マルク・ブタヴァン

Marc Boutavant

* 作家紹介

 1970年フランスのブルゴーニュ生まれ。パリのグラフィック・アートスクールを卒業後、複数の広告会社でグラフィック・デザイナーとして働く。独立後、新聞・雑誌・広告等のイラストレーターとして活躍。98年より絵本の挿絵を手がけ、息子の誕生を機に自作の絵本を書きはじめる。フランスでは、幼児向け絵本『Mouk』シリーズを刊行。パリ11区、バスティーユの運河沿いに、壁も床もブルーに塗ったピシーヌ(プールの意)というアトリエを構え、仲間6人とシェアして共同プロジェクトなども行う。

 アトリエのメンバーは全員が日本アニメのファンとの事で、ブタヴァンの作風にもアニメチックな造形が窺われます。ただ、派手に拡散しないシックにまとまった配色センスと可愛らしいキャラクター造形は、ヨーロッパの人らしい趣味の良さ。初期の作品はカラー・パレットを制限していて、それが個性にもなっていますが、後に色調を拡大した後もセンスの良さが失われていないのが素晴らしいです。

* おすすめ

『いたずらペンギンとむくむくオバケ』 (2001年、フランス)

 作・絵:マルク・ブタヴァン  訳:岡元麻理恵

 中公文庫・2003年 

 文庫本で出ている珍しい絵本。しかもデビュー作との事。いたずら者の皇帝ペンギンが、腹ぺこの北極熊とやり合う話で、子供向きの内容ではありません。ページがコマ割りされている箇所もあり、漫画の影響もあります。キャラクターもややアニメチックながらセンスが良いですが、グレー、水色、カーキ、茶色、からし色、ブラック辺りに限定した配色(無印良品を連想するかも)が、独特の落ち着いた雰囲気を醸しています。

『カバくんのおしり』 (2003年、フランス)

 作:ディディエ・レヴィ  絵:マルク・ブタヴァン

 訳:山本知子

 ソニー・マガジンズ・2004年

 大きなおしりにコンプレックスを持つカバくんが、様々な動物達を巻き込んで新しい価値観を得るまでを描く寓話的なお話。モダンなタッチのイラストは品が良く、繊細なタッチも目に優しいです。動物達の造形や表情はデビュー作同様やや漫画チックですが、やはり無印良品っぽい色彩の限定がシックで、派手なアメリカン調にはなっていません。

『シナモンとまいごのこいぬ』 (2004年、日本)

 作:せきちさと  絵:マルク・ブタヴァン

 小学館・2004年

 サンリオと組んだ日本企画のシリーズ。カフェ・シナモンに住む子犬のシナモンは、パリの街角で迷子の子犬シャルロットと出会い、飼い主探しを手伝う。赤が基調のカフェや、鮮やかな色彩に溢れた様々なパリの表情など、ブタヴァン印全開の美しくキュートなイラストが素晴らしいです。フリーの編集者、ライターであるせきちさとの文章も可愛らしく、飼い主が見つかる場面も、しみじみと優しい情景に描いています。

『シナモンと南の島のこどもたち』 (2005年、日本)

 作:せきちさと  絵:マルク・ブタヴァン

 小学館・2006年 

 サンリオのシナモン・シリーズ。親のいない子供達のためにプレゼントを用意するシナモンが・・・。雪の野原から始まり、赤を全編にあしらったクリスマスの室内から、一気に南洋の島へと舞台が飛びますが、その南国に雪やクリスマスを持ってくる辺りが秀逸なアイデアです。可愛いイラストも、対比が効いていて小粋。

『シナモンとちいさな木』 (2007年、日本)

 作:せきちさと  絵:マルク・ブタヴァン

 小学館・2007年

 サンリオのシナモン・シリーズ。ニューヨークで、“青空をつくる木”の苗を配るお話です。ニューヨークが舞台とあって、原色も多用したカラフルな画風になっているのに、どうしてこう色がとっ散らからず、まとまってハイセンスに見えるのか不思議。ポップながら緻密なタッチも魅力で、1ページ1ページが変化に富み、多彩なアイデアで飽きさせません。

『ムーク せかいを ひとまわり』 (2007年、フランス) 

 作・絵:マルク・ブタヴァン  訳:貴田奈津子

 フレーベル館・2011年

 01年に誕生した『ムーク』の生みの親であるブタヴァン。本作は日本未訳の2作を経た、シリーズ3作目との事です。パリに住む子グマのムークは、出会いと友達作りが大好き。人間の子供と子グマの間でうまくバランスを取っているムークは、友達に会うため世界旅行に出ます。

 大判の本で、大きなページにびっしりと描かれた細かいディティールの数々。フィンランドからスタートして、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、アメリカと、得意のポップな色彩感を駆使して、ページごとに変化を表現していきます。ちなみに日本では、相撲やお花見を堪能。表層的なイメージだけで終らず、各国の文化に細かくコミットしている所も素敵です。

『いちにちでいいから』 (2009年、アメリカ)

 作:ローラ・ルーク  絵:マルク・ブタヴァン

 訳:福本友美子

 フレーベル館・2014年 

 一日だけ何かになれるとしたら・・・、子供の色々な夢や想像をイラストで語る絵本。カラフルながら趣味の良い色彩センスと、イマジネーション溢れる可愛らしい画風が素晴らしいです。ディティールの描写すこぶる繊細で可愛いですが、最後に素敵な仕掛けがあるのでお楽しみに。

『リスのエドモン つきよのパーティー』 (2013年、フランス)

 作:アストリッド・デボルド  絵:マルク・ブタヴァン

 訳:藤本いずみ

 ロクリン社・2015年

 栗の木に住むリスのエドモン、同じ木に住むみみずくのジョルジュ、熊のエドアールがパーティーを開くお話。原色もたくさん使ったカラフルなイラストですが、ものすごくセンスが良く、おしゃれに見えるのが凄いです。どのページも絵葉書にしたくなるくらい華やかで素敵。室内の描写が多い話なので、特にフランス人らしいデザイン・センスが満開ですが、ページごとに多彩な変化があって飽きさせないのが見事。

『ポルカとオルタンスのだいぼうけん』 (2014年、フランス)

 作:アストリッド・デボルド  絵:マルク・ブタヴァン

 訳:藤本いずみ

 ロクリン社・2015年 

 リスのエドモンのシリーズ続刊。ただし本作の主人公はネズミ(?)と思われるポルカとオルタンス。途中でエドモンと出会って、森や野原、丘を冒険します。見開きにたくさんのお花が紹介されていますが、本書の魅力は豊かな自然の描写。ブタヴァンが凄いのは、都会的なタッチだけでなく、こういった自然描写もヴァリエーション豊かな手法とアイデアでおしゃれに描く事が出来る所です。正に、現代の絵本作家の鑑。

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