ペーター・ベーツェル

(ペーター=ベーツェル)

Peter Wezel

* 作家紹介

 スイス出身のグラフィック・デザイナー、絵本作家という事だけで後の経歴は不明。2冊の「言葉のない絵本」で知られています。一歩間違えると、子供が書いた塗り絵かと思ってしまうくらいシンプルでさりげないタッチですが、あまりにストレートな童心が返って郷愁を誘うのか、雑貨屋さんやセレクト・ショップもよくこれらの本をリコメンドしています。

 翻訳出版した実業之日本社はなぜか「ペーター=ベーツェル」と人名表記していますが、そもそも名前を検索するまでもなく入手困難。ただ、文章のない本ですので洋書でも全然構わない(その方がおしゃれかも)と思います。もっとも、洋書も絶版なのか、やはり中古市場でそこそこの値段が付いている様子。

* 作品

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『かわいいことり』 (1964年、スイス)

 絵:ペーター・ベーツェル

 実業之日本社・1973年

 原題は「よい小鳥、ネポムーク」。窓から部屋に入ってきて、金魚鉢の魚にエサをやる小鳥の姿を、イラストだけで描いています。優しいタッチのクレパス画で、ヨーロッパの画家には珍しく色彩感覚が明朗で淡彩。すっきりとシンプルな構図と共に、どこか日本の絵本とも通じる所のある画風です。ただ、空間の広さや木のシルエットにスイスらしさを感じさせるのが面白い所。

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『いたずらことり』 (1967年、スイス)

 絵:ペーター・ベーツェル

 実業之日本社・1975年

 原題は「あつかましい小鳥、フィガロ」。ネコやイヌ、人間にちょっかいを出す白い鳥の行動を描写した絵本で、こちらも文章なしでイラストのみ。小鳥というには随分大きく見えるし、目つきもどことなく意地悪そう。クレヨン画だった『かわいいことり』と違ってはっきりしたペン画で、敢えてタッチに差を付けてあるそうです。ただし明朗でシンプルな画風と色彩は共通。素人っぽく見えるギリギリのラインで、絵本好きの興趣をくすぐるのが巧い画家という感じがします。

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