イロン・ヴィークランド

Ilon Wikland

* 作家紹介

 1930年、エストニアのハープサルで子供時代を過ごす。44年、戦争から逃れるためスウェーデンへ亡命。複数の学校で広告や美術を学ぶ。54年、児童文学作家アストリッド・リンドグレーンの『ミオよ わたしのミオ』に挿絵を付け、イラストレーターとして本格的に出発。

 以後、40年に渡ってリンドグレーンの信頼を得て、『やかまし村の子どもたち』『やねの上のカールソン』『はるかな国の兄弟』『山賊のむすめローニャ』各シリーズ、『赤い目のドラゴン』など多くの作品でコンビを組む。69年、エルザ・ベスコフ賞を受賞。

 くっきりした線とカラフルな原色で描かれた、良くも悪くもメリハリの効いたイラストが多いですが、時折柔らかいタッチや水彩の絵本もあるのが魅力です。作品によってスタイルを変える絵本作家は少なくないですが、この人が凄いのは、同じシリーズでも画風をがらっと変えたり、一冊の中でページごとに違うスタイルを駆使したりする事。気まぐれな人なのかもしれませんが、背景やディティールに漂う豊かな詩情は素晴らしいです。

* 作品

『わたしもがっこうにいきたいな』

『ぼくもおにいちゃんになりたいな』 (以上、徳間書店)

『ぼくのブッベはどこ?』 (福音館書店)

『赤い目のドラゴン』

『ゆうれいフェルピンの話』 

『ぼくねむくないよ』 (以上、岩波書店)

『ロッタちゃんとじてんしゃ』 

『ロッタちゃんとクリスマスツリー』 (以上、偕成社)

『やかまし村のクリスマス』 (ポプラ社)

『ぼくのあかちゃん』 (香匠庵)

『いたずらハッピー』 (小学館)

 他

* おすすめ

item7

『ぴちぴちカイサとクリスマスのひみつ』 (1950年、スウェーデン)

 作:アストリッド・リンドグレーン  絵:イロン・ヴィークランド

 訳:山内清子

 偕成社・1977年

 少女カイサをめぐるクリスマスの出来事を優しく温かな筆致で描いた、リンドグレーンらしい本。古い作品なので昔のアメリカの絵本みたいな色合いですが、イラスト自体は北欧情緒たっぷり。

 ヴィークランド作品としてはタッチの柔らかい作風で、カラフルに色を使って細部もじっくり描き込んでいます。街の風景や室内の様子など、日常的な描写ばかりですが、絵本としては充実した描きっぷりで、画集として楽しめる充実感もあります。サイズが小さめで可愛いのも嬉しい所。

『マディケンとリサベット』 (1983年、スウェーデン)

 作:アストリッド・リンドグレーン  絵:イロン・ヴィークランド

 訳:石井登志子

 篠崎書林・1986年

 雪の森で迷子になってしまった、小さな女の子リサベットのお話。長年に渡ってコンビを組んだリンドグレーンの作です。文章のボリュームが多いので読み物としての性格も強いですが、漢字にはルビがふってあります。

 柔らかく詩情豊かなイラストは、にじみも生かしているので水彩だと思うのですが、部分的にべたっとした油彩のような塗り方もあり、一筋縄では行きません。雪の森がメインの背景なので、白を基調にした色彩設計ですが、ブルーで統一した室内の場面や、鮮やかな色合いの衣服、表紙見開きの街の風景などに、北欧のアーティストらしいセンスが横溢。

『ロッタのひみつのおくりもの』 (1990年、スウェーデン)

 作:アストリッド・リンドグレーン  絵:イロン・ヴィークランド

 訳:石井登志子

 岩崎書店・1991年

 リンドグレーンと組んでいるロッタちゃんのシリーズも、絵本だけでなく児童書の挿絵など多くのコラボがありますが、同じロッタ絵本でも画風をがらりと変えている所が凄いです。くっきりと明瞭な線で描かれたペン画のようなスタイルが多いシリーズながら、本書では絵の具のぼかしや緻密な点描のような手法を多用して柔らかなタッチ。北欧らしい配色や陰影に富むグラデーションも美しく、詩情豊かな物語世界が展開します。

『ながい ながい旅 エストニアからのがれた少女』 (1995年、スウェーデン)

 作:ローセ・ラーゲルクランツ  絵:イロン・ヴィークランド

 訳:石井登志子

 岩崎書店・2008年

 戦争のために故郷のエストニアを離れ、スウェーデンのストックホルムに避難という、ヴィークランド自身の歴史を振り返る自伝的な物語。主人公の少女もイロンと名付けられています。ちなみに文章を手がけたラーゲルクランツの両親も、ナチスの迫害を逃れてスウェーデンに逃れてきた移民だそうです。

 イラストの面から見ると、滲みを生かした水彩画もあれば、色鉛筆で描いたような明快なタッチもあり、クレヨンでさっとデッサンしたようなきめの粗いキャンバスありと、ページごとに変わる技法の混在が楽しいです。又、表紙の見開きは、チェコのイジー・トゥルンカを思わせる古風で繊細なタッチで、彼女の他の作風に親しんでいる読者には、「こんな絵も描くのか」という意外性があります。

『聖なる夜』 (2003年、スウェーデン)

 作:セルマ・ラーゲルレーヴ  絵:イロン・ヴィークランド

 訳:うらたあつこ

 ラトルズ・2007年 

 クリスマスの夜、おばあちゃんが孫娘にお話を始める。昔、ある暗い夜に、男の人が火をもらいに外へ出かけました・・・。『ニルスのふしぎな旅』で知られる作家ラーゲルレーヴが、子供の頃に大好きだったおばあちゃんから実際に聞いたお話。作家としてデビューした彼女は『キリスト伝説集』をまとめる際、40年以上も色褪せる事なく心に刻まれていたこの話を思い出し、一つの物語として誕生させました。

 ヴィークランドは、また優しく柔らかいタッチを持ち出し、幻想的でしみじみとしたイラストを展開しています。森や丘、室内などの描写に、北欧の人らしい雰囲気と味わいが横溢しているのも魅力。

item8
item9
item10
item11

*   *   *

Home  Top