも大きく飛翔している印象。特に、フラミンゴの群れの前でミリーが踊っている絵は、あまりの美しさにはっとさせられます。ピオトロヴスカの作品ではネコや大人の顔、窓枠など大きなものがよくグニャリと歪んだ曲線で描かれますが、これは子供の視点なのでしょうか。

『ちいさなミリーとにじ』 (1992年、ノルウェー)

 作:トルヴァル・ステーン  絵:マルゴルザータ・ピオトロヴスカ

 訳:山内清子

 岩波書店・1997年

 ちいさなミリーの三作目は、パパとソーフスと湖に釣りへ行く話。なぜか小さな湖が気に入ってしまい、パパがどんなに言っても移動しようとしないミリー。彼女はパパが釣ったニジマスと約束を交わし、こっそり逃がしてしまうが・・・。

 釣果が欲しいパパにとっても、魚を食べたいソーフスにとっても、ミリーの行動はなかなか手に負えないものですが、子育ての経験がある人には、こういうのも一種のあるあるネタ。最後に起きる奇跡は、ミリーの想像なのか、本当の事なのか(冒頭の夢の場面は伏線?)、いずれにしても全体がほのぼのとした暖かさに包まれています。

 繊細なイラストが秀逸。生彩に富んだ人物やネコの動きも素晴らしいですが、紅葉した森の遠景や、湖の光景など、豊かな自然の描写がひたすら美しいです。夢や想像の場面など、絵本らしい童心に溢れたタッチも素敵。

『Oliver Hos Fuglene』 (1993年、ノルウェー)

 作・絵:マルゴルザータ・ピオトロヴスカ

 Tiden Norsk Forlag・1993年

 ピオトロヴスカ自身の作になる絵本。タイトルは「島の国のオリバー」という意味らしいですが、ノルウェー語なので内容は全然分からないです。ただ、イラストがあまりにも素晴らしいので、「こういう本が存在しますよ」という意味でここで取り上げました(私も図書館でたまたま見つけた本で、ノルウェーの出版社から90年代に出ているので、入手は困難と思われます)。

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