エヴァ・ビロウ

Eva Billow

* 作家紹介

 1902年、スウェーデン生まれ。10歳の頃に絵本作家エルザ・ベスコフと出会い、この世界に入る事を決意する。ストックホルムの美術学校卒業後、同校でデッサン、描き文字、広告、書籍関連と多岐に渡る科目を教え、40年以上教員として勤務しながら、絵本作家としても活動。46年、スウェーデン書籍美術会年間優秀賞を受賞し、その後も3度に渡って同賞を受賞。61年、エルザ・ベスコフ賞を受賞。93年没。

 どれも古い作品で、カラフルな色使いはないですが、版画のようなシンプルなスタイルから、後年にペン画のような細密さを増してゆく印象です。そのため、色彩よりもキャラクターや線などデザイン面の魅力が大きいイラストレーターと言えるでしょう。動物達は勿論、人間の造形も可愛くておしゃれで、現代の雑貨好きの趣味にフィットする作風。出版しているフレーベル館も心得たもので、本の造りがおしゃれで大人向きです。

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『ハリネズミかあさんのふゆじたく』 (1948年/90年、スウェーデン)

 作・絵:エヴァ・ビロウ  訳:佐伯愛子

 フレーベル館・2007年

 10匹の子供がいるハリネズミのお母さんが、越冬の準備に走り回るお話。白黒の版画に一色だけ彩色したような画風で、ページによってブルーとオレンジに分けています(実際に版画なのかどうかは分かりませんが)。ちなみに原画はスウェーデン国立博物館が所有しているとの事。

 とにかく動物達のデザインと動作が可愛いのと、ページの構成やディティールにグラフィックのセンスを感じさせるのが魅力。ハリネズミ自体も北欧らしいモティーフですが、格調高くも美しく描かれた自然の豊かさに北欧的感性が横溢します。フレーベル館から出た著者の3冊は、文章に手書き文字をデザインしているのが好感触。ミニサイズの装丁も素敵です。

『のいちごそうは どこにある?』 (1954年、スウェーデン)

 作・絵:エヴァ・ビロウ  訳:佐伯愛子

 フレーベル館・2008年 

 シュスリングという小さな人種のホップさんが家を建て、のいちご荘と名付けて動物達に部屋を貸し出すお話。やはり版画のようですが、細かい線もかなり多くなっているのと、本書では黒は使わず、緑と赤の2色で刷っています。迷路のページもあったりして、遊び心も満載。

 お馴染みハリネズミをはじめ、たくさんの動物達が登場するのと、簡略化されているにも関わらず、ちょっとした描写で背景に豊かな自然の存在を感じさせるのは、さすが北欧のイラストレーターです。全体の雰囲気もおしゃれで可愛いですが、ミニサイズながら縦に長細い本のデザインもユニーク。

『フリッパ・ラズベリーのうた』 (1960年/85年、スウェーデン)

 作・絵:エヴァ・ビロウ  訳:石津ちひろ

 フレーベル館・2008年 

 こちらは長い物語ではなく、1ページごとに短いお話をたくさん乗せたもの。お話というか歌詞のようで、日本語訳も七五調のリズムを踏んでいます(原文もそうなっているのでしょう)。ただ、フレーベル館も内容の分量に合わせたのか、この3冊の中では唯一、通常の絵本サイズ。

 イラストは版画っぽさが消え、細密なペン画のように見えますが、実際はどうか分かりません。ただしカラーではなく1ページ1色の、実質的にはモノクロ印刷です(ページごとに色は違っています)。人間のような姿のエルフ(妖精)がたくさん登場する他、やはり動物達もたくさん出て来て、どのページもやたらと可愛いのが魅力。『のいちごそうは どこにある?』の主人公ホップさんも登場します。暮らしや自然の描写も豊か。

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