Shinzi Katoh

(カトウシンジ、かとうしんじ)

* 作家紹介

 1948年、熊本市生まれ。70年から商業デザイナーとして活動をはじめ、テーブルウェア、文具、雑貨、靴、服、ジュエリーなど、幅広いジャンルの企画デザインを手がけ、世界中にファンを持つ。ハロー・キティやディズニーなど、キャラクター・コラボのデザインでも知られる。海外での展示会、世界各国のデパート、ミュージアム・ショップ、雑貨店にも作品が並び、好評を博している。愛知県在住。

 何しろ多岐に渡る分野で活躍している人なので、誰でもどこかで彼のデザインは目にした事があるのではと思いますが、展覧会でまとめて作品を鑑賞すると、そのセンスの良さに思わず悶絶します。ガーリーで可愛いのは共通ですが、例えばポスターなどを見ていると、ヨーロッパ的な配色センスの美しさや、構図の素晴らしさにも唸らされます。

* 作品

『ポケットいっぱい』

『あこがれのチュチュ』 (以上、出版ワークス)

『なにかな?なにかな?(WORK&CREATEシリーズ)』 (コクヨS&T)

『乙女かわいい赤ずきんカードケースとおとぎの国 文具セットBOOK』 (宝島社)

 他

* おすすめ

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『そらべあ』 (2006年、ソニー・マガジンズ)

 作:NPO法人エコロジーオンライン  絵:かとうしんじ

 アザラシが出会ったホッキョクグマの兄弟“そら”と“べあ”は、悲しそうに涙を流していました。地面の氷が割れ、お母さんグマとはぐれてしまったのです。物語の背景で地球温暖化の影響を示唆した絵本。その教育、募金活動を行うのが「そらべあ基金」で、本書はそのシンボルキャラクターを物語にした作品です。彼らがお母さんを探す冒険は、『そらべあ はじめての だいぼうけん』で描かれています。

 今では入手困難なのが残念ですが、本書の売上げの一部はNPO法人エコロジーオンラインを通してソーラー発電の建設費用や、地球温暖化防止、再生可能エネルギー利用拡大のために活用されました。平仮名の「かとうしんじ」名義で発表。

『いつか、会いにいくよ』 (2008年、講談社)

 作・絵:Shinzi Katoh 

 街のゴミ箱に捨てられていたぬいぐるみ達を、見るに見かねて拾った女の子の奮闘記。著者の本にはいつも、胸を締め付けられるような優しさと芯の強いメッセージを感じますが、本書もそうです。「可愛い」イラストで人を集めて大切な事を言う、愛に溢れた絵本。もちろん、フランス風のカラフルでおしゃれな画風も素晴らしいです。

『あらしのよるの ばんごはん』 (2008年、ポプラ社)

 作:長崎夏海  絵:Shinzi Katoh 

 こちらは絵本ではなく児童書。文章が中心ですが、モノクロがメインとはいえほぼ全てのページにイラストが入っているので、当欄で取り上げました。南の島に引越した少女にとって、周囲は「はじめて」と「びっくり」でいっぱい。だけど初めての晩ご飯の時、外に大嵐がやってきて・・・。

 グラフィカルでシンプルなイラストが著者らしくて可愛いですが、時々挟まれるカラーのページにも卓越した色彩センスが溢れます。字は大きくてルビも振ってあり、「低学年向け」となっています。

『そらべあ はじめての だいぼうけん』 (2014年、岩崎書店)

 作・絵:Shinzi Katoh 

 『そらべあ』の後日譚。白が中心の北極の世界を描きつつ、最初と最後に緑の草原を描く美しい色彩設計も秀逸です。彼らが出会う動物達はアザラシやクジラの他、ジャコウウシ、キョクアジサシと、けっこう具体的な名称で書かれていたりしますが、可愛くも素敵な絵と文章の中にそっと忍ばせてあるのが、地球温暖化の問題です。

『あかずきんちゃん』 (2018年、出版ワークス)

 絵:カトウシンジ

 絵本では定番の童話ですが、独自にアレンジされた語り口で、特に後半のハートウォーミングな展開は、オリジナルとは全く違います。過去にポスターなどでよく赤ずきんをモチーフにしている著者ですが、既存のイラストは使っていない様子。

 キュートかつポップなイラストが魅力で、左右のページであかずきんとオオカミの立場を描き分け、文章のフォントも変えるなど、工夫に富んだ構成もユニーク。おばあちゃんや村の人々など、大人達をモノクロっぽいリアルなタッチで描いているのは、コラージュ風のタッチにも感じられます。

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